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傲慢王子、地に落ちる始まりの日


「エノク第一王子殿下!!!

お願いです…。民の暮らしを……どうか、どうかご考慮ください!」


静まり返った王宮に必死の声が響く。

涙で頬を濡らした彼女の声も、彼には届かない。


玉座の間は重苦しい空気に包まれていた。

第一王子エノクは、聖女セレスティアの必死の訴えに冷笑を浮かべながら答える。


「ククク……そもそもお前の祈りが足りぬから民は困っているのではないか?

お前のせいで民が苦しんでいる。

民は聖女を信じているというのに……なんという酷いことを……クククッ」


エノクは馬鹿にするように聖女に向かって吐き捨てる。


震える聖女の横で、侍女たちが小さく息を呑む。

しかしエノクは気にも留めない。

自分が正しいのだから、周囲の思惑などどうでもよいのだ。


「第一王子殿下、税率の引き上げは……」

「くだらん。民ごときが苦しむ程度で破綻するのなら、その村が無能なのだろう。」


家臣が全てを言う前に、エノクは冷たく切り捨てた。


父王も王妃も、この場に姿を見せない。

いつもそうだ。

彼がどのような決定をしようと、王と王妃は「よきに計らえ」とだけ言って一切興味を示さない。

愛情も信頼も、彼には届いたことがなかった。


だが、この日――。


「……聖女が泣いている、だと?」


神殿から届いた急報に、家臣たちの表情が一気に変わった。

聖女の涙は、国を護る結界の揺らぎを意味する。


神殿上空の結界が小さくひび割れ、光がきしむ。

侍女たちが慌てて走り出す中、エノクだけが眉をひそめ、不快そうに口を開いた。


「……騒がしいな。」


その横顔を、玉座の間にいる誰もが肯定しなかった。

その傲慢が、やがて自らを奈落へと導くことになる――。


 ――これは、第一王子が地に落ちるほんの序章である。


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