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Ice pick fantasy  作者: 場違い
3/3

ゼウスの計画、魔法と棒の第二話

突然現れた自称神の少年、ゼウス!!

彼はいったい何者なのか!?ストーリーは進むのか!?

ラノベ小説第二話!!

坂崎が、いい加減踏むのにも疲れたらしく、足を休める。

すると、自称神のマゾガキ・ゼウスは、蹴られた体の傷をさすりながら、この不可解な現象について語り始めた。

「えー、まず。もう分かっちゃってると思うけど、君らが本日体験した、消えたりワープしたり吸い込まれたりは、全部僕のせいです」

「うん、満面の笑みで自白してるとこ悪いけど、一発殴っていいか?」

「男に殴られる趣味は無いんだっ☆ごめんね☆」

「語尾に☆をつけるな腹立つ!!」

・・・あー、なんか、こいつが神って、信じていい気がしてきたな。

口喧嘩で敵う気がしないし、しかもなんと言うか、『戦わずして勝ってる』みたいな雰囲気さえある。

・・・というか、さっき坂崎に蹴られた傷が、もう治まってやがるしな。

俺はなんか、呆れを通り越してどうでもよくなってきて、額を抑えた。

「まあ、お前が俺たちを拉致った犯人ってのは分かったけど。で、目的は何なんだ?」

「愉快犯だよっ☆」

「よし坂崎、踏み殺していいぞ」

「ラジャー」

「あー、待って待って、冗談。冗談だよ?ちゃんと話すからー」

ったく・・・。どうしてそう人をイラつかせる返答が思いつくかなあ?

俺はどうでもよくなったのを通り越して面白くなってきて、苦笑いした。

「何かもう、お前のこと、ウザいって感じるよりも、面白いって感じ始めたよ・・・」

「あはは、そりゃどーも。ところで、女の子の胸はどのくらいが好き?」

「うーん・・・中学の頃はでっかければでっかいほどいいと思ってたが、今はCくらいがそそるな・・・」

「ほほお、真神くんもなかなかコアだねぇ・・・」

「お前こそ、ガキの癖にマゾっ気があるなんて、なかなかやるじゃんか・・・」

俺はすっかりゼウスと意気投合した。

これからは、こいつの事を『性春の友』と呼ぶとしようか・・・。

「何最低の意気投合してんのよっ!!いいからとっとと洗いざらい吐きなさい、エロガキ!!」

「ぶへぁっ!!どうせならエロ神って呼んでほしいな、坂崎ちゃん☆」

「エロは否定しないのかよ!!ちゃん付けすんなよ!!語尾に☆を付けるなよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

蹴られたら悦ぶんだからやめときゃいいものを、坂崎はマゾガキをゲシゲシと蹴りまくっている。

・・・なんかデジャヴだな、おい?


そのあとも何度か無駄なやり取りを繰り返し、ゼウスはやっと、今回俺たちを連れてきた理由について話しはじめた。


「まず、今から僕の言う話を理解してもらうには、この空間について知ってもらうのが一番手っ取り早い。いいかい?僕の手の動きを見ていてくれ」

ゼウスの口調が、今までとはうって変わって、真面目なものになった。

言われるがままに、俺たちはゼウスが広げた両手を注視した。

・・・別に何の変哲もない、ガキの小さな手だ。


だが――。


『・・・バニセアーナ・ペルセアンテ!!』


何の変哲もない手から、出ているモノが、変哲だらけだった。

「なっ・・・・・・!!」

「う、ウソ・・・!?」

ゼウスが謎の呪文を唱えた瞬間、緑っぽい色の大地はとてつもない鼓動を打ち始めた。

うぉあっ・・・!?じ、地震ってレベルじゃねぇぞ、これ・・・・・・!!

俺は、バランスを崩して倒れかかってきた坂崎を支えながら、どうにか波打つ地面の上で踏ん張った。

「お・・・おいこらゼウス!!何のつもりだっ!?」

「あ、ごめんね、説明も無しに始めちゃって!!安心して、君らに危害は与えないから!!」

「俺らを消したりワープさせたり吸い込もうとしたりしたヤツが何言ってんの!?」

うおががががが!!揺れてるなんてもんじゃねぇ!!もっと恐ろしいものの片鱗を味わってるぜ!!現在進行形でな!!

・・・って、あれ。

坂崎がやけに静かだな、どうした坂崎・・・・・・。

「――――――」

「ぎゃああああああああああああああ!!気絶してるうううう!?」

ひ、ヒイイイイイイイ!!白目っ!?白目剥いて気絶してらっしゃる!!泡吹いてるぅぅぅぅぅぅ!!?

どうすんだよこれ!!し、死んでないよな!?いやマジで、死んでても不思議じゃない顔色だぞコレ!!

「うおぉぉぉぉぉぉい!!この人めっちゃ危害受けてるんですけどっ!!気絶してますけど!!」

「えっ!?ご、ごめん!!まさかそこまで乗り物酔いするタイプとは・・・」

「乗り物酔いってレベルじゃねぇからコレ!!」

「ごめん、でも、もう少しで魔法が発動するから、耐えて!!」

くそっ、俺まで気分が悪くなってきた・・・!!

強烈な胸焼けと廻る世界の中、俺は今にも飛びそうな意識を、どうにか保っていた。

と、その時。


「――発現(アウトブレイク)ッ!!――」


ザアアアアアア・・・!!

波の波紋が広がるような音が鳴り、緑っぽい大地の揺れが止まる。

「な、何だ・・・?」

突然止まった事で生じた、振動の事後症状が、また俺の気分を悪くさせる。

うぐぐぐぐ・・・ん?

いつの間にか俺の気分は、魔法をかけられたように回復した。

「魔法をかけたんだよ、治癒魔法・ピルースをね」

すでに大地を揺らす魔法はかけ終えたのか、ゼウスは、俺たちに治癒魔法とやらをかけてくれた。

坂崎にも魔法をかけてくれたようなのだが、いくら神の治癒と言えども、意識までは戻せないらしい。

「仕方ない・・・真神くんだけにでも、見せておいてあげようか」

「は?見せるって・・・もう十分、魔法は体験したんだけど」

もう、あんな気持ち悪いのはごめんだ。魔法に憧れていた時期が、俺にもありました。

俺のイヤそうな表情に気付いたのか、ゼウスはあはははっ、と快活に笑った。

「大丈夫大丈夫。もう揺れたりしないよ。・・・本当に、『見る』だけでいいんだ」

「そこだけ聞くと露出魔みてーだな」

「な、なぜ僕に露出癖があると分かった・・・!?」

「いや例えだよ!!ていうかあるのかよ!?」

まったく、ツッコミがいちいち疲れるヤツだ。あとでピルースかけてくれよな。

「あっ、そろそろ始まるよ!!あっちを見て!!」

やれやれ、もう何が起きても驚くもんか。どーんと来いや。


俺はそんな心構えを胸に、ゼウスの指差す方に向き直ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!


その方向の先には、さきほど俺たちを吸い込んだ明るい球体の9万倍サイズみたいなのが、宙に浮いていた。

そしてその球体は・・・


サイズにふさわしい轟音をたてて、爆発した。


そしてその爆発の後・・・


1つの町が出来た。


「ウワアアアアアアアアアアアアアアアア!?ヒェォォォォォォォォォォォォォォォォ!?ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ!!!」

「ああっ!!ま、真神くん、正気を保って!!」

うるせえ!!これが正気を保ってられるか!!球体がいきなり出現して爆発して町が出来たって、何このカオス!?

「こ、こんな幻覚見るなんて・・・死なせてくれ!!ゼウス!!火炎魔法か何かで焼き殺してくれえええ!!」

「落ち着いて!!早まらないでええええええ!!」

嫌だああああああ!!幻覚の中で死ぬなんて嫌だああああああああああああああああ!!


俺はただひたすらにパニックを起こしていたが、しばらくして、やっと落ち着いた。

・・・まだ気味の悪い冷や汗がだらだら出てきてるが、まあ、精神は落ち着いてますぜ。大丈夫だぜ。

俺がパニックに陥っている間に、坂崎も目を覚ましたようだ。

突如出現した町の存在に関しては、パニックに陥ることこそなかったが、ただただポカンとしていた。


二人の動揺が落ち着いてきたところで、ゼウスは、魔法など、全てについての説明を俺たちにしてくれた。

「さっき言ったように僕は神だから、魔法とかは当たり前に使えちゃうのだよ。さっき、町作ったり、君らを治癒したようにね」

「「・・・・・・」」

魔法という概念が当然のように通用するその説明は、俺たちにとっては突飛すぎて、ただ頭痛を誘うだけだった。

とはいっても、町を作ったりしたアレは完全に魔法だから、信じないわけにもいかないし。

なんと言うか・・・いたたまれない気分になるぜ。

「あんたがカミサマで、しかも魔法を使えるってのは分かったけどさ」

坂崎が首を傾げながら、怪訝そうに尋ねる。

「カミサマが、私たちみたいな一般の高校生に何の用よ?私たちをここに呼び出したのは、あんたなんでしょ?」

確かにそうだ。

俺が何か、カミサマ直々に異世界に呼び出されるような事をしでかしたとでもいうのか。

「あはは、まあ、正直なトコ、人間なら誰でもよかったんだよ」

「「おいこら」」

自分が『選ばれし者』的な何かなのかと思った俺の期待を返せ。

「ははは、ごめんね。いやでも、人間なら誰でもよかったっていうのは本当なんだよ。ただ、あんまり人間が集まりすぎてもダメだってことで、テキトーな条件を設定したんだよ」

「条件・・・?」

何だろう。俺たち二人に共通する条件と言えば・・・・・・?

ま、まさかコイツ!!

そんなユルユルな条件で、人間選出しやがったのか!?

俺にはゼウスの設定した『条件』が、既に何となく分かってしまって、言葉を失った。

ゼウスが胸を張って答えた条件は、果たして俺の予想の通りだった。


「とりあえず、『7月10日の午後に、アイスの当たり棒を引いた人間』という条件を持つ者に集まってもらったんだけどさ―」


「「神さまテキトーすぎるっ!!」」

最悪の人事センスだ、神話史上最悪の人事センスを持った神がここにいるぞ!!

全国の宗教家の方々・・・。あなた方の信じた神は、少なくとも万能ではないようです。

俺は、いたたまれない気分にさらに輪をかけて残念な気分になってきた。

「・・・あれ?でも待てよ」

ふと、ある疑問が頭に浮かんだ。

「そんなユルい縛りで人間呼んだのなら、俺たち以外の人間も、ここにいるはずじゃないか?」

「ああ、うん。いくら僕が神といっても、沢山の人間を召喚するのはさすがにツラいからね。他の子たちは、後で呼ぶよ」

なるほど。

ようは、いっぺんに課題を終わらすのは疲れるから、小分けにしてコツコツ終わらせるってことだな。夏休みの宿題かよ。

「で?」

坂崎がまた首を傾げる。

「結局のところ・・・私たちをここに『召喚』した目的は何なの?」

・・・・・そう言われてみれば。

何回かその理由を聞き出そうとしたら、そのたびにはぐらかされてきた気がする。

「とっとと聞かせなさいよ、その理由を!!踏むわよ!!」

だから、こいつマゾだから踏まれたら悦んじゃうんですってば。

坂崎がだいぶ興奮してきて危ないので、俺からも重ねて、ゼウスに説明を求める。

「うん、じゃあ、ちょっと言いにくいんだけど・・・説明、そしてお願いをするね」

「お願い?」

何だろう。カミサマが、俺たちみたいな平凡人類に『お願いする』ことなんて、思い付かんが。

と、俺が変なところに引っ掛かっている間に、ゼウスは説明を始めた。



15年前・・・天空界と魔界では、天使と魔族が、大規模な戦争を始めたんだ。

それはそれは悲惨な戦争で、何人もの天使が死んで、魔族からも、大量な犠牲が出た。

そして13年前、多大な犠牲を伴った戦争は、我々天空界の勝利という形で、幕を下ろした。

・・・捕捉すると、当時、僕は神ではなく、僕の祖父・アルカスディオが、絶対神だったんだけどね。

説明を続けよう。

この戦争―僕たちは『摩天楼革命』と呼んでいる―は、終戦後、僕らの住む天空界に、ある社会現象を起こした。


いわゆる、『ベビーブーム』というものだ。


次々と子供が産まれ、天空界の人口は急激に増えてしまった。

凄惨な戦争で、沢山の死を目の当たりにした天使たちが、本能的に子孫を残そうとしたんだろう。

だが・・・戦争で人口が減った事を差し引いても、明らかに人口は『増えすぎ』てしまった。

こうして、空前絶後の過密国家が誕生したわけなんだけど・・・。

ものすごいタイミングの悪いことに。


その時神だった僕のじいさんが、過労死しちまったんだ。


父さんは失踪してるし、後を継ぐのは、僕の一族にしか許されていない特権だ。だから必然的に、僕は神に就任させられることになってさ。

もちろん、僕の初仕事は、この過密状態の解消に決まった。

色々と試行錯誤を繰り返してみたんだけど、どの政策も、あんまりうまくいかなくって。

それで自暴自棄になって・・・一度、天空界を無断で抜け出して、人間界に降りたんだ。

その時、人類の進んだ分化や、ヒトの優しさみたいなものを感じてさ。

それで、思い付いたんだ。


増えすぎた天使の住む場所を、もう1つ創る、『新世界計画』をね。


これほど単純な案が、なぜ今まで浮かばなかったのかと、僕は自分の頼りない頭を呪ったよ。

水がグラスから溢れそうなら、半分を、他のグラスに移せばいいだけ。

同様に増えすぎた天使も、半分を、他の世界に移せばいいだけなんだと。

そして生み出した世界が、今君たちがいる、ここだ。

1つの星に、ポツンと1つの町があるだけ。

町の外には、魔法の衝撃で結界を破ってきた魔族のモンスターもいるし、まだ未完成の世界だ。

だから、これを。


開拓してほしいんだ。

かつて僕が見た、人間文化の桃源郷を、この世界に、もう1つ創り上げてほしいんだ。

――過密による飢餓から、天空界を守るために。


・・・これが僕からの説明とお願いだ。

お願いに関しては、神だからって君たちに強制したりはしない。

けど、知っておいてほしいのは。


・・・僕は、人類が大好きだってことだ。



「・・・とまあ、真面目に言ってみたわけなんだけどさ」

ゼウスはひとしきり喋り終えると、少し照れ臭そうに後頭部を掻いた。

・・・・・・・・・むう。

俺は少し考えた。

多分、今、ゼウスが話したことに偽りはなく、こいつは本気で願っているのだろう。

偽りなく、本気で大好きな人類を頼りにして。

「・・・カミサマに頼られたんじゃ、断りようがないわな」

へへっ、と笑って、俺はゼウスに手を差し出す。

ゼウスも同じように笑って、その手を握り締めてくれる。

やっぱ、ただのガキの手だな、こりゃ。

「私も。・・・人類代表に選ばれたんなら、やるしかないっしょ」

坂崎も、屈託ない笑顔をゼウスに向けて、手のひらを差しのべる。

それにもゼウスは、ニコッと笑い、ありがとうと言って・・・。


手に、舌を乗せた。


「・・・って、何やってくれてんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

「ろどだくちゅろすっ!!」

新世界の誕生を祝福するファンファーレは、ハイキックの音と奇怪な断末魔によって掻き消されましたとさ。

「じゃあ、二人には護身用にこれを渡しとくね」

「え・・・」

「これって・・・」

そう言ってゼウスから渡されたのは、トラウマだらけの思い出がはびこるアレだった。


・・・アイスの当たり棒。


「「これでどうやって身を守れと!?」」

奥義!!同時ツッコミ!!

「いやいやいや!?アイスの棒一本で、魔族のモンスターたちにどう立ち向かえばいいの!?バカなの!?死ぬの!?」

「この馬鹿変態マゾ神っ!!真面目に説明を聞いてやったら調子に乗って!!」

俺はツッコミを連発し、坂崎は問答無用でゼウスを蹴りまくる。

ゼウスは、蹴られ始めこそ喘いで悦んでいたものの、弁明の機会を求めだした。

「ちょっ・・・アヘッ!!落ち着いて!!話を聞いてウヒャアアアア//////」

・・・ウワア、興奮しながら落ち着けとか言い出したぞ、このカミサマ。

ゼウスのあまりの変態さに引いた坂崎が蹴りをやめ、マゾ神が完全に立ち直る。

「えっとね、その棒には、僕の魔法の力が込められていてね。あることをすると、その力を使うことができるんだけど―」


ガシャッ・・・・・・!!


「「!?」」

一斉に驚きの声があがる。

銃のシリンダーに弾が装填されるような音と共に、突如として空間内に出現したのは、件のモンスターであった。

ニッコリマークの球体にヘッドフォンをつけたような、抽象的な物体が、黒いオーラを纏いながら浮いている。

そしてモンスターは、いきなりヘッドフォンを点滅させた。

頭に直接響くような、不愉快なノイズが鳴り響く。


『サラウンドメア』


キュイイイイイ!!

あまりにも高音すぎるその音は、激しい、今までに感じたことのない頭痛を俺に感じさせる。

「っ!!くはぁっ!!うう・・・・・・うっ!!ああああああああああああっ!!!」

坂崎が早くも耐えきれなくなり、頭を抑えて地に膝をつく。

くっ・・・俺も、かなりマズイ。正直、今にも意識を失いそうである。

「ぜ・・・ゼウスっ!!」

「・・・あっ・・・!!ご、ごめん、対応が遅れた!!」

神でさえ、敵の奇襲には動揺を隠せないらしい。

っと。そんなこと考えてる場合じゃなかったな。

「さっき言いかけた、この棒の使い方を教えてくれ!!早くっ!!」

「あ、ああ分かった!!」

・・・と、返事は受けたものの、モンスターはすぐ目の前まで迫ってきていた!!

焦り声の指示が、後方から飛んでくる。


「アイスの棒を、『ペ○ソナッ!!』って言いながら真っ二つに割るんだ!!」


「・・・うおらッ!!」

ペル○ナ云々はさらっと無視して、俺はアイスピックを折った。

すると―


蒼い光に包まれた小銃が、アイスピックと入れ替わりで、俺の手の中に現れた。


「なっ―なんだこれ!?」

俺が出したのか!?この妖しげなピストルは!!

いやしかし、俺には何の力もないはずだし―

「棒についての説明はあとだ!!その小銃の引き金を引きながら、『フォルテ』と唱えて!!」

ふぉるて・・・!?

何の呪文なんだよそれ!!

いや待てよ、音楽記号か?どっちにせよ、意味分からんぞ?

・・・って、考えてる暇もねぇのかよ!!

モンスターはいつの間にやら、ゆらゆらとこちらへ近付いてきていた。

くっそ!!こうなりゃヤケだ、どうにでもなりやがれアホアホアホ!!


「フォルテっ!!!」


俺が呪文を唱え、トリガーを引くと、小銃は、五発の音符玉を放出した。

音符玉はモンスターにヒットし、花火のように爆発し、モンスターを倒した。

「ベヘヘヘ・・・!!」

気味の悪い断末魔と共にモンスターは闇の中に沈み、場に静寂が訪れた。

・・・何だったんだよ、今の力は・・・?

ああもう、今日はワケわからんことばっかりだ。

なんか銃も、いつの間にかアイスピックに戻ってるし。折れる前の状態だし。

「真神・・・あんた・・・」

「おお坂崎、目ェ覚ましたか」

呆然と立ちすくむ坂崎に笑いかける。

すると坂崎は、何故か一瞬だけ顔を赤らめ、次いで質問攻めを繰り出した。

「何よ今の!?なんであんたが魔法使えんの!?銃はどこいったのよ!?何なのよこれ、夢!?」

「お、落ち着け坂崎。脳内で羊を数えろ、落ち着くから」

「わ、分かった。・・・羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹、四匹目の羊は明日ジンギスカンに調理される、羊が五匹・・・」

「今なんか一匹だけ不幸な運命辿ったけど!?」

「あーもううっさい!!いいから説明しなさいよー!」

「だーかーらっ!!分かんねぇんだよ自分でも!!」

ギャーギャーと言い合っていると、ゼウスが後ろから歩いてくる。

心なしか、少し驚いたような顔をしている。

「その棒の力は、分かってもらえたかな?・・・まあ、初心者があんなに上手く使えるとは、思ってもなかったけどね」

ふふん。

けっこう俺には、魔法の才能があったようだな。

なんたって、カミサマに太鼓判を押される程のテクニックだからな。

「えー、私も使ってみたいよ、この棒」

「ああ、坂崎さんも、棒さえ折れば魔法が使えるよ。じゃあ、試しに自分にピルースをかけてごらんよ。さっき僕が使った、回復魔法だよ」

そう言われると坂崎は、待ってましたとばかりにアイスの棒を握り、親指で棒を折りながら叫んだ。


「ピルースっ!!」


ピルピルピルピル・・・とRPGの効果音のような音があがり、空間の中に出現したのは・・・


魔族モンスターの大群だった。


「「「ぎゃあああああああああああああ!?」」」

・・・・・・。

結果、坂崎の魔法は見事に失敗。

あとはゼウスが、なんとかその場を収めましたとさ。

・・・・・・はあ。

疲労がピークに達した俺は、ゼウスにピルースをかけてもらうのだった。

さすがにもう開拓始まると思った?思ったよね?


残念!!

まだ開拓始まらないんだなそれが!!



・・・はい。反省してます。

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