00.輪廻奏者の少女のこれまで
「とある世界の反乱紀」を差し置いて新たな連載を始めさせていただきます。
えー、「とある世界の反乱紀」は二度と書かないというわけではありません。
また、このお話がひと段落ついたら始めようかなと考えています。
よろしくお願いします。
一番初めの記憶は綺麗な部屋。
足に絡まる金の鎖と手首に絡まる銀の鎖。
細いけれど決して外れない鎖を身にまとい、豪華なドレスを着せられて、
今日も『お客様』と出会う。
『お客様』はみんな眠っている。
深い深い二度とさめぬ眠りについて、転生するのを待っている。
でも、私によって覆される。
輪廻転生の輪から外れ、人として終えたはずのせいをもう一度人として生きる。
彼らが望む次の人生は訪れない。
私が死ぬその瞬間まで。
可哀そうだけど、私も逆らえないのです。
逆らえば周りが怖いから、どうか許してくださいな。
目覚めの時は強制的に訪れる。
起こしてしまってごめんなさい。
けれど、私は逆らうことはできないから。
今日も、私はこの命と引き換えに『お客様』を目覚めさせるしかないの――――――
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「姫癒樹。今日のお客様はとても大事な方だ。
失敗すれば、紗有沙の命はないと思いなさい。」
紗有沙。
私の大切な妹。
我が一族の中で、珍しく短命に生まれてしまった輪廻奏者。
私が10歳。
紗有沙が4歳のときに、この男に誘拐されて、今に至る。
「はい、利刀様。」
「紗有沙はお前が働かなければ使うからな。」
「承知しております。」
紗有沙に輪廻奏者の能力は使えない。
短命に生まれた輪廻奏者は、その命を使えばたった一度で死んでしまう。
「この仕事を成功させれば紗有沙に会わせていただけますか?」
紗有沙、あなたはもう20歳ぐらいかしら。
私、あなたに会わないからあなたの顔が思い出せないの。
たった一人の私の家族。あなたに会いたい。
「いや、ダメだ。」
「何故?」
「お前は紗有沙を連れて逃げるつもりだろうからな。」
「金づるとしては十分働いたつもりですが。」
「まだ足りないに決まってるだろう。」
何故、人はここまで貪欲になれるのだろうか。
「あと、どれくらいで紗有沙に会えますか?」
「紗有沙が死ぬ前には会わせてやるよ。」
ああ、それだけなんですか。
私はいつまでここにいるのだろうか。
抜け出したい。
この檻から。
紗有沙。
あなたはどこにいるの?
私は、あなたとともにここを出たい――――
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その機会は、とても早く訪れた。
「鈹柴利刀、お前は美桜陛下の名のもとに無期懲役永久労働の刑に処す。」
突然踏み込んできた男たち。
あの男を捕らえ、どこかに連れて行く。
「君、名前は。」
うす紫の髪に闇夜の瞳の男が私の前にいた。
「………助けてくれてありがとう。他に女の子はいますか?」
「いいや、いなかったよ――――――生きてる子は。」
質問に質問を返した私を怪訝な顔をするでもなく、痛ましそうに見つめた。
それだけで、理解する。
紗有沙は、もう、この世にいないことを。
「遺体は……?」
認めたくなかった。
生きていなかったなんて。
我が一族は、輪廻奏者の業を背負うから、輪廻転生の輪を外れる。
輪廻転生の輪を外れた者は輪廻奏者の恵を受けない。
すなわち、紗有沙は二度と目覚めない――――――
そっと連れてこられた霊廟で、穏やかに微笑み眠る銀髪の少女。
閉じられた瞳には輝かしい水色の瞳があったはずなのに。
記憶の少女よりも大人びて、私よりも成長している紗有沙。
あなたと最後に話せたのは、あなたが4歳の時だった。
二度と、あなたと話せない。
「……紗有沙。」
どうか、安らかなる眠りを。
どうか、輪廻奏者の業を背負わず、次の世へ。
輪廻転生の輪に戻れるはずがない。でも、あなたは短命の子だったからもしかしたら戻れるかもしれない。
だからどうか、次の世で幸せになって。
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人身売買を行い不可解な方法で人をよみがえらせた重罪人、鈹柴利刀。
1935年 那領国女王美桜により、無期懲役永久労働の刑に処される。
踏み込んだとき、地下に眠っていた一人の少女は手厚くもう一度土に埋められた。
奥の部屋で鎖につながれた少女は、忽然と姿を消した――――




