ただの日常
三題噺もどき―きゅうひゃくじゅうろく。
窓も開けていないのに、セミの声が聞こえる。
こんなに声量大きかったっけ……。
隣の空き地にでもいるんだろうけど、それにしてもうるさい。
「……」
心地のよい冷たさの中に居る。
外はきっと暑くて暑くて仕方ない。
少し前までこの部屋も暑かった。
「……」
扇風機だけでなんとか凌いでいたのだけど、熱中症になるからつけろと怒られた。
あまり使いすぎもほら、電気代というものが発生するからなと思ってつけていなかったんだけど。それに正直冷房を付けるほどの暑さではなかったと言うか……。
「……」
まぁでも、数時間前まで外で運動をしていた妹たちには暑かったんだろう。
そりゃ、動いて代謝も上がっている状態で冷房も何もついていないぬるい部屋は暑いに決まっているか。
それに、散々テレビでも言われている。冷房を付けた方がお得だって。
「……」
分かってはいるが、あまり好きではない。
それに自分一人だけ涼を取れれば良かったから扇風機だけ回していたのだ。
その扇風機も今は止まっている。
冷房が効き始めてさすがに寒くなり始めたもので。
「……」
毎日変わらず、ベッドに寝転がっている。
なんというか、宿題とか学校である程度終わらせてしまっているから家に帰るとやることがない。……こともないのだけど、土日って普段からやる気がない。夏休みだろうとなんだろうと関係なく土日はあまり動きたくない。
「……」
飽きもせずにスマホをいじっている。
なんというか、気が早いような気がするが……この秋行きたいおしゃれカフェみたいなのが流れている。まだまだ夏が始まったばかりだと言うのに。
「……」
うつくしい紅葉が映える山奥のカフェのようだ。コーヒーの美味しいお店らしい。こういう所って、カフェオレとかはないから無理なんだよな。
……近くに川もあるようなので、今の時期に行ってもよさそうだ。
川の近くって結構涼しくて快適なんだよなぁ。昔はよく言っていたのに、気づけば全く行かなくなっていた。
「……」
海よりは川に行く方が私は好きだ。
海って暑いし、クラゲがいるし、人が多いし、暑いしで利点がない。
川は涼しいし、人も少ないし、危ない生き物はあまり聞かない。まぁ、天気の変わりやすさのあるおかげで、危険はあるにはあるが、それはどこに行っても一緒だろう。
「……」
でも、あの子は海の方が好きと言っていた。まぁ、確かによく似合う。
燦々と降り注ぐ太陽の下で、楽しそうにはしゃぐ姿が容易に想像できてしまう。
「……、」
突然、画面に百合の花の写真が写る。
私がホームの壁紙に設定している写真だ。
……間違えてホームボタンを押したらしい。押したと言うか、フリック?なんといえばいいのだろう。画面内に押せるようなボタンなんてないからなこのスマホ。再度の音量と電源ボタンくらい。
「……」
そしてふと、時間を見てみる。
動画を見ているとあっという間に時間が溶けてしまう。
気付けば夕方と言うか、なんというか、そろそろ母も帰ってきそうな時間になっていた。
外の景色があまりにも変わらない上に、あまり暗くなることがないから気づかなかった。
「……」
妹2人は寝ているのかやけに静かに感じられる。
誰も風呂に入っていない状態だとさすがに怒られる。
今日は早番ではないだろうが、さすがに入っておくか。
ガチャ―
「……」
一階の玄関から鍵の開かれる音が聞こえた。
静かだとよく聞こえる。
車の音は聞こえなかったのに、帰ってきたようだ。
タイミングがいいような悪いような。
「……」
もう少し待ってからリビングに行こうかな。
なんというか、変に絡まれるから嫌なんだよな、帰ってすぐの母は。
いい加減仕事の愚痴を聞くのも疲れてくる。
「……」
もう遅いしいいか。
呼ばれたら風呂に入るか。
それまでは、スマホいじりに勤しむとしよう。
お題:百合・もみじ・コーヒー




