22、三度目の転移とハプニング
「と…、お……てく……い、……の」
「むぅ……後五分」
「殿! さっさと起きてください!」
「おわっ!?」
耳元で出された大声に、龍牙は思わず飛び起きた。垂れたよだれを寝間着として使っている着物の袖でぬぐい、声の方を向くと、
「黒牙か……」
「はい、おはようございます」
「ところでどうした?」
寝起きだからか、いつも以上にボケた龍牙に黒牙はため息を1つつくと、枕元の時計を指差した。
「ん? …………ヤベェ!」
時計が指した時間は五時半、普通の人ならまだまだ十分早い、しかしこの男達の場合、
「修行に遅れる!」
=罰の修行三倍=大怪我と、少し危ないのである。
一瞬で着物を脱ぎ捨て、ふんどし一丁になり、思い出した。
「黒牙、俺の着物どこだっけ?」
いつもだったら枕元に畳んで置いてあるはずの着物、それが無い、大慌てで記憶を探る龍牙に再び黒牙はため息を吐くと龍牙にある物を投げた。投げられた物は放物線を描き、龍牙の顔に当たり、手に落ちた。
「これは、トロフィー?」
「ハァ、お忘れですか、優勝したから修行は免除、それに今日は転移であちらの世界にいくんですよ」
「……………ああッ!」
やはり忘れていたかと、黒牙はため息をついた。
数十分後
「待たせたぜ!」
「本当に待ちましたよッ!」
どこぞの普通な魔法使いか蛇の様なセリフを自信満々な顔で全員の前に立った龍牙に黒牙は懐に忍ばせたハリセンで叩く。スパーンと良い音が鳴るが、
「効かん、効かんのだよ、黒牙!」
「クッ、相も変わらず無駄に硬い防御」
たいして効いてなかった、それどころか逆に黒牙の手が痺れた。「ワハハハハ!」と笑う龍牙に全員が呆れた顔か生暖かい笑顔をしていたが、竜明が突如黒牙の落としたハリセンを拾い、スキルを発動させながら叩いた。ドゴスッとハリセンから出ない様な音を立て、クレーターを発生させた、クレーターの中心で龍牙は、
「グアアァァア」
頭を抑え悶絶していた。竜明が発動させたスキルは【絶対貫通】、龍牙の馬鹿みたいに硬い防御力だけを貫き、衝撃を頭に与えたのだった。
「さて、馬鹿はほっといて、エナ! 転移魔法の準……」
「もうやった」
「俺達のレベル1に……」
「スキルはそのままで昨日の夜やった、年齢も15に戻した」
「ありがとうエナさん」
「ありがとうございますエナ様」
「じゃあ良し、じゃあこれでさよならだがよ、その前に餞別だ餞別」
そう言って竜明が龍牙に投げられたのは、
「なにこれ、懐中時計? にしては針が?」
懐中時計だが、針が4つついていた。
「一番重要なのはその先が丸い針だ、秒針意外の針が全て12時を指した一分間だけ、一分間だけが地球とあちらの世界がもっとも近づく時間だ。その間に世界に穴を開ければ帰ることができる。わかったな」
「ああ、わかった」
「良し、じゃあ転移だ!」
その時、彼らは気分が高揚していて気づかなかった。龍牙の称号、【女難の相】が発動したこと。エナが小さなくしゃみをしたことを。
「じゃあまた」
「ご隠居様、お世話になりました」
転移陣に光の線が走り、龍牙と黒牙の体が消えた。
竜明達side
「行ったな」
「行っちまったな」
「行ったね~」
「…………あ」
その場の全員がしみじみと話す中、エナが小さくこぼした。全員がエナに視線を向ける中、ぽつりとエナが言った。
「座標がずれてる」
竜明達side修了
龍牙side
龍牙と黒牙は困惑していた。なぜなら、
「どこだよ、ここ?」
目の前が白い湯気でいっぱいだからだ。足を動かせばバシャバシャと音を立てながらお湯がまとわりつく。そこから出る答えは、
「まさか風呂」
「と、殿」
戦慄の表情で答えを導き出した龍牙に更に戦慄の表情を顔に出した黒牙が人影のある一点を指差し、言った。
「ここ」
湯気が晴れ、
「女風呂です」
湯気が晴れたそこには、一人の女性が顔を赤くしていた。
どうも大日です。
遅くなってすみません、家の事でゴタゴタしてました。
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