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水の中の月を抱きしめて  作者: 魔胡
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アパート

大学生の時、隆に誘われバンドを組んで活動していた。

バンド活動は、練習の為にスタジオを借りるので、資金が必要だった。

そのため、バイトをしまくった。

大学に、バイトに、バンド活動と結構忙しい生活を強いられたが、とても楽しくて、充実した日々で、今思い出してもキラキラしている。

隆がボーカルでリーダー、純一がキーボードで、俺がギターを担当していた。

学園祭の時など、凄く盛り上がったと、俺は思っている。

楽しかったなあ。

使っていた事務所兼楽器置き場は、もう借り手のいないボロアパート二階の一部屋。

二階に上がって直ぐの日当たりのいい角部屋だった。

バンドの事務から、全ての雑務をしてくれていたマネージャーの多香子から、数日前に電話がかかって来て、当時の話しに盛り上がった。

でも多香子は、話している時、たまに奥歯に物が挟まったような、ハッキリしないような感じがあり、

「困ってる事があったら、話してくれよ。」

と振ると、

「……借りていた部屋にまだ物が残っているので、処分して欲しいと大家さんに言われたの。」

と多香子が言うので、

「な~んだ、じゃあ2人で下見しようぜ。」

という事になり、アパートの入り口で待ち合わせる事になった。

暫く待っていると、純一と隆がやって来た。

なーんだ、多香子は2人にも声を掛けたんだ。

「久し振り!どうしてた?会えて嬉しいよ。」

「久し振りだな。中に入ろうぜ。」

以前と全然変わらない隆がそこにいた。

あれっ、2人は鍵を持っているのか?

俺は鍵を持ってる多香子待ちだったのに。

んっ?

純一は少し下を俯いている。

具合が悪いのかな?

少し元気が無さそうだ。

2人は先に階段を上がっていってしまう。

「おい、はいれるのか?鍵持ってるのか?」

すると、隆がドアノブに手をかけながら、階段の途中にいる俺の事を振り返り、ニコニコと本当に嬉しそうに見つめながらガチャと、ドアを開けた。

アレ?

開いていたのか?

なんだよ、俺、間抜けじゃあないか。

開いていたのに、ボッーと1人で待っていたなんて。

部屋の中へ隆、純一と入っていったので、慌てて後を追い中へ入っていく。

玄関で靴を脱ぐ時になって気がついた。

まずい、今日履いてきた靴は、紐の短ブーツで脱ぐのに時間がかかる。

2人はもう既に部屋へと行ってしまったようで、玄関にはいない。

早いよ、ちょっとは待ってくれてもいいのに。

焦るー!

なぜだろう、俺汗かいてる。

暑くないのに。

部屋へ入っていくと、2人は話しをしていたのを止めて2人同時に振り返り、俺を見てニコニコする。

本当に嬉しそうに。

俺も久し振りに会えてめちゃくちゃ嬉しいよ、

何の話しをしてたんだ?

俺もまぜろよ。

2人の傍へ行こうとしたら、後ろで音がした。

振り返ると、多香子が入って来た。

「ごめーん、遅くなっちゃって。将生くん、鍵無いのに良く入れたねー。」

「隆が鍵を持っていて開けてくれたから、純一とも一緒に先にはいちゃったよ。隆と純一にも連絡してくれたんだな。ありがとうな。」

「何を言ってるの?私、連絡して無いよ。」

「?外で待っていたら、隆と純一が来て、隆がドアを開けてくれたんだよ。なあ、そうだよな。」

と、部屋の奥、荷物が埃をかぶっている所に立っている2人に声を掛けた。

日当たりのいい部屋なのに、荷物とカーテンでそこは闇となっていた。

そこには、…誰もいない……。

嫌な気がする。

「どうしたの?誰もいないよ。変な事言わないでよ。」

嫌な気がする、嫌な気がする。

どうしたらいいのだろう……。

焦る、頭が真っ白になり何も浮かばない。

しっかりしろ!考えるんだ。

「多香子、隆と純一の電話 番号知ってるか?」

鳥肌が立ってきた。

寒い。

背中が雪のように寒い。

「電話をかけてくれ!今、2人はどうしてるか、早く!」

駄目だ、涙が出てきそうだ。

顎を上げ天井を見る。

そうでもしないと、目からこぼれてしまいそうで。

誰か助けてくれ!

ふたりを助けてくれ!

「わかったから、落ち着いてよ。でも、知ってるのは実家の電話番号だけなのよ。」

多香子は電話をかけてくれた。

呼び出し音が鳴っている。

早く出てくれと、心の中で手を握り締め祈る。

俺の想像が間違ってますように。

呼び出し音が鳴ってる。

出ない。

どうして、誰も出ないんだよ!

我慢出来ない。

「多香子、誰にかけてる?」

「純一の家。」

「隆の家にかけて。」

2人の番号残しておけば良かった。

こんな事がおきるとは思わなかったものな。

呼び出し音が鳴っている。

鳴ってる、

出た!

多香子が応対している。

電話を切った。

「どうだった?」

「2人が、一緒の車に乗っている時、……事故にあって、亡くなったって。今日午前中の事。今は、まだ病院かもだって。留守を預かってる人だから、詳しい事はわからないから、…後で~連絡~してくれる。わあ~んひどいよ~。わあ~ん」

「ちきしょう!!ちきしょう!!」

俺は拳で壁を叩いていた。

何かが頬を流れていく。

「バカやろう!!」

絶叫していた。




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