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出会いと始まり

初投稿です。文章の読みづらさなどありましたら多めに見ていただけると嬉しいです。

学校なんて大嫌いだ。先生も生徒も大嫌い。家族も大嫌い。何もできない自分はもっと大嫌い。


人間なんて、みんな自分勝手で、自分の思い通りになると調子に乗って、思い通りにならないと怒りだし、終いには暴力でいうことを聞かせようとする。


私は地味で暗くて、人と話すことが苦手だった。

するとそんな私に、学校の人達は嫌味を言い、からかってくるのだ。それが段々エスカレートし、役割を押し付けたり、使いパシリにする。

先生はそれを知らない。クラスの人達は先生の前では上手く隠すのだ。私には猫をかぶっているようにしか見えなくて、気持ちが悪い。

家族だってそうだ。相談しても聞く耳を持たないし、自分のストレスをぶつけてきたりする。


私はそんな人達の思い通りになんてなりたくなくていつも逆らっていた。

すると相手はすぐに暴力に走る。

こんな毎日、大嫌いだ。早く終わってしまえばいい。誰か連れ出してくれないだろうか。それともいっそ自分の手で、人生を終わらせてしまおうか。

そんなことを毎日考えるようになった。

でも考えれば考えるほど、そんな奴らのせいで死ぬなんて自分が負けたように思う。どうせなら大嫌いな人達に最大限の仕返しをしてからがいい。といっても、散々馬鹿にされたのを見返してやりたいだけだ。いつできるのかもわからないけれど。


ある日の夕方の事だった。いつもどおり学校に行き、授業を終え、下校しているところだった。何もかも変わらない一日だった。変わったことといえば、身体中の痣や傷の場所くらい。

下を向きながらとぼとぼと通学路の土手を歩く。草が長く伸びてきていて、転びそうで危ない。きっとここで落し物をしてしまっても、見つけるのは大変だろうな。

そんな事を考えながら歩いていると、


「・・・?」


見つけたのだ。


少し先の道の端に、草むらに紛れてこちらを覗く『なにか』がいるのを。

足を止めてその『なにか』を凝視する。

一目で動物ではないとわかる、水色の体。

背中にちょこんと生えた、小さな羽。

腰の辺りから長く伸びている、尻尾。

口元で鋭く尖る牙と、同じく腕から鋭く尖る爪。

まるで絵本から出てきたような、私が想像する怪獣のイメージそのものだった。

どちらかといえばドラゴンのような姿だったが、小学生の私には怪獣もドラゴンも同じようなものに思える。


その怪獣と目があってしまった。


私は思わず息を呑んだ。

怖くて動けなくなるような、禍々しいしい瞳だった。


「キュアアアアアア!!」

「へっ?!・・・わわっ!」


その怪獣は突然聞いたことも無い声を出すと、小さな羽をパタパタと動かし、私の方に飛んできた。


私は驚いて後ずさり、足を引っ掛けて尻餅をついてしまった。腰が抜けたみたいだ。立ち上がれない。

怪獣なんて、本では毎回悪役として登場するものだ。正義のヒーローと共に戦う怪獣なんて見たことがない。

悪いイメージしか浮かばない。どうしよう。食べられてしまうんだろうか。怖い。怖い。怖い!


私はとっさに腕を顔の前で交差させて頭を守るようにうずくまる。

しかし、怪獣は一向に食べようとする気配はなく、うずくまっていることでガラ空きの私の背中に、詳しくいえば背負っているランドセルの上にちょこんと乗っただけだった。

特に敵意は無いようだ。それでもその禍々しい牙や爪を思い出して、どうしても恐怖を振り払うことはできなかった。

怪獣はランドセルの上に乗ると、そこを調べるように鼻をスンスン鳴らしながら私の背中の上を歩き出す。

「〜〜〜〜ッ!」

背中には暴力を振るわれた時の痣が残っていて、怪獣が移動する度にランドセルの一部分が重くなり、痣が押されてとても痛いしムズムズする。振り払いたかったがやはり恐怖には勝てず、びくびくしながらもどいてくれるのを待った。

怪獣は段々上に登っていき、私の首の前で立ち止まると、おもむろにうなじに噛み付いた。

「いっ?!痛・・・!」

突然の事で驚いたが、注射のようなチクッとした痛みで、先ほどまで想像していた、食べられるような痛みではなかった。

「うう・・・」

すぐに違和感を感じた。目が熱い。どうしてだろう。噛まれたのは首の筈で、首が痛くなる筈だ。なのに何故か目が焼けるように熱かった。

痛みはすぐに引いた。しかし、明らかに噛まれる前とは何か感覚が違うように感じた。

恐る恐る噛まれたところを触ってみた。どうやら血は出たものの、すぐに止まったようだ。ああびっくりした。死んじゃうかと思った・・・。

死にたいといつも思っていた自分が、死ぬことに恐怖したことに気づき、驚いた。

それでもなお、怪獣への恐怖が消えない。

怪獣は私の背中から降りると、うずくまる私の正面に座ってこちらの顔を覗き込み、口元を緩ませた。笑っているのだろう。猫が喉をゴロゴロと鳴らしながら目を閉じている仕草に似ている気がする。

怪獣が笑ったことに、私は何も感じなかった。

その時、ちょうど二つの感情が私の中で葛藤していたのだ。

一つは恐怖。もう一つは


非日常に出会えた事への、興奮だった。


その時からだ。 私の世界が変わりだしたのは。

忘れもしない。私の人生が大きく変わった日。




学校の帰り道、私は小さな怪獣に出会った。

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