25、レベル1からチート
鬼刃家の休みの朝は大体早い。龍牙はたまに寝坊する以外は大抵四時に起き出し黒牙との散歩(と言う名のマラソン)、庭の木々を使った懸垂などのトレーニング、そして刀二本の素振り(と言う名の魔改造しまくった球出し機を自分の周囲に接地、そこからランダムに出される高速の球を避けたり叩き落としり)、それは異世界でも変わり無く、
「1999……2000っと」
球出し機の代わりに使った加速するように魔法をかけた時空間魔法の穴を閉じ、両手、髪の毛で持った刀を鞘に収め、散らばった球を回収すると周りには、
「な、なんだよ最後の異世界者の剣は、化け物か?!」
「待てッ! 良く良く思い出すとあの穴時空間魔法じゃねぇか」
「そこにさらに加速の魔法をトレーニングの間中ずっとだろ? 魔法の腕も化け物クラスじゃん」
「あれ? あいつレベル1だよな、90超えじゃないよな?」
城で働く兵士がいた。どうやら球を弾いた時の音が聞こえていたらしい。いつの間にか練習場には人だかりが出来ていた。そしていい加減めんどくさくなった龍牙は直線上の兵士を吹き飛ばしてでも部屋に戻ろうとした時、龍牙の耳は自分を呼ぶ声を聞いた。
「龍牙様ぁ、龍牙様ぁ、何処ですかぁ!?」
「おぅ、ここだここだ」
声に向かって手を振ると兵士の人垣が割れメイドの姿が現れた。
「龍牙様、そろそろ……」
「飯か!」
「あ、はい」
台詞を取られ思考力がストップしたメイド。我に返ったときには、
「えっ、ちょっと待って下さい!」
「飯だ飯だ飯ぃ!」
お米様抱っこで練習場の出入口まできていた。
「そっちは反対ですよぉ!?」
「じゃああっちか!?」
後に残ったのは、
「なんじゃあれ」
ドダダダダダと砂煙を立てて走る龍牙とその肩に乗っけられたメイドが去り、ポカーンとした兵士達だった。
………大広間
「アグアグ、ウグッゴクンッ、細長いパンと肉とジャガイモのスープお代わり!」
「メイドさん、お茶のおかわりを。後殿、朝食は逃げませんからよく噛んでください」
「ねぇ春美、私の気のせいかもしれないけど、龍ちゃん食べる量が増えてない?」
「大丈夫お姉ちゃん、気のせいじゃないよ。しっかり増えてる」
朝から周りに胸焼けを発生させる程、龍牙が朝食をかっ食らうのには訳があった。それは、
「殿、10時から殿の実力を計る試合稽古ですよ、そんなに食べて大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、問題はない」
「本当ですかねそれ!?」
余談だが、その後龍牙は更に食べ、食事が終わると調理室からは万歳三唱と幼児退行したコック長などの嬉し泣きが響いたと言う。
…………10時、練習場
龍牙達が練習場に入ると練習場の真ん中で近衛兵隊の隊長、アイザー・ザックがステータスプレート片手に待っていた。走って近づく龍牙と黒牙。しかし、
「龍ちゃん、まだ飲んでるの?」
「んむ?」
「ほら隊長さんじっと見てるよ?」
「いや、あれは…………」
黒牙はアイザーをじっと見て言った。
「涎垂らしてます」
アイザー・ザック。本日嫁から言われた一週間目の禁酒日でその後禁酒を破り龍牙から少し神酒を貰ったのであった。
…………数分後
「ゴホン、じゃあこのステータスプレートにさっき渡した針かナイフで血をつけてくれ」
「フム」と、龍牙はナイフを、黒牙は針を見た。因みにどちらが大きな傷を残してしまうナイフを使うかで先程一悶着有り、二人仲良く頭にはこぶがあった。
そして指に先端を突くと、
ペキッ、ポキッ
折れた。持ち方を変えても使えない程折れた。
沈黙が降り、
「「セイッ!」」
二人はナイフと針を握り潰し、
「「フンッ!」」
指を噛みきり血を擦り付けた。血が勢い良く吹き出しステータスプレートを真っ赤に染め上げる。止血しステータスプレートを振ると現れるのはレベル1の表記。それを見て勝ち誇った顔をする勇者と男共、だがしかし、龍牙も負けてはいなかった。ビシィッ! とアイザーだけで無く練習場のクラスメイト達にも見せるようにステータスプレートを突きつける。そこに映し出されていたのは全ステータスが4桁の表示。
「いやアンバランス過ぎんだろぉぉ!?」
勇者、乙木正義の叫びが練習場に響いた。
どうも皆様、大日です。
25話お楽しみできましたか?
後3、4話で迷宮に入る予定です。
誤字脱字、感想待ってます。
それにしてもレベル1からやはりチートな主人公コンビ




