第1話
山本さやか。20歳。
彼氏いない歴20年。
友達もいなくて毎日暗く、地味に生きている。
プータローで何もしてなくてお金も無い。
見た目も・・・・・・ブスだし。
髪は真っ黒、目は悪くないけど伊達めがねかけて
まゆげはボーボー。化粧もした事ない。髪も伸ばしっぱなし。
そんな私。きっと、ずっとこのまま暗い人生なんだろうなーって思ってた。
「あぁ・・・・・・」
思わずため息が出た。毎日何してるんだろ・・・・・・・私。
外に出てぼーっとしていた時だった。
「すみません、ちょっといいですか?」
ぎゃ〜!!!またエステの勧誘?!ホストのキャッチ?!
それとも・・・・・・変な販売とか。
かんべんしてよ・・・・・・・。
私はその男を無視して歩いていた。
「あの、キャバクラとかで働いてみる気はないですか?」
・・・・・・はぁ?!!冗談でしょ?あんた!私の顔ちゃんと見てものいってるわけ?!
「あの、あなた何言ってるんですか?! からかうのはやめてください」
私は腹が立ってしかたがなかった。
「冗談でも嘘でもなく、スカウトです。良ければ話聞いてくれませんか?」
「私みたいなブス、どこで働けるって言うんですか。キャバクラって言ったら
綺麗な女の人達がいっぱいいる所でしょう?」
「はい、そうです。でも、皆が皆そうとは限りません。
とりあえず騙されたと思って話だけでも聞いてくれませんか? 時給はもちろん
最低3000円は保証しますよ。後はあなたの努力次第です」
時給3000円!!
私が前にバイトしてた工場なんて朝早くからだったのに750円だったし。
4倍・・・・・・一時間で4倍!
騙されてる、絶対騙されてる。
私なんか、キャバクラで働けるわけがない。
そう思いながらも、時給の誘惑に負けて結局その男についていくことにした。
「もうすぐ着きますから」
私は男に連れられ、夜の繁華街に来た。
まさか私が・・・・・・こんな繁華街に来ることになるなんて。
店に着いた。
‘Transformation’
トランスフォーメーション・・?
ドアを開けるとたくさんの女の子が立っていた。
皆綺麗・・・・・・可愛い。場違いなのもいい所。
「私、やっぱり帰ります」
慌てて帰ろうとしたその時、店長らしき男が私に話しかけてきた。
「面接の方ですよね? どうぞお入り下さい」
え?!面接?聞いてないよ?!
男前な人・・・・・・。スーツがよく似合ってる。
「面接って言っても話を聞くだけですから、大丈夫ですよ。
嫌なら断って帰ってもらっていいので。とりあえず話だけでも聞いてもらえませんか?」
「はい」
私は返事をして、席に座った。
なんだか一人浮いてるような気がして、気持ちが落ち着かないまま
店長らしき男と話を始めた。
「始めまして。私はこの店の店長をしています佐藤と言います。
ここは普通のキャバクラではありません。といっても変な店ではないので
安心して下さい。店の名前は‘トランスフォーメーション’
フランス語で‘変身’という意味です。なぜ変身なのかわかりますか?」
「え? わからないです」
意外な質問に答えが出てこなかった。
「ここに居る女の子は皆あなたと同様、ダイヤの原石だったのです
店が女の子達を綺麗にしていきます。スカウトが何故元から綺麗な子をスカウト
しないのか。その理由は簡単です。元々綺麗な子をスカウトしても、だいたいは
別の店に在籍しています。なので簡単に断られます。それともう一つ。
ここに来るお客様はここが‘変身キャバクラ’つまり女の子が綺麗になって
いったという事を知っています。キャバクラに何を求めてお客様が来るか・・・・・・
わかりますか? お客様はキャバクラに女の子をくどきにくるのです。つまり
あわよくば付き合いたい、彼女にしたい。そう思って店に来るわけです。
でも元々綺麗な女達は、当然彼氏がいる、高嶺の花だと思ってあきらめるでしょう?
それがダイヤの原石なら話は別です。ちょっと前まで輝いてなかった子達。
そんな子達に彼氏がいない事は、お客様も熟知してらっしゃいます。
もし、あなたが私の話を疑っているのなら証拠をお見せしましょう。
こっちに来て下さい」
店長はそう言って私を女の子達がいてる所に案内した。
「ゆりな、あれを出してくれ」
「えー店長あれ見せるんですかぁ? 恥ずかしいなぁ。もう」
彼女はしぶしぶ何かをかばんから出した。
「はい店長」
ん?!写真?しかも誰これ?暗そう・・・・・・な子。
店長はその女の人が出した写真を私に見せてくれた。
「この写真の人物が誰だかわかりますか? 今写真を出した本人です」
ぇええええええええ!!嘘でしょ?!
この変わりよう。もし本当なら、この人の言ってる話信じてみようかな。
私でも変われるかな・・・・・・綺麗になれるかな。
「店長。私、働いてみたいです。もっと詳しく話聞いてもいいですか?」
「もちろんいいですよ」