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鬼狼の刃  作者: 大日小進
一章、異世界編
20/42

18、数分前の事

数分前…………


 龍牙と黒牙は、滑り込みではあるものの、会場に入っていた。そして、二人とその他の参加者(約三百名)は会場の斜め上を見ていた。そこにはモニターがあり、細身の優男と、筋骨隆々の大柄の厳つい男が映っていた。


『さあ、今年も始まりました、英雄の武道大会! 司会は私、ツクヨミが』

『解説はこの俺、スサノオがやらせてもらうぜ!』

『いやー、それにしてもスサノオ、兄弟でなにかやるってひさびさだね』

『ああ、たしか春の宴会が最後だったな』


 まるでトーク番組だ。そして、スサノオと名乗った男の背後に、黒髪の美人が現れたが、二人は気づいてない。


『あ、ああ、たしかに今年の宴会が最後だったね』

『クク、たしか兄貴、そんとき姉貴に………』

『な、待てスサノオ! それは言わない約束だろ!』

『さあ~て、ど~しょっかな~』

『姉さん、姉さぁん、早く、早く来てぇ、頼むから早くぅ!』

『へ、あの姉貴のことだ、化粧とかで…………』

『化粧とかで、なに?』

『あ、姉貴ぃ?!』


 スサノオの驚いた声がスピーカーから響いたとたん、ポキッだのメリメリメリだのベキッだの生々しい音がとある熊の爪の機械レスラーの必殺技(パロでスペシャルって着く奴)とともに鳴り出した、そしてスサノオの「ちょ、ちょっと待て姉貴、それ以上はぁぁぁ!」といった声がスピーカーから響き、沈黙した。龍牙や、黒牙、そしてその他の参加者が、(あれ、これ死んだんじゃね?)と思った時、スピーカーから声が流れた。


『ふぅ、まったく、スサノオちゃんったら困った子ね。ねぇ、ツクヨミちゃん?』

『は、はい、そうですね』

『あら、どうしたの、震えてるじゃない?』

『な、なんでもないです。はい!』

『そう? ならいいんだけど』


 時々、スサノオのスサノオ(急所)が踏まれて、「ウグゥ!」とか、「ハゥ!」とか、呻き声が流れていく。それを聞かされている参加者達(男)の心は一つ、


((((((頼みますからやめてあげてください!))))))


 これであった。


『ふぅ、まあお仕置きはこれくらいにして、ツクヨミちゃん、早く試合開始の宣言を』

『は、はい、それでは第三百回英雄の武道大会、開始!!』


「「「「「オオオオオォォォォ!!!」」」」」


 歓声が上がり、モニターが闘技場内の映像に変わった次の瞬間、二百名余りの神々と英雄の首が文字通り飛び、失格の転位魔法が発動、首と体が消えた。


『『え?』』

「「「「「はいっ?」」」」」


 そこに残ったのは危険を感じ、とっさに伏せた下級から中級の神々と英雄、そして、背中合わせの状態で刀を振り抜いた状態で立っている二人の男。片方の男は懐に手を入れると、真っ赤なリンゴを取りだし、かじりついた、もう片方の男は懐から遠吠えする狼を模した煙管を取りだし、火を入れ、煙を吸い、吐いた。


「ハグッ、モグモグ、おいおい、弱すぎだろ、神々と英雄。なんで居合い切りで半分以上の首が飛ぶんだよ?」


 あきれた口調でリンゴをかじったのは、龍牙だ。


「スウゥ、プハァァ、おそらく、居合いの速さに着いていけなくて切られたのでは?」


 紫煙を上げながら冷静に答を導き出したのは、黒牙だ。

 龍牙は、「あ~、そっかぁ~~」と、峰で肩を叩きながら気のない返事をすると、一転、目をギラつかせて刀を持ち直し、魔法銃を持ち、未だ唖然とする英雄達に突っ込んだ。


「ならばテメェラが俺を楽しませろ!!」


 暴君だ、まごうことなく暴君のいい様である。黒牙は、そんな主にため息を突きながらも、反対側に突っ込んだ。

 これは、後に『神々最悪の日』、『英雄の武道大会最速の終了日』と呼ばれ、龍牙と黒牙に、『神々を恐れさせた二人の化獣(バケモノ)』と言う称号が贈られた日の事であった。

どうも、大日です。

誤字脱字があったら教えてください。また、コメントも待ってます。

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