17、大会
ゴスッ、バキャッ、メキッ、パパパ、パン、パン、パン!
「「オオオオオォォォォ!」」
近距離では拳と足が、少しでも離れると魔法銃に装填され、電磁加速された実弾と魔法が相手を喰い破らんと牙を剥く。
下駄も草履も、羽織さえも、今は邪魔と、アイテムボックスにしまわれ、彼らが今身に着けているのは、それこそ、服屋に行けば、1着三千円で買えるような安い着物と袴だけ。
二人の拳と足が当たり、かするたびに破れ、体から離れていく。
「「オオオオオォォォォ!」」
雄叫びが上がる。
しかし、二人の顔に浮かんでいたのは笑顔。笑顔とは、本来攻撃的であると言わんばかりに、二人の顔には、裂けたような笑顔が浮かんでいた。
一瞬でも気を抜けば、気絶、失格は免れない攻防の中、二人は笑っていた。その笑顔を作らせたのは、自分の力を示せると言った自己顕示欲では無く、自分と同程度、または、それ以上の力の持ち主と渡り合えるという事に喜びを感じる原始的な戦闘欲。
「ク、ククククク」
「フ、フフフフフ」
突如、二人は笑いながらバックステップを踏み、離れた。その際、バックステップの衝撃で上半身が露になるが、二人は気にしていなかった。
「ククク、やるなぁ、黒牙!」
「フフフ、殿の方こそ。よく私の速さに着いてきますね?」
「当たり前だ、供の速さに着いていけなくて誰が殿を名乗れる?」
「フフフ、それもそうですね、それでは!」
「ああ、これで終いにしようか!」
二人は、体に残った力の一欠片さえも残さんと言わんばかりに、左の手刀は相手に向け、力を右手に集め始めた。それは、神々でさえも、恐怖を覚えるほどの大きさの力だった。
「我流魔術融合格闘術………八炎獄狼拳!」
微妙な間は即興で考えたからだ、しかし、即興で作られた技にしては、龍牙の右手には、まったく脅しではない、炎が、漆黒の炎が渦巻いていた。黒牙は、右手に鋭い氷が交ざった吹雪が渦巻いたまま、ポカンとしていたが、
「おお、かっこいいでは無いですか。それでは、私も、我流魔術融合格闘、八寒獄狼拳!」
嬉々として真似し始めた。それを見て、若干嬉しくなった龍牙はニヤリと笑みを浮かべ、構え直した。その際、何人かの男神はやめてくれと言わんばかりに悶え苦しみ、また、何人かの女神は生暖かい笑みを浮かべていた。その心は、
((((((あいつら(あの子達)、何年か後で苦しむな(わね)))))))
だった。そんなことも知らず、二人は構えたまま、さらに力を集める。そして、
「「スゥゥッ、セイヤァァァ!」」
正拳突きを放った。放たれた正拳突きから龍牙の漆黒の炎が、黒牙の鋭い氷が交ざった吹雪が、放たれ、ぶつかり合い、打ち消し会い、打ち消し会えなかったエネルギーが、溶け出し、水蒸気へと変わっていく。水蒸気の壁が出来上がり、二人に迫ってくる。迫ってくる間、二人はまったく同じ事を考えていた。
((どうしてこうなったっけ?))
忘れたらしい。水蒸気の壁が迫るなか、彼らは、記憶を探り始めた。そして、二人が思い出したと同時に、二人の体は水蒸気に包まれた。
こうなった原因、それは、数分前のことだった。
どうも、最近、古い仮面なバイク乗り達の歌にはまった大日です。
誤字脱字があったら教えてください。また、コメントも待ってます。