プロローグ
丑三つ時、眠りの真っ只中にある日本のある県のある町にある家の住民にある人物が訪ねたことからこの物語は始まる。
「スゥ、スゥ」と、少年のような顔立ちの青年の寝息が部屋から響く、しかし次の瞬間、寝息が突然止まり、枕もとにあるものをつかみ布団に引きずり込むとまた寝息をたて始めた。しかし、今後はどこか気配を探しているような雰囲気をしていた。
青年が寝ていた部屋から少し離れている庭。そこでは飼われている獣が突然伏せていた体をおこしある方向をじっと見ていた。そして、何もなかった筈の空間から突然光の球が現れ、チカチカと二回ほど光り初め、そして周囲の何かを吸い上げ人の形を取り始めた。それは年をとっているにもかかわらず足腰のしっかりとした老人だった。
「この家も久しぶりだな。おぅ黒か?」
黒と呼ばれた獣は「ワン」と鳴き声をあげ、ふたたび体を伏せた。その様子を見て老人は苦笑いをするとゆっくりと動き始めた。
途中、広間に着くと壺の中にあった弓と矢を取り、弦に指を掛け勢い良く弾いた。ビィーン、ビィーンと音が部屋に響き、それに満足したのか二度三度頷くとまたゆっくりと動き始める。
青年の寝ていた部屋に着くと老人は弓の弦に矢を掛けたまま片手に持ちかえ部屋の障子を開けた。月の明かりが部屋に入り、青年の「ウゥーン」と唸る声があがる。
「おい、龍牙、起きんか龍牙」
老人の声が青年にかかるが、青年は「ウゥーン」と唸るとまた布団にくるまった。
「ふぅ」
老人はため息をつくと、片手に持っていた弓を両手に持ちかえキリキリと音をたてながら引き始めた。キリキリがやがてギシギシとなり、矢が放たれた瞬間青年の目が開き布団をはね上げ、そして枕を投げつけ老人の手から弓を落とさせると布団の中に引きずり込んだ刀を老人の首もとに持っていた。
やがて青年の脳が目の前の人物を認識し始め驚きの声をあげた。
「じ、じいちゃん? 」
「久しぶりだな、龍牙」
老人は青年の祖父、鬼刃竜明だったのだ。しかし、
「じいちゃん、今年の盆は過ぎた筈だろ」
今は10月、季節外れだった。
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