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1章 「8月31日~ ―a―」 0 「8月31日」

プロローグのときにボーイズラブ要素が出てくるとかきましたがとりあえず今回はでません。出てくる話のときにはここで注意書きをさせてもらいます。

 おそらく八畳もない部屋。そんな部屋だが俺と春樹がすごす分には問題ないスペースだった。

 「だからいいか?お前はスペルミスがまず多すぎる。それから…」

 なんか椅子にふんぞり返って春樹が説教している。

 「そんなもんきにっすっかぁあ!」

 「きにしろよ!」

 「はい。すみません。」

 一応謝る。

 「だいたい尚哉、お前下手したら留年だろうが。」

 つーか下手しなくても留年です。

 「なんでお前はこう、簡単な魔法でさえもできないんだ?」

 んなもん俺がしるか。

 「はぁ。どうしてこうなったんだ?」

 心底わからない、というように春樹のため息。

 「ためいきを尽きたいのはこっちだつーねんに。」

 「そりゃそうだろうけど。だいたいつーねんにってなんだ?」

 「しるか。」

 「尚哉がいったんだろうが…」

 他愛もない言葉。

 8月31日。

 普通であれば夏休み最後の日。

 そんな日に俺は学校に行っていた。

 正確に言えば呼び出しをくらった。

 あれだ。

 補習、という悪の儀式。テスト、という悪魔からのプレゼント。

 やってきた。

 で、今に至る。

 ちょーつかれた。

 文字どうり死。

 つーか屋根から落ちた。

 ずっと前にやった飛行の課題すら俺はまだクリアできていないのだ。

 誰かどうやったら魔法っつーもんができるようになるのか教えてくれ。

 全く俺にはできん。

 「そういえば尚哉。いつもの時間だ。」

 「え、――――あ、あぁ。」

 いつもの時間。

 それは丁度PM6;00.

 夏の今ではまだ明るいが冬になれば暗くなってしまうであろう季節の変わり目。

 春樹は自分の机にむくとさっさとPCをあけて準備していた。

 俺もあわてていつものインカムをつけて廊下へ出る。

 部屋はクーラーが聞いているのでむっとした空気に変わる。

 それと同時に

 「尚哉、作戦実行まであと30秒」

 インカムからの声。

 かかとまできちんと上履きを履く。

 「20秒。」

 廊下に誰もいないか確認。

 「10秒。」

 深呼吸。

 「1…スタート!」

 それと同時に足は動き出す。

 だれもいない廊下なので別に何かに気をつけろ、というものはない。

 しいていうなら転ばないようにするくらいか。

 それもほとんど気をつけなくても大丈夫なのでほとんど小学校の徒競走気分だ。

 いや、曲がり角があるところがちがうか。

 障害物競走か?

 まぁ、ここからはこんなことを考えている暇はない。

 もう寮の廊下は終わっていて校舎の中へと入る用意だ。

 ポケットの中から「陣」がかかれた紙を出す。

 ………つーかあいつ心理学科なのになんで陣かけんだよ…俺書けねぇのに。

 はぁ。

 俺ってリアルにやべぇなぁ。

 俺がつい2時間まえにくぐった門の前に立つ。

 このもんを通るには手をかざせばいいのだが、手をかざすと学校側に俺が学校に入ったことがばれる。

 いま俺がやってる作戦は目的が二つある。

 ひとつは俺たちが学校に配置しているカメラの物理的な状態を確かめること。

 もうひとつは学校が管理しているデータを覗き見てくること。

 まぁ、不法侵入する、ということだ。

 つまり学校側に入ったことを知らせてはならない。

 ようはこのスキャンっぽいものをつかってはいってはいけない。

 そこでこの陣!

 なんかこいつをかわりにかざすと大丈夫らしい。

 まったくよくわからないけどな!

 というわけでこいつをパネルの上に置く。

 反応して淡いブルーにそまり、外側の円が広がる。そして陣の周りに淡いブルー色の文字が飛び交う。

 その綺麗だと俺は思っている光景はすぐに終わり、門がかってに開く。

 そこをくぐり、校舎の中へ。

 校舎の中はいたって普通である。

 その廊下を駆けていく。

 ついでにという感覚でそこらへんにある小さなカメラの状態をチェック。

 「1階、カメラ大丈夫。」

 春樹に報告。

 「じゃあ、2,3,4は俺がいま確認したから管理室に早く行ってくれ。」

 「OK。」

 つーか部屋からどうやって確認した?

 まぁ、魔法でも使ったんだろう。

 いいなぁ、俺も使いてー

 管理室まではここからならそんなに距離はない。

 ほら、というまについてしまった。

 鍵はかけない主義らしく、手ぶらで入れる。

 馬鹿でかいPCの前に立つ

 適当にいじっているとパスワードを入れる画面。

 「尚哉、パスワード言うぞ」

 「あぁ。」

 「『autumn ear』」

 「ほい、ほい、ほいっと。」

 「おーい、春樹そっちにデータ送るぞ。」

 「わかった。」

 適当にやって送る。

 これで送れるんだから俺すげーなぁ…

 「きたぞ。尚哉。」

 「じゃ、そっちもどるな。」

 「あぁ。」

 春樹との会話をやめ適当にPCをシャットダウン。

 さて、帰るか。

 何もやることないしな。

 すこし伸びをしてドアを開ける。

 俺は鍵をかけない主義なのでそのままにしておく。

 というかもしかしてここの部屋誰も入らないのか?

 まぁ、鍵が開いてたほうが楽だからいいか。

 さっき来たよりはゆっくりのペースで俺はもどる。

 俺たちの部屋に。




 「春樹ー?結果は?」

 春樹は首を縦には振らなかった。PCをずっと眺めているだけだ。

 ふとあくびが出る。

 「んー、眠いし寝ようかな…」

 「あれ?寝るのか?早いな」

 「まぁ、な。少し屋上から落ちたから疲れたんだ。」

 「あー、なるほど、お前また落ちたもんな。」

 「なぜそこでそんなに苦笑する?」

 「まぁ、いや。いつも通りだなって。」

 「いつも通りは困るんだよ。俺としては」

 着替えを持った。よし。

 「それじゃ風呂はいってくる。」

 そういうと廊下に出る。

 春樹はなんにも返事をしなかった。

 まぁ、良くあることだ。

 愛想が悪いというか、人を馬鹿にしている気がするというか。

 それでもあいつイケメソだからもてるんだよな。

 なんかむかつくな。

 俺とか全然もてないし。

 どういうことだ。由々しき事態だぞ!

 ……すみません。全然由々しくありません。

 でもなんでだろうな。女ってやっぱ顔で男を選ぶんだろうか。

 世の中の不思議に認定。たぶん風呂から上がったらわすれるけど。

 「あ、尚哉。どうしたの。」

 前方にひかりを見つける。

 「おう、ひかり。」

 「うん。ひかり。」

 満面の笑みでいわれてしまった。

 「風呂か?」

 「うん。ひかり、お風呂はいる。」

 「どうだ?一緒に入るか?」

 「てめーなんか春樹と入ってセ―――とかしてBLごっこでもやってればいいのだー」

 ピー音は入れましょう。ついでにそういう属性はない。

 「ついでにどっちが攻めなんだよ?」

 「春樹。んー、でもへたれ攻めでも―いいかな」

 あぁ、そうですか。

 「んにゃ、別に尚哉と入ってもいいけど今は時間がない。明日までに仕事仕上げなきゃならぬ。」

 「そうか。がんばれよ。俺も手伝うぞ。」

 「尚哉」

 「なんだ?」

 「MIDIってわかる」

 「はい。分かりません」

 「そーいうことじゃーまた」

 ひかりは手をひらひらとふりつつ、とてとてと鳴らすように女湯に消えていった。

 あいつも大変そうだな。まぁ、充実した大変なんだろう。

 それはいいことだ。

 俺も風呂はいるか。

 暖簾をくぐる。

 もちろん男湯です。




 風呂上り。

 暖簾をくぐるとそこには泣きべそをかくひかりがいた。

 「な~お~や~っていっ」

 なんか投げられた。

 「おおっと。」

 なんだ?これ。虫取り網?

 「へ、へやに…Gが~」

 あー、はいはい。駆除ね。




 「おー。さすがおとこ。ありがとう」

 「いや別に気にすんなよ。」

 「いやいや。あれは未知の生物 しかもあいつPS2のディスク入れるとこからでてきた」

 物理的にありえなくね?

 屋上に上がる。

 「ふぁああ…眠い。」

 ひかりはかわいらしくあくびをしていた。めちゃくちゃ眠そうである。

 そのGを空へ放つ。

 Gは元気よくとびたっていく。

 「じゃーねー」

 ひかりはGがいなくなったと知ったとたんさっさと部屋に戻ってしまった。

 …そういえば一週間くらい前にもGの駆除を頼まれたな…

 あいつの部屋大丈夫なのか?

 一匹いると30匹いるとかいうからな…

 ………………

 あぁ、なんか夏休み最後――か。

 実感わかない、というか、夢のようだった。

 ひかりはいつのまにかプロになってるし。

 春樹は頭良すぎておかしいことになってるし。

 俺だけ取り残されてるきが…

 魔法もできなければ

 春樹みたいにかっこよくもないし。

 性格も普通…だよな?

 「はぁ~。」

 手、洗ってくるか。

 ついでにコーヒーでも飲むか。

 一番のお気に入りのやつだ。

 オンリーワンってやつだな。




 屋上、再び。

 買ってきたばかりのコーヒーのプルタブを開ける。

 「ふっ」

 今のは掛け声だ。

 こう、いまからあけるぜー!みたいな。

 わけわからん。

 屋上の手すりにもたれかかる。

 こうすると俺でも絵になるんじゃないか?

 春樹のほうがいいんだろうけどさ…

 ここで煙草とかすってたらさらにいいんだろうなぁ…

 すってみるか?いっちょ?

 いや、やめとこ。斑鳩さん悲しむだろうし。

 あの最近でた電子煙草とかならいいんじゃないか?

 20になったらやってみるかえーと、あと5年か。

 楽しみにしておこう。

 たぶんああいうのは大人になってからやったほうがかっこが付くだろう。

 コーヒーの缶から口を離し、

 「なぁ、俺は幸せってやつみんなみたいに掴めてるのかな?」

 つぶやいてみる。

 ちょっとかっこつけすぎたかもしれない、この言葉。

 もちろんこの答えを返答するものはいない。

 この屋上に人がいない、というわけではなく本当にいないのだ。

 みんな自分の夢に向かって歩いている。

 時間を怠惰に使うものは滅多にいない。

 それが当たり前なのだ。

 俺がおかしくなったんだろう。

 あまりに怠惰に時間を使いすぎて。

 ――――飽きた。

 この一言が俺の心情を一番良くあらわす言葉であると思う。

 なぁ、カミサマ―

 こっちの世界なんかいらないから、

 もうひとつ世界があるなら俺をさ、

 そっちの世界で幸せにしてくれないか?

 こっちの世界なんてすべてをすててもいいから。

 春樹も俺がいなくてもいいだろうしひかりもいいだろうし

 なんにもここにいる意味なんかないんだ。



―――――――――この世界のすべてを捨てたら俺は幸せになれますか?



 そう思っていた。

 のに。

 降ってきた。

 そらから。

 天使が。

 前言撤回しよう。

 俺はこの世界がいい。

 たった一つの楽しみを見つけたから。

 よし。

 まだ宙に浮かんでいる天使にいってやろう。

 「藍沙!結婚しよう!」

 言ってやった。

 聞こえたかどうか分からない。

 いいよ。落ちてきたらお姫様抱っこで抱えて100回でもいってやろう。1000回だって言ってやる。

 だって俺のたった一人のお姫様だ。

 どんなわがままだって聞いてやる。

 たった一人の願いをかなえるのは容易だ。

 俺にも一個だけ魔法が使えたんだ。

 自分の初恋の人にもう一度出会う、という。


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