21、そして今
投稿できるので投稿します。
「グ……ウゥ、ガハァッハァ、ハァ」
(俺は…………そうだ、死合はどうなった、ここは…………闘技場内か、と言うことは、俺はまだ戦えると言う事か)
いまだ蒸気が舞うなか、龍牙は舞い上がる粉塵と喉に絡む血で咳き込みながらゆっくりと立ち上がった。そして自分の状態を知ろうと、ステータスを見てウゲッと唸った。龍牙のステータス、それは残り2を示す生命力。石を投げられるだけで死んでしまう状態にまで削られていたのであった。
「そう言えば黒牙はどうなった?」
辺りを見るも、蒸気が邪魔して見えない。しょうがないとため息をつき、地べたに座る。アイテムボックスからかじりかけのリンゴを取りだし、かじりつく、シャリ、シャリとかじりつく音だけがこだまし、蒸気が晴れ始めた。蒸気が晴れると、
「あれ?」
龍牙しかいなかった。後ろを見るも、ガラス質になった地面だけ、前を見るも、いない。「あれ? あれ? あれれ?」と混乱し、辺りをうろちょろする龍牙の耳にスピーカーの声が届いた。
『第三百回英雄の武道大会、優勝者はエントリーナンバー122番、第三宇宙出身、鬼刃龍牙選手だぁぁぁ!』
「えっ? えっ?」と先程よりひどく混乱する龍牙、しかし周りを見ると観客席の神々すべてが拍手している。ようやくこれが現実とわかった龍牙は、
「つ、疲れたぁ~」
背中から倒れ、意識を体の奥底に落とした。
「お~い、龍牙選手、大丈夫かな?」
「むぅ~…………」
「あ~、起きないねぇ、ちょっとスサノオ、水ちゃうだい」
「おう」
アマテラスは、コップ一杯程度の水をスサノオから受け取ると龍牙の鼻に、
「えい!」
思いっきり流し込んだ。
「ムグ! ゲハ、ゲハ、なに? なにが起きたの?!」
むせながらも、なんとか起き上がり、辺りを見た。
「あれ?」
「やぁ、龍牙君、優勝おめでとう、これ賞状と優勝カップ、あと賞品なにが欲しいの?」
優勝賞品、その言葉を聞いた龍牙は少しニッと笑い、答えた。その答えを聞いた観客席の神々は半分が驚愕、もう半分が笑いに包まれた。
「それじゃあ俺は――――」
その日の夜………
「まさかお前がそんな物を欲しがったとはなぁ」
神々の都のとある飲食店で竜明は呆れ半分、驚き半分に呟いた。
「まぁ、この子らしい願いだけどね~」
普段飲まないワインを少し飲みながらエリスが龍牙の頭を撫でながら言った。黒牙は、エリスのグラスにワインを注ぎながら「ハハハ……」と諦めた顔で笑った。その龍牙はと言うと、
「ムグムグムグムグ、ゴキュゴキュップハー、おかわり!」
ドラガルドやウォルフの隣で米、肉、チーズなどをがっついてドボムと酒を飲んでいた。龍牙の左手にはいままで無かった少し大きな朱塗りの瓢箪が握られていた。その瓢箪こそ龍牙が望んだ望みを叶える物だった。あの時龍牙は、
「いつまでもうまい酒が出てくる器が欲しい」
と、望んだ。そしてそれがこの瓢箪だ。一見ただの瓢箪に見えるが、魔力を込めると、その魔力量に応じ、瓢箪の底から日本酒が沸き上がると言う代物だった。しかも濃い魔力を込めると辛口に、薄い魔力を込めると甘口になり、腕や足が吹き飛んだ程度なら飲むことで回復できると言う優れものであった。
「ケプッ、ごちそうさまでした」
パァンと音を鳴らして手を合わせた龍牙は…………椅子ごと後ろに倒れた。
「殿!」
「龍牙!」
竜明と黒牙が声をかける、その返答は、
「スゥ、スゥ」
寝息だった。
「「「「「…………」」」」」
沈黙が降り、
「帰るか」
「「「「はい(応)」」」」
この夜、おんぶされ帰路につく優勝者が目撃された。
どうも大日です。
投稿できるので投稿しました。
土日の投稿はもしかしたら無くなります。
次の話で合流できるはずです。
ちなみに瓢箪はある程度大きさを調整でき、普段は龍牙の腰の後ろで血吸い濡れ烏といっしょに帯びに挟まれてます。
あと龍牙はいくら飲んでも、状態異常耐性でほろ酔いにしかなりません。黒牙も意外と飲むほうです
装備説明
太陽神の酒瓢箪
太陽神、アマテラスの加護が与えられた瓢箪
魔力の量に応じ、酒が湧き、純度に応じ、酒の辛みが増す
怪我をした際に飲むと腕や足程の怪我ならば再生が可能
水分を飛ばせば飛ばす程固体に近づき、回復力も上がる




