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鬼狼の刃  作者: 大日小進
一章、異世界編
32/42

29、主従共々チートなり

大日です。

29話、お楽しみください。

「クハハハハ、待てやオラァ!」

「ギャギャ?!」

「ギャガマャァァ!」

「ギュキャクケ、ケラレ!」

「ハッ! そんなのが効くかバカ野郎!」

「グュゲベッ!」

「ギュギャァァァ!?」

「うわ何あれ恐っ」

「何だあの剣術は?」

「へえ、あれは……"群狼(ぐんろう)"ですかそれも"餓の構え"とは」

「"群狼(ぐんろう)"? "餓の構え"? 何だそれ?」


 黒牙が「えげつないですねぇ」と呟き、ゴブリンの悲鳴が迷宮に木霊し、それに被せるように龍牙の嗤い声が響く。

 ある生徒は龍牙の容赦ない攻撃に引き、アイザーは引きながらも龍牙の使う剣術に興味を出した。そんなアイザーに黒牙は剣術の説明を始めた。


「打刀と小太刀の二刀からなる攻撃と壁や柱、天井さえも足場にする独特の走りで、右かと思えば左から、左からと思えば右から、正面からと思えば直前で飛び上がり後頭部から切りつける、その太刀はまるで餓えに餓えた狼の群れの如く、一切の慈悲無く弱った者から襲い掛かる。それが鬼刃家の剣術の一つ、"群狼(ぐんろう)"、"餓の構え"」

「成る程、何処からでも襲い掛かる事と餓えた様な苛烈な攻撃から群れの狼と書いて"群狼(ぐんろう)、"餓の構え"か」

「因みに殿は歴代三位の使い手です」

「ん? じゃあ一位と二位は?」

「一位は初代鬼刃家当主様、二位は三十代目当主、鬼刃竜明様。あ、私は大体四位位ですね」

「ちょっと待て、黒牙さんちょっと質問」

「? どうしました勇者?」

「黒牙さん、龍牙って何代目だ。後貴方今いくつだよ?」

「殿は三十二代目ですよ。後私の歳は自分でも正確には覚えていませんが確か卑弥呼と言う名の人間が群れを率いているのを遠目で見ましたよ」

「卑弥呼? 卑弥呼ってハァッ!」

「五月蝿いですよ、勇者」


 黒牙と正義が話しているその時、龍牙は、


「あぁ、もうめんどくせぇなぁオイッ!」


 かなりきれていた。原因は足元に転がるゴブリンの生首とそれ目掛け群がるゴブリン。

 実はあまり知られてないのだが迷宮のモンスターの血液には微量にだがアリのフェロモンに似た物質が含まれているのだ。二、三体程の血液に含まれるフェロモンの量などたかが知れてる。

 しかしそれが十何体となれば、話は違ってくる。更に龍牙の体には返り血がべったりとついているため、ゴブリンは龍牙も同時に追いかける。


「ゲギャルバー!」

「グガャグュ!」

「るっさい!石壁!」

「グュゲベッ!」

「ストーンウォールをノーモーションって…………」


 土魔法使いの天職を持つ桜井が龍牙が作り出した土の壁を見て、唖然とした顔で呟く。

 しかし龍牙がそれで終わるはずが無く、


「異次元一番倉庫、解錠」


 シャランと錫杖が音を鳴らし、深淵の如く漆黒の門から出てきた存在が、ゴブリンに地獄を見せる。


ゴブリンside


 彼等(ゴブリン)は困惑していた。彼等にとって迷宮に入ってくる人間は強敵であり、また、自分達を次の(ランク)に生まれ変わらせる踏み台でもあった。

 彼等の縄張りに新しく入ってきた人間の集団。特に化け物を連れた人間、あれは本当に素晴らしいとしか言いようが無い。同じ雄だから肉は固く不味いだろうし力もまだ未発達だ、しかし、それを差し引いても内容する魂の質は素晴らしい。あの魂を肉体から剥がして迷宮(あるじ)に捧げれば、もっと上の存在に生まれ変わらせてくれる。

 そう思っていたのだが、


「ギャギャガキャキャ!」

「ギャゴャカザァーーー!」

「グニュギゲバーーー!」


 突如現れた壁が彼等の邪魔をした。拳で殴り付けても拳を痛めるだけで壊れず、爪で引っ掻いても逆に爪が剥がれかけ、自慢の棍棒で叩いてもヒビすら入らない。何度も殴り、引っ掻き、叩き続け、諦め、他の獲物にターゲットを替えようとした時、石が崩れた。


「ギュア!」

「ギュキャキャ!」

「キョキャ?キャギュキャ!」

「もう本当(ほんっとう)にうるせえなぁてめぇらは」


 土が崩れた所にはあの人間がいた。

 最初と変わらず、威風堂々と、生意気にもいつの間にか現れた狼の上であぐらをかいて、


「ギュキャキャキャ!」

「ギュゴガ、ゲョゴヤ!」


 それを見て彼等は激昂した。生意気だと、そして、それ故にきずけなかった。


「総員、撃ち方構え…………撃てぇっ!」


 自分達の前が傾斜になっている事、人間の前に何故か骨が立っていて、鉄棒の様な物を構え、こちらに向けている事を。

 しかし、彼等には関係無い事だ。何故ならその直後、眩い閃光を認識し、自分達が死んだと知る前に死んだから。


Side 終了


龍牙達Side


「あ゛ー疲れたぁ」

「お疲れ様です」


 ゴキッゴキッと首を鳴らしながら龍牙は狼の黒牙から飛び降りると、黒牙はボンッと音を立て人間の姿に戻った。

 そしてその音を皮切りに皆が騒ぎ始める。

 あるものは、


「かっ、かっけえ」


 称賛を。また、あるものは、


「でかい壁の次は骸骨集団とか……」


 畏怖する以前に力の差に逆に呆れ果て、またある姉妹は、

   

「「龍ちゃん(君)が……あの龍ちゃん(君)がちゃんと指示を出してる…………グスッ」」

「ちょっと待って、雪姉、春美、それどういう意味」


 喜び泣きしていた。


「立派になって。うんうん、春美お姉ちゃんは嬉しいよ」

「春美、お前俺と同い年だろ、何で年上面してんの? 後雪姉、何で俺の頭撫でてんの?」

「嬉しいからに決まってるじゃない」


「ん~?」と何処か納得できないと言いたげな声を出しながらも目を細め、雪江の手に頭を擦り付けていた龍牙だったが、フラリと手から頭を離すと血吸い濡れ烏を抜き、アイザーに話しかけた。


「おっさん、ゴブリンって頭の角と右耳と心臓の魔石が換金部位だったよな?」

「あ、ああ、角と耳は多少の傷がついても構わないが、魔石は傷つけるなよ?」

「よっしゃ聞いたなてめぇら、剥ぎ取るぞ!首は一つで充分だからな! 角と耳と魔石だけ獲れ!」

「「「「「了解しました、局長!」」」」」

「ってお前のアンデット喋るのかよ!」




…………夕方、迷宮外の宿


 あの後、無事に帰った一行は宿屋に帰ると休憩をしていた。兵士達も疲れ、生徒達に風呂場に連行された中、アイザーは一人ロビーで映像通信型魔道具を起動させた。


『皆様は無事ですか?』

「はい、皆、とても優秀で。特に龍牙君があの中で一番です」


「何せレベルが今日の戦闘で5になってましたから」と苦笑するアイザーの通信先は城にいるアリアだった。


『そうですか、それはよかっ……た…………』

「姫様? どうしました姫様?!」


 ホッと息を吐き出したアリアは、アイザーの後ろに視線を向けると、突如顔を蒼白にし、ガタガタと震え始めた。


「姫! 大丈夫ですか、姫!」

『お…お化けが、お化けがそこにイヤァァァア!』

「姫!? クソッ何処だ姫様を恐がらせる化け物は!」


 腰の長剣……は部屋に置いてきてしまったため、護身用に持っていた短剣を逆手に構え降る向くが、背後にいるのは肉を食っている龍牙だけ。但し、その体は返り血で真っ赤だが。


「お前かよぉ!」

「んむっ?」

「謝れ! とにかく姫様に謝れ!」

「んぐっ、いや俺何にも悪いことしてないだろ?!」


 アリアの勘違いで起きた騒ぎは、騒ぎを聞き付けた店の看板娘が出てくるまで続いた。


…………それから数分


「いいお湯でしたねぇ」


 黒牙がホカホカと湯気を出しながら煙管で一服しようとロビーに出ると、


「姫ちゃんすまん」

『い、いえ、早合点した私が悪いのです』

「いやそれを引いても俺が悪かった」

『あ、頭を上げて下さい、龍牙様ぁ』

「いいですか、いくら王女様が怖がったからと言ってあそこまで騒が無いで下さい! 」

「すみません。反省してます」

「本当ですか?」

「はい、してます。本当にしてます。だから足を崩させて下さい御願いします」

「何ですか、この状況?」


 二人が土下座で女性に怒られていた。

 この後、自身の主が迷惑をかけたと知った黒牙は龍牙の隣で土下座した。二人がアリアに更に謝れたのは言うまでもなかった。


どうも皆様、大日です。

週を一つ間違えてました。

次の投稿は12月になります。


龍牙の現在のステータス

キジン リュウガ 15 人間《?》

天職 侍 忍 猟師 天魔 神《未発達》

LV 5


生命力   7500

筋力   10500

耐久力  9000

敏捷性  6000

魔力    10500

魔力耐性 10500


固有スキル

スキル

魔法属性

特殊属性

称号


龍牙の装備紹介


次元の錫杖

龍牙が時空間魔法の触媒に使う錫杖。ミスリル銀の玉鋼製。上の方の輪っかは10。それぞれが、龍牙の持つ魔法の威力を増幅させる触媒であり、捕縛用に作られた鎖でもある。


白骨隊

死霊魔法で作られた、半スケルトン半ゴーレムの龍牙の私兵(死兵)。

第6師団まであり、それぞれ得意な事が異なる(第1師団、接近戦 第2師団、遠距離戦 第3師団、情報戦 第4師団、暗殺特化 第5師団、乗り物の操縦 第6師団、特殊形)。

半分ゴーレムのため、聖属性や、光属性の攻撃は効かない。また半分スケルトンのため、自立行動も可能。龍牙を局長、黒牙を副長と呼ぶ。声は風魔法の応用。


簡易魔物図解


ゴブリン 小鬼族

スライムと同じく、比較的何処にでもいる魔物。

背丈は大体子供と変わらない。くさい。適応力が高く、生息地によっては魔法を使う者もいる。

他種族の雌をさらい、自分達の苗床にするため、見つけたら即刻殺すことは常識。知能はある程度あり、武器を使い、頭のまわる者は待ち伏せなどをする。角は薬になり、耳は討伐した証。進化も多様。

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