16、大会前のいざこざ その2
「テメエ、なにしやがんだ!」
大勢の野次馬の居るなか、会場前の広間に、若い男の声が響いた。
「〇〇ダーキックだが?」
そんな疑問の声を、至極当然のように、答えたこれまた若い男の声が上がった。龍牙の声だ。
しかし、龍牙の答えは、間違いである。なぜなら、龍牙が放った飛び蹴りは、「ラ〇〇ーキック」では無く、「ライ〇〇卍キック」が正しい解答だからだ。では、「ライダ〇〇ック」と、「ライダー卍〇〇ク」どこが違うかと言うと、飛び蹴りが放たれるまでのモーションが違うのである。「ライダーキ〇〇」は、斜め上または、垂直に飛び上がり、空中で縦に回転して、一拍力を溜めた後、飛び蹴りが放たれるのだが、龍牙が放った飛び蹴りは、斜め上に飛び上がり、空中で縦に回転して、一拍力を溜めた後、腕を伸ばして、体にひねりを加え、横に回転することで、まるでドリルのようになって、貫通能力と、微妙にだが、スピードを上乗せされた回転飛び蹴りが放たれるのである。
ゆえに、先程龍牙が放った飛び蹴りは、「〇イダーキッ〇」では無く、「〇〇ダー卍キック」なのである。
「うぅ、なにが起きたんだ?」
そんなことをしている内に、気絶から目を覚ましたのか、先程龍牙が放った、「ラ〇〇ー卍キック」を食らったチンピラ神が呻き声を上げた。
「あ、起きた」
「大丈夫か、兄弟!」
「あ、ああ、兄弟、俺になにが起きたんだ?」
「あのガキだ!あのガキがやりやがったんだ!」
「んだと、このガキ、俺達が誰だか知ってやりやがったのか!」
「………」
返答はない。見れば、龍牙はうつむいていて、前髪で表情が隠れていた。
そんな龍牙の様子を見て、勘違いしたチンピラ神は更に攻撃をし始めた。
「おいこらガキィ今さら後悔しても遅いぞ!」
「ガキンチョどうやって償うつもりだ、アァ?」
「い……なん…い…………んだ? 」
「アァ? 」
「なにが言いたいんだ? ガキ」
「今何て言いやがった! 俺は、ガキじゃねぇぇぇ!」
ガバッと音を立てる様に龍牙が顔を上げた。その顔に浮かんでいたのは、怯えでも、恐怖でも無く、憤怒。
まるで鬼の様な顔をし、その背後にも、鬼を浮かべた龍牙の右手には、放電する風が渦巻いていた。
「雷龍魔拳!」
龍牙が正拳突きを放つと、その右手に渦巻いていた風が、耳をつんざく音を立てながら、さんざんガキと言った右のチンピラ神に突き刺さった。
風はそのまま、左のチンピラ神にも突き刺さった。
「「ギャアアアアアア!」」
絶叫と雷の光が辺りに走り、やがて、収まった。そこには、黒々とこげた、チンピラの残骸が残っていた。
しかし、怒り狂った龍牙が、これで終わるはずが無く、
「誰が身長中学年よりも下って言いやがったぁぁぁ!」
「殿、殿誰も言ってませんから! 虚無魔法は、虚無魔法は存在さえも残さずに消してしまいますから止めてくださいぃぃ!」
三十分後………
「ハァ、ハァ、ハァ」
「殿、大丈夫ですか? 」
「大丈夫だ、問題は無い…………はずだ」
半暴走状態だった龍牙がチンピラ神達を三分の二殺しにし、止まった。もともと彼は、半殺しでやめようと思っていたが、チンピラ神が、殴っている間、ガキを連呼したため、拳の連打が加速し、最終的に、パンダのような青アザ、膨れ上がった顔面とひどいことになったのである。
しかし、これ以上は殴れない。なぜなら、
「殿、そろそろ五分前です」
「いけねぇ、行かねば」
「じゃあ、試合頑張ってね。後、りんご2つあげるから、お腹減ったら食べてね」
「わかった、行ってきます」
龍牙と黒牙は、エリスに手を振ると、会場の中に入って行った。
遅れてすみません。
最近、某宇宙戦艦の曲にまたはまった大日です。
誤字脱字があったら教えてください。また、感想なども待ってます。