27、このあと滅茶苦茶………
………龍牙が兵士達を吹き飛ばす数分前。
レベル1ながらも全ステータス四桁を叩き出し、ざわついた雰囲気をアイザーは手を叩き納めると龍牙と黒牙に向き直り、
「じゃあ龍牙君と黒牙君はペアを組んで」
いつもの如く君付けで呼んだ。しかしそれは黒牙は気にくわなかった。
「おい貴様ぁ!」
「は、はい?」
「君では無い、ここに居られるは武家の当主だぞ!」
「と、当主?」
「そうだ、当主だ!様を着けよ!」
「止めろ、黒牙」
「しかし!」
「止めよと言っているんだ、黒牙」
「しかし殿!」
「確かに俺は鬼刃家の次期当主、けどよぉ、俺はそんな物の器には足りない。俺は俺のやりたいことをやるだけだ。それに仮に当主になっても俺は変わらないぜ。ほら、良く言うだろ? 君臨すども統治せず、と」
「な? 」と両腕を軽く広げ、少し困った様な顔で龍牙は言った。
「しかしそれでは………」
「くどいぞ、黒牙」
「ッ!」
放たれた短い言葉と視線。しかしその視線はいつもの少年の様な物では無く、人の上に立つ者、それも一つの土地では無く、一国一城の主に匹敵する物だった。
そして同時に放たれるのは、どこか神聖な滝や大樹に相対したかのような強烈な圧力感、真正面からそれに触れた黒牙は思わず片膝を突き頭を垂れた。真正面から受けなかったクラスメイト達も圧倒していた。
「それによぉ」と頭をボリボリとかき、言った
「お前も俺をそう呼ぶのが好きで呼んでいるんだろ? だったら好きに呼ばせてやれ。後から合う奴合う奴にそう突っ掛かったら面倒だ」
「わかり……ました」
少し不服そうに従う黒牙。そんな彼に、「クハハ、しっかしよぉ」、と龍牙は少し悪どい顔で笑うと、
「お前がそんな必死な顔、俺初めて見たぜ?」
「ッ! 忘れてください!」
「やだね、お前の曾孫に伝えるまで絶体に忘れん」
「私の曾孫って貴方はいったいいくつまで生きるつもりですか! それに私の一族はもう…………」
「知らん! だが元気があれば何でも出来るってこの間知らないおっさんがテレビで言っていた! てかこっちで一族を造り直せ!」
「まさかの根性論ですか?! それより私の番になってくれる人なんておりませんよ───って何をしているんですか!?」
「録画」
「消してください!?」
「やだ」
「ならば取り上げるのみ!」
「取り上げる事が出来るならな」
「言いましたね!」
緊迫していた空気は、龍牙のスキンシップと言う名の悪のりにより、いつの間にか霧散していた。
「え~と、取り敢えず始めてくれるか? 」
「了解」
「ハァ、あの時のリベンジとやらをさせて頂きます」
話に着いていけないが終わったのだろうと判断したアイザーは再び手を叩いた。
龍牙は拳を鳴らし、黒牙はおざなりに手首を回し跳ねる様に足をほぐす。
「さてと」
「それでは」
「「死会おうか」」
二人は同時に駆け出し、龍牙は右斜め上から拳を降り下ろし、それを黒牙は上段回し蹴りで受け止める。ドンッ! と大型車同士がぶつかった様な音を奏で、強烈な衝撃波を周囲に撒き散らす。
「ヌゥァァァ!」
「耐えろォ!」
「キャァッ!」
「風島さんが吹っ飛んだァァ!?」
「急げぇ! 風島さんを捕まえろ!」
放たれた衝撃波は当然と言うべきか周りで観戦していたクラスメイト達に襲い掛かり体の軽い生徒を吹き飛ばす。
「コノクソォォ!」
「自称紳士が行ったぁ!」
「パーフェクトだ阿部ぇ」
「そのまま捕まえてろよ!」
「おうよ!」
「あ、阿部君、顔が近いよ……」
「なっ! す、すまん」
一部でこんなラブコメチックな事が発生しているが龍牙と黒牙はそんなこと関係ねぇ! と、言わんばかりに拳と脚を叩きつけ会う。 しかし、体が着いていけなかった。何回、何十回と叩きつけ会い続け、ついに
バキリッ
音を立てて骨が折れ、肉から飛び出す。余りの痛々しさに雪江達は目をそらす。
しかし龍牙達は止まらない、否、止められないのだ。最初の攻防で入ってしまった戦闘狂のスイッチが二人に止めると言う思考回路を隠してしまったのだ。結局、二人は使っていた腕と脚がミンチになるまで戦い続け、雪江の魔法で作られた氷の檻で強制的に終わらされ、涙混じりの説教を受けた。
また、余談だがこの戦いにより観戦していた全員のステータスに恐慌耐性が着いた。
そしてミンチ状態の腕と脚を酒とスキルで何の事無く回復させ更にデコボコになった地面を簡単に直した二人には全員が恐れより先に呆れていた。
…………そして今………と言うよりもぶっ飛ばした後
「あーそうだ、俺怒られたんだ」
最後の一人が落ちてきて、尚且全員気絶しているためかなり暇な龍牙だったが、そのまま周りに放置しておくのはさすがにいけないだろうと思ったのか一ヶ所に纏めた。
しかし何故か、
「絶景かな絶景かな♪」
山のように積み上げてその上にてあぐらを描いていた。
一応時空間魔法で一人一人に間を空けているため、窒息死やら圧死はしないようになってはいるのだが、端から見たらまるで死体の山をきづいてご機嫌になる殺人鬼である。その証拠に先程からチラチラとこちらを伺うクラスメイトや女の兵士達はまるで魔王か悪魔を見てしまったかのように視線をそっと反らすか、「殺しやがった」と言わんばかりに顔をひきつらせていた。
あくびしながら左側を見れば黒牙がメイド達に棒手裏剣を教えていた。シュッと、黒牙の腕から離れた手裏剣はトスッと音を立てて的の真ん中に突き刺さる。
シュッ、トスッシュッ、トスッと音を立てて手裏剣が宙を舞うと共に龍牙の目線もそれを追いかける。
やがて我慢出来なくなった龍牙はアイテムボックスの盗ってきた(誤字にあらず)食事用のナイフを取り出した。
「ちょっと混ざろ」
そう言ってナイフをくわえると捕食を発動、くわえたまま引き抜くとそこには刃が研がれ鋭くなったナイフが。
そして手首のスナップを効かせて投げる。投げられたナイフは凄まじい速度で回転しながら飛び、黒牙の投げた手裏剣を両断、的に突き刺さると刃だけを残し破裂した。
黒牙のジト目が放たれる。
しかし龍牙は意にもとめずどや顔で返す。青筋を立てた笑顔の黒牙は銃を構える。龍牙も負けじと帯から抜き構える。一触即発の中、ある声が響いた。
「あ~な~た~た~ちぃ」
「「!! 」」
どこぞの金属の歯車なゲームに出る敵兵士の様な反応を見せた二人が振り替えると、そこには………夜叉がいた。
「二人共そこになおりなさい!」
このあと滅茶苦茶叱られた。
色事かと思った?残念、説教だよ!
どうも皆様、大日です。
二人共叱られました。
お知らせですが、今後投稿ペースが少し落ち、二週間に一本程の投稿になりそうです。
スキルの簡易説明します。
固有スキル[捕食]
発動すると体に漆黒とも言える円ができ、そこに何かを入れると、円の中で回っていた魔力がそれを削り分解、解析、何かしらのスキルが覚えられる場合そのスキルを学習する。




