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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第4章 帝都編2

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第63話 復讐を望む女性

「私の旦那を殺した奴はわかるかい?」


 美羽は彼女の表情を見て言葉に詰まった。

一瞬で彼女の気持ちを理解してしまったからだ。

最愛の人を理不尽に奪われたこと。

この先、どうやって生きていけばいいのか途方に暮れていること。


 この人は、誰が殺したか知ったら、きっと力の限り復讐を果たすだろう。

美羽の持っている知識には、復讐は何も生まないという言葉もあるが、何もしなければ先に進めないのも事実。

例え、復讐の先に何も生まれなくても、心がそれを欲するのだ。


 それに、野放しにしていると次の被害者が生まれる可能性もある。

一度殺人をしたものはさらなる殺人を望む場合があるのだ。


 しかし、何も証拠もなく復讐をしてしまえば、この人に待っているのは破滅だ。

子供を残して先に死ぬことになるだろう。

ノイは小生意気な子供だが、まだほんの子供なのだ。

きっと、ノイは路頭に迷ってしまうだろう。


 そう考えている間も、女性はじっと美羽を見つめている。

これを逃したら、機会がなくなる。逃してなるものかという目だ。


(本気なんだ)


 美羽は思う。復讐を止める権利など、誰にもないのだと。

誰が復讐を止めようと、その人は必ずやり遂げるだろう。

もしそれができない時は、その人はきっと自分自身の身体か心を自ら殺してしまうだろう。


 だから、長期的に見て復讐を止めるのは無意味なのだ。

自分が気づいてけりを付けるしかない。


 美羽は薄く笑う。

それは、儚く悲しい笑いだった。

おおよそ5歳の子がする笑いではない。

女性もそう思ったし、それをさせているのは自分で罪悪感がちくりと胸を刺す。

それでも引くことができなかった。


「いいよ。視てあげる」

「……いいのかい」


 女性が重々しく言う。


「うん、あなたには必要なことなんでしょ」


 女性は一瞬苦しそうな顔をするが目を閉じる。

そして、目を開いた時には最初に会った時のようなにこやかな笑顔になっていた。


「ああ、必要なんだよ。お嬢ちゃんありがとう。私の名前は……」

「名前はいいよ。教えないで」

「なんでだい?」

「これからいなくなる人の名前なんかいらないよ。もし聞くとしたら、きちんとこの先もいるって分かってからかな」

「あはは、そうかい。私はお嬢ちゃんが気に入ったよ。もっと早くに知り合えればな」

「うん……、そうだね」


 女性は豪快に笑い、美羽は作り笑いをする。


「それじゃあ、占ってもらうには何か準備が必要かい?」

「いらないよ。このままでわかるから」

「そうかい、じゃあ頼むよ」

「うん、分かった」


 美羽は目を閉じて集中した。

すると、美羽の体から桜色の光が溢れ、その光が桜の花びらに変わっていく。

それが、桜吹雪を作り周囲を飛び回ったと思うと、美羽に集まってきた。


 女性は感嘆の声を上げる。


「これは見事なものだねぇ。噂に聞く天使様みたいだ。ん? 天使様ってまさか」


 そんな女性の声を遮るように美羽が言った。


「分かったよ」

「え? もう分かったのかい?」

「うん、話していい?」

「あ、ああ、ちょっと待ってね。心の準備をするから」


 女性は目を瞑って何事か呟き、再び目を開けた。


「それじゃあ頼むよ」

「うん、あなたの旦那さんは、街の小川の橋の下で殺されていたところを一月前に発見された」

「ああ、その通りだよ。すごいな」

「そして、殺したのはコーディーという男」


 女性はその言葉を聞いて目を見開く。

信じられないといった様子だ。


「ま、まさか、コーディーが?」

「旦那さんの親友でゴルディアック商会に勤めている人だね」

「あ、ああ、ま、間違いない、そのコーディーだよ。え、なんで、コーディーが?」


 女性が美羽の言葉に混乱をしている。

女性はコーディーのことを信頼していたのだから仕方ない。


「旦那が亡くなった後も、頻繁にウチに様子を見にきてくれて……、よくしてくれていたんだよ。

何かの間違いじゃないのかい? お嬢ちゃん」


 美羽はそれには答えない。

無慈悲に続ける。


「あなたと旦那さんが経営している食堂の周りが最近地上げされているでしょ」

「そ、そうだよ」

「それがゴルディアック商会でしょ」

「よ、よくそんなことまで……」

「もっと分かってるよ。ゴルディアック商会と言っても規模が大きいから色々な部門がある。

コーディーは地上げとは別の部門だから、ゴルディアック商会には敵対している旦那さんも、コーディーとは今まで通りに付き合っていた」

「そ、その通りだよ」

「そんなコーディーとあなたの家との仲に目をつけた者がいた」

「そ、それが」

「そう、ゴルディアック商会長。今回の親玉」

「それじゃあ、ゴルディアック商会の別の誰かが旦那を殺しただけで、コーディーが殺したとは決まったわけじゃ」


 女性はコーディーが犯人だと思いたくない。

一縷の望みにかけてみるが、美羽は無慈悲に告げる。


「ゴルディアック商会の商会長はコーディーにこう持ちかけた。

もし、あなたのお店を手に入れられれば、コーディーは部門長に昇格。その上にお店を失ったあなたを妻に娶れるように計らうと」


 女性は口をカラカラにさせて、掠れた言葉しか出すことができない。


「そ、それじゃあ、旦那が、ころ、された、のは」

「そう、コーディーがあなたと結婚をしたかったから、邪魔だった旦那さんを殺したんだよ。部門長はついでみたいな者だね」


 美羽は全く歯に衣を着せない言い方で告げる。

こういう時は事実だけを淡々といった方がいい。


「そ、そんな」

「コーディーは、あなたたち夫婦が結婚する前からあなたたち二人とずっと仲が良かった。

その時から、コーディーはあなたを好きだったの。


 でも、あなたは旦那さんを選んだ。

その時から、コーディーにとって旦那さんは憎しみの対象だった。


 でも、コーディーは憎しみを隠して、あなたのそばにいることを選んだ。

だから、結婚もしないでずっといたんだよ」

「私たちは何度も結婚を勧めていた」

「その都度、コーディーははらわたが煮え繰り返る思いだったんだよ。

もちろん旦那さんにね」


 女性は呆然として呟く。


「そうだったの」

「それで、ゴルディアック商会長に旦那さんをどうにかしろと持ちかけられた、コーディーはそれでも悩んだ。

旦那さんに憎しみもあるけど、友情も感じていたから。

ゴルディアック商会にはどうにかしろと言われていただけ。


 だけど、コーディーはあなたとのことを進展させるには、旦那さんの殺害しかないと思い込んだ。

そして、結局殺しを選んだ」

「ど、どうやって……殺されたんだい?」

「『ゴルディアック商会に地上げをやめさせる方法を考えた。今はまだ誰にも知られたくない話だから、誰にも言わずにきてくれ』と誘い出したの。


 旦那さんは気を許していたから、完全に油断していたの。それをナイフで刺したんだよ。

刺されて、戸惑う旦那さんに、『これでお前の女房は俺の妻になる』と言ったの」


 まるで、見てきたように話す美羽に女性は言葉がない。


 「これが全容だよ。お姉さんはどうするの?」


 その場にいた者たちは全員沈黙してしまった。

図らずも同席してしまった、シアとアミも夫であり父を理不尽に亡くしている身だ。

そして、同じくゴルディアック商会が原因である。

女性の気持ちがよくわかった。


 やがて、女性は口を開いた。


「私はやるよ。このままのうのうとコーディーが、旦那と私の思い出の詰まった店に通ってくることを許せるわけがない」

「そう」


 美羽は小さく返す。


「でも、ゴルディアック商会長は許せない。奴さえいなければ、今でも旦那は生きていたはずだ」


 女性はでも、と続ける。


「私の力では届かない……」


 そう言って、女性は俯いて涙をこぼす。

涙の雫が石畳に黒いシミを作っていく。


 シアとアミも悲しそうに女性を見つめた。


 そこへ美羽が場違いな明るい声で言った。


「でもさ、近いうちにゴルディアック商会には天罰が降ると思うよ」

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