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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第2章 辺境編

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第8話 ゴブリンキング

話している間にもゴブリンたちは結界を叩き続けていた。

最も結界は衝撃を吸収してしまうから、音すらしないが。


「よーし、それじゃあ、まずは、そこのゴブリンたちを退治するね」


 美羽はきんちゃんを連れて、結界のギリギリまで行く。


「よし、きんちゃん。さっきゴブリンにぶつけた石と、ゴブリンの持ってた武器を集めて」

「はい、美羽様」


 きんちゃんはゴブリンの緑色の血のついた石と死んだゴブリンが持ってた武器を浮かせて、自分の周りに漂わせる。

ゴブリンが持っていた武器は、棍棒に短剣、ショートソードに斧などがあるから、全く統一感がない。


「きんちゃん、ゴブリンはここには何匹いるの?」

「ここには後68匹です」

「じゃあ、これだけじゃ足りないね」

「倒したゴブリンが持っている武器から順にまた集めればいいでしょう」

「そうだね。それじゃあ、いくよぉ。ラッセーラー、ラッセーラー」

「ラッセ、ラッセ、ラッセーラー」


 美羽の掛け声に合わせて、きんちゃんはクルクル回りながら、雑多な武器をゴブリンに向けて猛スピードで飛場していった。


「「「「「ギゲエエ」」」」」


 ゴブリンが耳障りな断末魔を上げながら、あるものは剣で刺し貫かれ、あるものは棍棒で顔面が潰れて死んでいく。

ゴブリンの血飛沫が舞うこの惨状を今までで一番近くで見てしまった美羽。

口を押さえて、俯いてしまう。


「うううう、気持ち悪い」

「大丈夫かい? ミウちゃん」


 スウリが近寄ってきて、心配しながら言う。


「だいじょうぶ」


 その間にも、きんちゃんが一度投げた武器と、新たにゴブリンが落とした武器を回収して、次のゴブリンにぶつけていた。


「美羽様、これでこの周辺のゴブリンは倒し終わりました」

「ありがとう、きんちゃん」

「美羽様、少し休んだほうがいいのではないですか?」

「でも、他のところには中型と大型がいるから、早く行かないと被害が大きくなるよ」

「そうですね。確かに急いだほうがいいです。少し頑張ってください。

それでは大きい集団と小さい集団がいますが、どちらから行きますか?」

「ゴブリンキングとクイーンはどこにいるの?」

「大きい集団の後方で見物しているようですね。そこはゴブリン300、中型40、ゴブリンキング1、クイーン5です」

「ほとんどそこにいるんだね。じゃあ、そこに行こう」


 美羽はスウリに振り返る。


「スウリちゃん、これから一番大きな集団を潰しに行くから、ここの結界を解除するね。

まだ、結界を2つ出すことはできないの」

「スウリちゃんって……。分かったわ。みんなに行っておく。私はミウちゃんと一緒に行っていい? 見届けなくてはいけないと思うの」

「うん、いいよ。じゃあ、準備できたらすぐに行こう」


 スウリは、教会前の戦士たちに指示を出して、戻ってきた。


「言ってきたわ」

「じゃあ、行こう。きんちゃん案内して」

「かしこまりました。こちらです」


 美羽とスウリはきんちゃんについて歩いていく。

スウリは美羽が気になって仕方がないのだが、今は緊急時なので黙っている。


「この通りをいった先に魔力反応があります」

「それなら代官邸だろう。あそこに一番多くの人が逃げ込み、兵士が護衛について戦っているはずだ」

「護衛ですか。先ほどまで30人ほどいたと思われますが、今は5人ほどですね。ほぼ壊滅しています」

「なんだって! それなら急ごう!」

「スウリちゃん、急ぎたいのは山々なんだけど、私急いでも遅いの」

「そうか、じゃあ、私が抱っこすればいいか?」

「お願い」

「まかせろ」


 スウリが美羽を抱っこして走る。

小さな街なので、あっという間に代官亭に着いた。


 そこには300を超えるゴブリンたちが代官亭から、避難した住人を引き摺り出して、一箇所に集めていた。

老若男女300人くらいが集められている。


 老人と男性が前に引きづり出されて、メタメタに殴られたり、刺されたりしていた。

現場は阿鼻叫喚に包まれていた。

ゴブリンキングとクイーンと見られる5体がそれを見ながら、大笑いをしている。


「楽しんでる」

「ゴブリンキングの指示のようですね」

「ゴブリンキングめ。」


 すると、屋敷の奥から、身なりのいい家族が連れ出されてきた。

スウリが驚愕して言う。


「あれは、領主様とそのご家族」


 領主らしき人と、その妻に子供と思われる12歳くらいの男の子と4歳くらいの女の子がいる。

妻と子供たちは震えていた。

そのままゴブリンキングの前に連れて行かれる。

ゴブリンキングがニタリと笑う。


 スウリが緊張した顔で言う。


「まずい、ゴブリンキングは領主様一家とわかっていて、見せしめにする気だ」

「きんちゃん、ゴブリンキングを中心にその周りにも一斉射撃。人間には当てないようにね。スウリちゃんは巻き込まれないようにここにいて」

「かしこまりました」


 きんちゃんがゴブリンキングとその周囲に、石や剣や棍棒を高速で射出した。

1射目で、ゴブリンたちは大混乱に陥った。


 そのまま、美羽ときんちゃんはゴブリンたちの近くまで歩いていく。

その間にもゴブリンに放った武器や石は、新しく死んだゴブリンたちの武器をも増やしながら、きんちゃんの周りに集まっていく。


「美羽様、中型のゴブリンはホブゴブリンと判明しました。ゴブリンよりもかなり力が強く動きも速いです。40体いたのが先ほどの射撃で35体に減りましたが、未だ脅威ですので、美羽様は少し離れて神気結界を張ってください」

「わかった。じゃあ、あの人たちの周りに結界を張るね。あそこにいるゴブリンをまず片付けてくれる?」


 集められた人の周りに10匹ほどのゴブリンがいた。

そこに、きんちゃんは正確に10本剣を飛ばし、殺した。


 美羽はそこに歩いて行き、目を瞑り集中する。

美羽の周りが桜色に輝き、それが集められた人たちの周りに広がっていく。

やがてそれが半球状になり、光が消えていく。

消えた後は桜色の透明の壁ができていた。


 きんちゃんは、美羽が結界を張っている間にも、ゴブリンたちを攻撃し続けていた。

すでにきんちゃんの扱う武器や石は100を超えていて、一斉掃射するだけで、数十のゴブリンを殺していく。

武器や石は衝撃で壊れるが、次から次へと補充できるので問題ない。


 このままいけば、すぐに制圧できるだろうと思われた時、一際体の大きなゴブリン5体がきんちゃんに襲いかかった。

ゴブリンクイーンだった。

きんちゃんは予想以上の速さに驚きながらも交わして、射撃をするが、ゴブリンがそこに割って入り、盾になってクイーンに攻撃が通らない。


 きんちゃんは仕方ないので、クイーンの攻撃を交わしながら、ゴブリンの数を減らそうとすると、そこにホブゴブリンも加わった。さらに、避ける作業が増えてしまったきんちゃんはなかなか、ゴブリンを減らすことができなくなった。


 ゴブリンキングは、成り行きを見守っていた。

3メートルはある体をしていながら、思考力があるのがゴブリンキングだ。

ゴブリンキングは美羽の姿に目を止める。


「オマエダナ。シネェ!」


 ゴブリンキングは美羽に向かって、大剣を振り下ろしてきた。

結界は大剣を容易に防ぐ。

しかし、美羽は驚いた。

思わず身を屈める。


「きゃあ!……ゴブリンキング? 怖いんだけど」


 ゴブリンキングは結界が破れないとすぐに悟って、周りを見回す。

すると、そこには結界に入っていない領主一家がいた。


 美羽もそれに気付き、叫ぶ。


「早く、この結界に入って」

「わ、分かった」


 領主一家が結界に入ろうとすると、ゴブリンキングが追いついて、領主夫妻と男の子を腕を一振りさせ、吹き飛ばす。

3人は吹き飛んだが、運よく結界の中に転がり入る。


 女の子だけ、結界の外に取り残されて、尻餅をついている。

ゴブリンキングがニタリと笑いながら、美羽を見る。


 ゴブリンキングは美羽の背格好を見て、それよりも小さな女の子を見捨てられないだろうと踏んだのだった。


 果たして、美羽は震える女の子を見て、


「美奈ちゃん!」


 女の子を美奈に重ねて、無我夢中で走っていった。

辿り着くと、女の子を抱きしめて、


「大丈夫だからね。お姉ちゃんが守ってあげるよ」


 そういってにっこりと笑う。

女の子は安心したようにニコリと笑いかけて、すぐに顔が凍りついた。


 美羽の背後に醜悪な笑顔を浮かべるゴブリンキングがいたのだ。

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