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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第4章 帝都編2

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第87話 マーヴィカン帝国学園

 マーヴィカン帝国学園、通称帝国学園。


 初等部、中等部、高等部を備えた一貫教育を行なっている、帝国最大の学園である。

言語、歴史、数学(算数)、武術、魔法などを中心に様々な教育が施されている。



 帝国全土から、王族、貴族、平民までが通っている。

中には亜人も通う姿が見られるがほとんど人族である。


 表立っては学園内平等を謳っているが、実際のところ貴族が平民や亜人を差別していた。


 クララは初等部、カフィは中等部、エルネストは高等部の生徒である。





 クララは初等部4Aに所属している。

成績によって、クラスが決まるが、クララは入学以来トップの成績を維持しているので、Aから変わったことはない。


「クララ皇女殿下、ご機嫌よう」


クララが席に座っていると、取り巻きである、アメリア・ローゼンベルク侯爵令嬢、リリアーネ・ヴァルトハイム伯爵令嬢、カタリーナ・バルトロメウス伯爵令嬢がやってきた。


「皆様、ご機嫌よう」


 クララは内心でため息を吐く。


 クララはこの3人は嫌いではないのだが一緒にいたいとも思わない。

以前は仲良くしようと試みたのだが、壁を作られて必要以上に踏み込むことを拒まれた。


 そこで、別の生徒と仲良くしようとすると、


「クララ皇女殿下には相応しくない」


 と、邪魔をされるのだ。


 正直ほっといて欲しいと思うのだが、いつも寄ってくる。


 アメリアを中心にお茶会の話やドレスの話などをしている。

クララには興味がなかったので、曖昧に返答をしていた。


(はぁ、ミウちゃんとレーチェルに会いたいなぁ)


 ドカン!


 急に何かがぶつかる音がした。


 そちらを見ると、一人の男子生徒が壁にぶつかったようで、倒れている。

一人の貴族の生徒に蹴り飛ばされたようだ。


(彼は確か、平民で成績は常にトップクラスにいたわね。名前はマルシェル)


「はっ、お前は平民のくせに俺の通り道にいるんじゃねえよ」


(あれはエドワード・セントクレア、侯爵家の子息ね)


「す、すみません!」

「ギャハハ……許して欲しいか? あぁ?」

「は、はい」

「ならよぉ、今度の試験はサボれよ」

「そ、そんな」

「平民風情にいい成績なんていらねぇよなぁ」

「い、いやです。家族が僕に期待して、お金を出してくれているんです。いい成績をとらないと」

「あぁ!? まだ痛い目が足りてねぇみてえだなぁ。おい、お前らこいつを立たせろ」


 エドワードの取り巻きがマルシェルを立たせる。

そして、エドワードが拳を握り殴りかかろうとする。


「お待ちなさい!」


 凛とした声が教室に響き渡る。

全員が声のした方を見る。

そこには鋭い目でエドワードを見るクララがいた。


 クララはエドワードの方に向かいながら、よく通る声で喋る。


「セントクレアさん、私の前で暴力行為なんて、随分と甘く見られたものね」

「いえ、これは……」

「あなた、私が暴力行為を傍観するとでも思ったのかしら?」

「い、いえ、その」


 エドワードはクララの迫力にすっかり萎縮してしまっている。


「私、随分と舐められてるのかしら」

「も、申し訳ありませんでした!」

「今日はあなたの顔を見たくないわ。だって見ていると、陛下に報告したくなるもの」

「きょ、今日は用事が出来たので、帰ります!」

「まあ、そうなの? でもその前にすることがあるんじゃなくて?」

「はい?」

「そちらのマルシェルに一言あってもいいんじゃないのかしら?」

「そ、そんな。平民になんて」

「そう、なら別にいいわ」


 クララが、興味が失せた顔をする。

これは放置したら、大変なことになるとエドワードは感じた。


「い、いえ、一言、言わせていただきます。……すまなかった、平民。許せ」

「あ、はい」


 マルシェルが驚きながら返事をする。


「こ、皇女殿下、それではこれで失礼させていただきます」


 エドワードは、クララにそう告げると脱兎のごとく走り去った。

取り巻きたちも居た堪れなくなり、逃げ帰った。


「皇女殿下! あ、ありがとうございました!!」

「あなた、大丈夫かしら? もし、痛むようなら医務室に行くのをお勧めするわ」


 クララはマルシェルの体を気遣うが、マルシェルはクララに見つめられて真っ赤になる。


「だ、大丈夫です!」

「そう? それならよかったわ」


 そう言って、クララは席に戻ろうとすると、マルシェルが叫ぶ。


「皇女殿下! こ、今度、お礼をさせてください」


 そこへ、すかさず横槍が入る。


「あなた、皇女殿下にふざけているのかしら。少し助けられたからって、調子に乗らないでもらえる? 不敬よ」


 そう言って、アメリアとリリアーネとカタリーナが、マルシェルを囲む。


 3人の令嬢に囲まれたマルシェルは必死で謝る。


 その光景を見ながら、クララは別のことを思った。


(ミウちゃんとレーチェルに会いたいなぁ)





 カフィは、教室の窓の外を眺めていた。


(どうやってミウ様と結婚するか。……作戦を立てなきゃ)


 また、暴走の予感しかしないことを考えていた。


 しかし、その物憂げな表情は、レーチェルの兄なだけあって、なかなか可憐である。

令嬢たちが遠巻きで熱い視線を送っていた。


 と、そこへ、最近仲良くなったある生徒がやってきた。

カイラン・ヴォルクス ヴォルクス侯爵家三男だ。

実はヴォルクス家の次男デニーは、美羽が帝都にきた時にクララの護衛をしていた男で、美羽に斬りかかって降格させられている。


 その後、皇帝が美羽を御使いとして認めたため、御使いに剣を向けたヴォルクス家は政治的に非常に危うい立場になっている。

だが、カイランはそんな悲壮な雰囲気は全く出さない、なかなかの美少年だ。

 

「どうしたんだい、カフィ?」

「カイラン様、いえ何でもないんです」

「そうは見えなかったよ。御使い様のことかい?」

「え? 何でわかったのですか?」

「ははは、君はわかりやすいからね」

「そ、そうですか?」


 カイランが声をひそめる。


「それで、君は御使い様をどうしたいんだい?」

「できれば、結婚したいと」

「いいじゃないか。結婚したまえよ」

「でも、なかなか振り向いてくれなくて」

「君に気がないのかい?」

「そんなことはないです!」


 カフィはつい大声になった。

教室の視線がカフィに集まる。

カイランは人差し指を口に当てて言う。


「しー、声をひそめたまえよ。大きな声で言うことでもないだろう?」

「はい、すみません」

「それで、彼女は君をどう思っていると思うんだい?」

「彼女はきっと僕のことが好きなんです」

「それはどうしてなんだい?」

「よく僕のうちに来るし、目もよく合います。この間は手に触れてきました。

僕のことが気になっている証拠でしょう?」

「それは、好きかもしれないね」


 同意を得たカフィは目をキラキラさせる。


「やっぱりそうですよね。僕は彼女と結婚できると思いますか?」

「それには作戦がいるかもしれないね」

「ああ、僕もそう思ってました」

「そうなのかい? 僕たち気が合うね」

「僕もそう思ってました。カイラン様」

「僕たちは気が合うんだから、呼び方も様はいらないし敬語もいらないよ。カフィ」

「わかった。カイラン」


 カフィは自分と美羽のことをわかってくれるカイランのことがとても気に入った。


「それじゃあ、どうやったら御使い様と結婚できるか、考えてみようか」

「うん! ありがとう。でも、できるかなぁ?」

「カフィ、君は貴族なんだ。御使い様はあくまでも平民だよ。本当だったら様なんてつけなくていいんだ。

やりようはいくらでもあるさ」

「そうなのかな?」

「そうさ。君は貴族なんだ。御使い様と違って選ばれた者たちなんだよ。自信を持て」

「そうだ、僕は貴族なんだ」

「御使い様のことはなんとでもなる」

「ミウ様のことはなんとでもなる」

「いや、違うな」

「何が違うんだい?」

「ミウ様っていう呼び方だよ。君は近いしよくしてやってるんだからミウでいいじゃないか。

そのほうが二人の距離も近づくよ」

「そ、そうか。ミ、ミウ。ミウのことはなんとでもなる」

「そうさ、その意気だ」


 カイランは、カフィに気づかれないようにそっと笑った。




 エルネスト第2皇子は高等部の教室で今日もクラスメイトに囲まれていた。


「エルネスト様ぁ、今日は私とデートしてくださいぃ」

「えぇ、私の番よぉ」

「私よぉ」


 クラスで婚約者の決まっていない女性のほぼ全員がエルネストの元に集まっている。


 婚約者の決まっていない男子生徒にとっては蛇蝎のごとく憎い相手だが、皇太子になると言う噂のある皇子である。

そこは憎く思っていてもおくびにも出せない。


 大体、エルネストの美形には婚約者も決まっていない程度の男子たちでは到底太刀打ちできないのであった。


「エルネスト様ぁ、いつ婚約者にしてくれるんですかぁ?」

「ふふふ、そうだなぁ、君たちには言っておかないといけないね」

「なんですかぁ?」

「非公式だから、言わないで欲しいんだけど……」


 言わないで欲しいなら、ここで言うべきことではない。

そんなことにも気が付かないほど今のエルネストは浮かれている。


「私と結婚するのは、コザクラミウ様なんだよ」

「え? 御使い様の? まだ子供ですよねぇ」

「ああ、そうだよ。でも、僕は彼女が大きくなるのを待つことにしたのさ。

もちろん、その間君たちの相手をしてあげるよ」


 エルネストが、近くの女子生徒の頬に手をやる。


「だって、君の瞳にはもう私しか写っていないのだろう?」

「はい、エルネスト様ぁ。私はエルネスト様しか見ていません」

「私もぉ」

「私もです。殿下」


 エルネストが、微笑みながら女性たちを見回す。


「ああ、もちろん全員相手をするよ。それはミウ様も許してくれるさ」



 学校の男子たち、女子生徒たちの親、色々と敵をつくりそうなエルネストだった。

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