第2話 悪代官登場!
未知なる道を歩いていると不意に出くわした怪しげな一行。
ミーツと名乗る爺さんとそのお供に連れられて、相沢と横峰は街に入る。
するとそこには……
翌朝街に入ると、爺さんと一緒に行動しようと決めた俺の判断が正しいことがわかった。
街は城門をくぐると大勢の異形な人々で埋め尽くされていたのだ。異形ってのはあくまで俺的感覚なんだがな。
鎧を着た騎士みたいな連中。代官所の兵士だそうだ。そして爺さんみたいな軽装の連中。旅人や行商人らしい。そして、兵士ほど重装備でないが武装や長距離の移動に適した装備を持っている連中。冒険者って呼ぶらしい。
その人種も、俺と横峰がびっくりする連中が多い。俺たちや爺さん一行みたいな、見た目人間な連中。武器や防具、雑貨を売る背の低いヒゲ男。ドワーフ族っていうんだって。冒険者で多いのは人族ととんがった耳が特徴的な耳長族だ。魔法使いらしいが聞かされただけじゃよくわからん。
「相沢さん、これまんまファンタジーですよね」
横峰が俺に言ってくる。指○物語とかナルニ○国物語みたいな感じだって言いたいことはよくわかった。俺も同じことを考えているのだ。
と、同時にもうひとつ疑問に思っていたことをミーツ爺さんに聞いてみる。
「爺さん、なんで昨日はそのまま街に入らなかったんだい?」
そういえばこの爺さんとは普通に会話できている。爺さんの声は耳というよりも直接頭に響いてくるような感じがするのだ。
これも何か理由があるんだろうな。
「ふむ、この街の代官とちょっといろいろあってのう……。かといって日が沈んでから動くとここいらは盗賊が多い。早めに野営するに越したことはないからの!」
だ、代官? 代官って時代劇とかに出てくるアレか?
「このあたりを国王に代わって統治する役人じゃ」
ミーツ爺さんと会話すればするほど「?」なキーワードばかり増えていく。たぶんこの状況で警察に捕まったら、
「容疑者は意味不明のことを供述しており」
って表現されるレベルだぞ。
街の目抜き通りに差し掛かったところで俺たちは不意に鎧を着た連中に囲まれた。というか、待ち伏せされていたんじゃないかってくらいの勢いだ。
「止まれ!」
俺たちの進行方向をふさぐ形で兵士の一団が固まっている。振り返ると、今俺たちが歩いてきた道にも同様に兵士の群れ。要するに完全包囲されている。市民や旅人たちは遠巻きにこの様子を見ているだけだ。
と、前方の兵士の群れをかき分けて一人の男が歩み出てきた。兵士とは違い鎧姿ではない。なんとなく悪趣味なローブに身を包んだ中年のでっぷりした男だ。
「エーチゴ国の商人ミーツ! お前、わしが手をつけようとした耳長族の女を連れ出したな!」
結構情けない内容なんだが結構な勢いで堂々とほざく、でっぷり男の言葉にミーツ爺さんは飄々と答える。
「お代官様。女はまだ十九。親が高利貸の借金を払えず、売春宿に売り飛ばされるところを救ったまでです。父親は博打大好きなどうしようもない男で、博打の負け分をさらに借金していたようですな。あ、ちなみに高利貸も賭場も売春宿もお代官様のお店でしたかな?」
え? 代官が高利貸しを経営して払えなくなった債務者に自分が経営する賭場で賭博させて、娘を借金のかたに自分が経営する女郎屋に叩き売ってるの?
「さらに父親の賭博を辞めさせようとした母親を利用し、自分に従わない商家へ盗賊の押し込みの引き込みまで行う始末」
あくどいぞ、このおっさん。しかし、詰めが甘い。と思わず俺は考えてしまう。
「ぬぬぬ……、我が企み知られたからには生かしておけぬ! 者ども! この爺と連れを始末しろ!」
当然ながら反論の余地がなくなったローブのおっさんは部下に命令した。俺たちを取り囲む――というかミーツ爺さんを取り囲む中に俺と横峰が巻き込まれているだけ――兵士たちが一斉に抜刀する。
それにしてもこんな往来で企みを爺さんにしゃべられた時点で、もはやアウトなんじゃないの? って俺ですら感じる疑問はどうも当事者の間では無問題らしい。都合のいい事で……
「ぬおお!」
「でやあ!!」
兵士たちが爺さん一行に襲い掛かる。スーケとカークが爺さんを守るように兵士の前に立ちふさがっている。
「横峰、どーすんだ?」
俺はある意味あまりの展開に唖然とする自衛官に尋ねた。
「どうするって、わけがわかんないんですけど……」
道端で出会った爺さん一行について街に入るといきなり代官を名乗るおっさんにグタグタ言われ、どうやら俺たちは爺さんもろとも殺されかけいているらしい。
普通に考えたら非常にまずい状況だ。
だが、俺はかなり冷静だった。というか正直「ドン引き」だったのだ。日本人の皆様ならそろそろお気づきの「圧倒的に安定感のあるアレ」な展開を感じていたからだ。こんなわけのわからない世界で日本人的な感覚を覚えるのもよっぽどだがね。
「横峰、一発空に向けてパーンって撃てる?」
「え? それはまずいんじゃ……」
自衛隊が国内で実弾を発砲すれば問題だが、ここはどうも日本ではないようだし、このままだと多勢に無勢で爺さん一行が危ない感じがする。代官の殺害対象にはどうやら俺たちも含まれているようだし。
「いや、でも中隊本部と連絡して……」
めんどくさいことを言う横峰の持っている小銃を不意打ちな感じで奪い取ると、銃口を空に向け生知識で引き金を引いた。
ぱーん!!
予想以上の衝撃で思わず銃を落としそうになる。
大立ち回りを演じていた爺さん一行と代官一行は銃声で完全にフリーズしているようだ。周囲を取り巻く人々も含めて目線が俺に集中している。
いかん。この後の展開を何も考えていなかった。
数秒の間をおいて、空気を読んだスーケが腰巻からペットボトル大の石を取り出し代官たちに向けた。
「お、おお!」
兵士たちから湧き上がるざわめき。代官の顔色が蒼白になる。
どうやら連中の価値観ではかなり権威ある代物のようだ。
「ここにおわす方をどなたと心得るか! 恐れ多くも先のノルドライド神聖王国国王にして大魔導師、ミーツ・パウ・ノルドライド様にあらせられるぞ!!」
スーケの芝居じみたセリフの後、さらに数秒。状況を理解したのだろうか、兵士は一斉に跪き、周囲の人々もそれにならい、代官は地面にひれ伏したのだ。
一騒動が落ち着いて、俺と横峰は代官屋敷に招かれていた。屋敷とはいってもちょっとした城砦だ。その一室に俺たちはいた。
「相沢さん、いつから気がついてました?」
横峰の問いかけ。イスとテーブルしかない殺風景な部屋で俺たちはかれこれ一時間近く待たされているのだ。
「あんたをスーケだかカークだかが襲った後からかな」
「そんなに早く? なんで言ってくれなかったんですか?」
そう言われてもな。
俺たちが日本ではない異世界に飛ばされて、そこで出会ったのが水戸黄門ばりの爺さんで、たぶん悪代官を倒しに行く途中だって推測、どこの誰が信用するよ?
そうでなくてもここには説明不能な謎が多い。爺さんたちと普通に会話できることとかな。情報と知識が欲しい。この世界が何なのか、俺たちは元の世界に帰れるのか。俺たちと同じような日本人がこの世界にいるのか。などなどだ。
そうこうしているうちに俺たちは爺さんに呼び出しを食らった。
「相沢殿、参られましたか! さ、どうぞ」
カークの言葉に促されて俺は代官の部屋だったドアを開ける。ダイニングテーブルみたいな長い机が置かれている部屋の奥にミーツ爺さん、じゃなかったミーツ・パウ・ノルドライド前国王陛下が鎮座している。おそらく客人を招いて会食をするような部屋なのだろうな。
「おお、来たか! まあ座りなさい」
そう言って陛下はダイニングテーブルの一番手前に俺を座らせる。下座とお誕生日席な位置関係なのかな? 夕べは雑魚寝した間柄だ。数メートル離れて対峙するのもなんだか居心地悪い。
「しかし、此度は災難であったな」
爺さん、もとい陛下のお言葉。
「それは俺たちがこの世界に迷い込んだこと、陛下のお戯れに巻き込まれたこと、どちらでしょうか?」
俺はたっぷりの嫌味を込めて返す。これを聞いて陛下は目を細めた。
「どちらもじゃよ。まあ、此度のことに当事者でないわしが何を言ってもアレだが、そなたにとって悪くない話を用意したつもりじゃ」
「なんでしょう?」
陛下の立場としては、俺たちがこの世界に来たこと、陛下のいざこざに巻き込まれたことは自分の責任ではないと言いたいようだ。だが、俺たちのことも考えて何かしてくれるらしい。俺としては貸しも借りもない間柄。貸してくれるものは黙っていただくまでだ。
そこまで考えた俺に、陛下はとんでもない言葉を口にした。
「代官やってみないかのう?」
この場面が一番ご都合主義ですw
以降はもうちょっとまともになります




