10、門を抜けると
第10話になりました。
投稿は、週末、長期の休み出来るだけします。
国境の長いトンネルを抜けると雪國であった。
確か『雪國』、と言う本だった筈だ。と、龍牙の脳裏を掠めたのは、ある本の一文だ。龍牙はこの本を読んだことはない、しかしこの一文を見たことはある。それは、まだ久美子が生きていた時の冬休みのある1日、夕飯が出来上がると知らせるため、部屋に入った際、久美子が読んでいたのだった。
そして、何故今彼がこんなことを考えているのか、それは、数分前に戻る。
「さて、そろそろ行こうか」
「いや、行くって何処へだよ?」
「我が家だ、我が家」
「いや、我が家って言ったって、――――――」
「何処にも見当たらないぞ?」、そう言おうとした龍牙を尻目に竜明は前方に手をかざすと、唱えた。
「ゲート」
唱えた瞬間、竜明を中心に教室に出た物と似た模様の半透明の門が出てきた。そしてそのままその中をくぐった。
「じいちゃん!」
『御隠居様、何処ですか!』
『そのまま、ゆっくりと前に出ればいい』
門の向こうから聞こえた声には、一片の苦悶も無い。龍牙と黒は互いに顔を見合わせ、門を走り抜けた。一瞬の浮遊感を感じ、目を開けると、口が半開きなのも構わず、呆けた。
「おいおい、嘘だろ?」
『何故ここに家が?』
そこには長年慣れ親しんだ日本家屋の家があったのだ。それも何もない真っ白な空間に生える様に。見れば、台所で誰かが料理しているらしく、明かりが点いて影が動いていた。
「ほれ、呆けてないで早く入るぞ」
ガラリと家の扉を開けた竜明の声に我に返った1人と一匹は急いで扉をくぐったのだ、そして、――――
「……………………遅い、バカ」
「へ、……ウグッ?!」
『と、殿ォォ!』
謎の罵倒と共に鳩尾に入った攻撃に1人が気を失った。
「う、うぅ~ん」
(何が起きた? それにここは何処だ?)
気絶していたからか、気だるさが龍牙の全身を襲う。おまけに若干息苦しい。しかし、鼻の所は空間があるらしく、涼しい外気を感じ取った。
(とりあえず、何だこれは?)
右手で顔の右半分を覆うものを触る、スベスベし、フニフニと弾力のある感触と、人の体温のような温かさが手に感じる、左手で左側を触ると、先程と同じ感触と温度を感じる。そこまで感じていた龍牙は今まで気にしなかった聴覚に神経を集中する。すると、両耳からは鼓動のようなものが聞こえた。
(いや、本当に何なんだ、これは!)
怠さを気力でねじ伏せ、起き上がる。するとそこには、金髪碧眼、耳の長い両胸がまるでメロンな美女が。
「…………へ?」
美女がニコリと笑う、龍牙もつられて笑いながら視線を下に降ろし、固まった、何故なら彼が手で触っていた物、それは美女の太すぎず、痩せすぎず、つまりちょうどいい太さの太股だったからだ。そして龍牙が先程まで顔を伏せていたもの、それは彼女の太股の谷間だ。
「本当に何なんだよぉぉ!」
…………同時刻、家屋の一室
『本当に何なんだよぉぉ!』
『あ、起きたらしいです』
「だな」
「あれがお前の孫か?」
「………新しい教え子、正直ワクワクする」
「よし、わしの鍛冶を叩き込んでやるか!」
「ほどほどにな」
「う~ん、だったら一緒に炎の扱い方も教えておかねーとな」
龍牙の絶叫は家屋中の人に気絶からの復活を知らせるのであった。
初魔法来たー!
膝枕の女性はエルフです。
ダークじゃないエルフの定番って金髪碧眼ですよね。
それにしても何処までも美人に縁のある主人公。
誤字脱字があったら教えてください。