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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第4章 帝都編2

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第85話 ライブ

「君の歌に合わせて演奏させてくれないか?」


 美羽は不思議そうな顔をして聞き返す。


「え? なんで?」

「ああ、説明する。その前に自己紹介させてくれ。俺はルナーレ職人のマティアス。ルナーレを作り続けて三十五年以上経つ。

そしてこっちがカダレス職人のロンドだ」


 ルナーレは地球で言うところのギターでカダレスがドラムである。

見たところ、マティアスもロンドも50代くらいの男性だ。

二人とも職人らしくがっしりした体つきだ。


「それで、どうして一緒に演奏したいの?」


 そう言うと、マティアスはニヤッと笑った。


「君の歌に惚れ込んだのさ。君の歌を2週間前に聞いた時に、君の歌に合ったルナーレを作りたいと思ってな。

試行錯誤してできたのが、このルナーレだ」


 すると、今まで黙っていたロンドが喋り出した。


「こいつ、君の歌を聞いてから、毎日広場に通ってな。お嬢ちゃんが歌うのを見にきていたんだ。

隅っこで隠れてな。

お嬢ちゃんが歌うのを見ると上機嫌で酒を飲んでな、お嬢ちゃんがいない時は落ち込んでなぁ。ヤケ酒してたぞ」

「バッ、余計なこと言うな。お前も同じようなものだったじゃねえか」

「はっ、違いねえや」


 ロンドは職人らしく豪快に笑う。


「それでどうだい? 演奏させてくれないか?」


 美羽はにっこり笑う。


「うん! そういうことならよろしくね」

「よっしゃ! そうこなきゃ」

「よかったなぁ、マティアス。昨日断られたらどうしようって、寝れなかったからな!」

「ロンド? お前だって心配してたじゃねえか」


 職人二人はガッハッハと笑った。


 ここにボーカル2人 ルナーレ1人 カダレス1人の即興バンドが出来上がった。


 カダレスはさまざまな形があるため、弟子に手伝わせて持ってきたようだ。


 美羽は職人2人に先ほどレスフィーナからもらったマイクを渡した。


「ほう、これが音を増幅するのか。」

「うん、どこまで音を届けるかは調整できるよ。今日はこの広場くらいにしようか。」

「おう、すごいな。そんなことが出来るなんて。魔道具なのか?」

「まあ、そんなもん」


 ここで女神や御使いやらで、膝をつかれても面倒なので、適当に答えた美羽だった。


 マイクの取り付けも楽器の調整もうまくいき、すぐに準備ができた。


 その頃には、ステージの前には聴衆が溢れていた。


「天使ちゃーん!」

「きゃー、天使ちゃんかわいい」

「今日も見にきたよー」

「隣の子もかわいいー……あ、ぐ」


 聴衆たちは口々に叫んでいて、美羽が誉められているのをレスフィーナはニコニコして見ていたが、自分が可愛いと言われた途端に神威を発動して、威圧し始めた。


「おい」


 バシン。


「キャッ。痛いよぉ。美羽ちゃん。頭叩かないでよぉ」

「フィーナちゃん! 聴衆を威圧してどうすんの」

「だって、私に向かって不敬なこと言うんだもん」

「それじゃ、歌う前にみんな逃げちゃうよ」

「それはそうだけど」

「今日は気にしない。いいね」

「うん! 分かった」


 そこへ、聞き慣れた声が聞こえてきた。


「ミウちゃん!」

「おねえさま」


 クララにレーチェルだった。

二人とも皇女や貴族に見えない格好になっている。

もっとも護衛がいるので、お忍びだとバレバレだが。


「クララ、レーチェル! 来てくれたの?」

「うん、やっぱり今日も見たいなって思って。あら、そちらの子は? ミウちゃんと同じ桜色の髪とひと……女神様?」


 慌てて、クララとレーチェルが膝をつこうとする。

それを美羽が女神の手を透明にして、跪けないように立ったままで固定した。


「え、あれ、動けない……」

「からだがおさえつけられて……」

「クララ、レーチェル。ダメだよ。面倒なことになるでしょ」

「あ、そ、そうね。ミウちゃんがやったのね」

「ごめんなさい。おねえさま」

「うん、いいよ。じゃあ、改めて紹介するね。この子は女神レスフィーナちゃん」


 そうすると、レスフィーナはアルカイックスマイルで二人に声をかける。


「クララとレーチェルね。レスフィーナよ。二人に会いたかったの」

「クララ・マーヴィカンです。ご拝謁いただき光栄です」

「レーチェル。ルッツです。ごはいえついただきこうえいですわ」


 二人とも本来は膝をつくべきだが、淑女の礼をするにとどめた。

美羽が、心底不思議な顔で言う。


「あれ、フィーナちゃん、人間相手にまともに挨拶できたんだ」

「あー、ひどーい。美羽ちゃん、私をなんだと思ってるの?」

「えへへ、私の親友だよ」

「も、もう。そう言われると、何も言えないじゃない」


 レスフィーナが赤い顔をする。


「二人のことは美羽ちゃんを見ている時に一緒にいたから知ってたのよ」

「そうなんだね。あ、そろそろ歌おうか。二人は楽しんで行ってね」

「ミウちゃん、頑張ってね。レスフィーナ様も」

「おねえさま、それでは後ほど」

「あ、二人ともちょっといいかしら」


 レスフィーナはそう言って、クララとレーチェルのところに行き、そっと囁く。


「二人とも、後でちょっと話があるの。こちらから行くから、探す必要はないからね」


 レスフィーナは言うだけ言って、美羽の方に戻って行った。


「女神様がなんの用かな?」

「なんでしょう?」



 どうなるか想像もつかなかった演奏はかなりうまくいった。

マティアスのルナーレとロンドのカダレスのおかげでいつも以上に歌をのびのびと歌うことができた。

美羽とレスフィーナは最初は交互にメインボーカルとコーラスで分かれたり、ユニゾンで歌ったりした。


 美羽は親友のレスフィーナと歌えることがたまらなく嬉しく、心から楽しんだ。


 神気マイクの効果で広場全体に音が聞こえることもあり、過去でも一番人が集まって盛り上がった。


「美羽ちゃん」


 曲の合間にレスフィーナが声をかけてきた。


「どうしたの?」

「私はそろそろ時間だわ。もう少ししたら、美羽ちゃんの結界が消えて、うふふ、広場の人たちみんな気を失うかも」

「怖いよ。笑わないでよ」

「それで、次で最後にしよう」

「そう、残念だけど仕方ないね」

「それで、最後の曲だけど、あの曲がいいな」


 レスフィーナは美羽に説明をする。

美羽も知っている曲だったので、その曲に決めた。


 美羽が、聴衆に向かって話す。


「みんな! 今日も見にきてくれてありがとう。小桜美羽だよ」

「「「天使ちゃーん」」」

「ありがとう。今さらだけど、紹介するね。ルナーレ担当のマティアス」


 ジャガジャガジャガジャーン!

 

 マティアスがルナーレを掻き鳴らす。


『わー』


「カダレス担当のロンド」

 

 ドンドンドンドンガシャーン!


 ロンドがカダレスを乱れ打つ。


『わー』


「そして、私の親友でボーカルのフィーナちゃん」

『わあああああ』

『フィーナちゃああああん』


 フィーナは美羽に親友と紹介されたので気をよくして手を挙げた。


 すると、さらに大きな声援に変わる。


「あはは、みんなも気になってたみたいだね。フィーナちゃんとは初めて一緒に歌ったけど、初めてとは思えないくらいにうまくいったんだよ。でも、次が最後の曲」

「ええーーーーーーーーー!!」

「うふふ、ありがとう。最後の曲を楽しんでね。桜日○とタイ○マシン」


 この曲は、あるシンガーがバーチャルシンガーとのデュエットで歌った曲だ。


 歌い出したら、美羽とレスフィーナの周りには桜の花びらが舞い始めた。

サビの部分では桜の花びらが広場全体を舞い、美羽とフィーナが力強く声を出すたびに桜も吹き荒れる。

聴衆の熱狂に合わせて桜が飛び交う。


 美羽とレスフィーナの歌声と桜吹雪、聴衆の興奮が相まって、幻想的な光景になった。


 その光景を見て聴いて一体になって、聴衆は感動の涙を流した。


 歌いおわると、美羽が手のひらの上の桜の花びらをふっとレスフィーナに向けて吹く。

すると、レスフィーナに桜のシャワーが降り注ぎ、体を桜が包みこんだ。

そして、花びらがだんだん薄くなっていき、消えた頃にはレスフィーナの姿も消えていた。


『フィーナちゃあああああん』


 多くの聴衆が残念そうな声をあげた。



 過去で一番盛り上がったライブだった。


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