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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第3章 帝都編1

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第38話 好きだ!

 帝城の城門の大きさに見上げた美羽は驚いた。

大きくて長い城壁の前には深い堀が掘られていて、立派な城門には跳ね橋がかかっている。


「うわぁ〜、大きいねぇ」

「ミウちゃん、レーチェル、この城門が中央門よ。この他に北門があるの。

普段お城に来る時はこの中央門を使うと思うわ」

「へー、もう一つ門があるんだ」


 その後ジョディに城の建物について解説を受けた。

歴史のある建物なので美羽は聞いていて楽しかったが、レーチェルは退屈してしまったようだ。

大きな欠伸をしている。


「レーチェルも淑女の嗜みとして、ちゃんと聞きなさい」


 ジョディに嗜められて、背筋を伸ばすレーチェルを美羽は微笑ましく見ていた。


 城の中に入ると、クララが迎えてくれた。

後ろには護衛の近衛兵が控えている。


 モーガン以下、ルッツ家の面々は厳かに挨拶をする。


「皇女殿下におかれましては、お出迎えいただき誠にありがたく存じます」

「ルッツ伯爵。気にしなくていいわ。今日は私の友人を迎えに来たんですもの」

「ハッ」


 続いて、ジョディ、カフィ、ルッツの順で挨拶をしていく。


 それが終わるとクララは、美羽に向き直り、嬉しそうに微笑みかける。

美羽も笑顔になってクララを見つめる。


「ミウちゃん、ごきげんよう」

「クララ、こんにちは」

「元気そうで何よりだわ」

「うん。……あれ?」

「どうしたの?」

「この間いたうるさい人がいないなって思って」

「デニーのことかしら」

「そうかな?」

「彼なら護衛から外したわ。ミウちゃんに斬りかかったんですもの。当たり前よ。

本当だったら、罪に問いたかったのだけど、侯爵家の子息だった上に、ミウちゃんのことはまだ公になっていないから、重い罪には問えなかったの。

今頃は見習い騎士に混じって、鍛え直しているわ」

「自業自得だね。いきなり斬りかかってきたんだから」

「そうね、ミウちゃんが本気で怒ってたら大変だったわ」


 一行は待合室に案内されるが、そこでクララが何か言いにくそうにしていた。

美羽のことをチラチラ見て何か言いかけては、口をつぐみ顔を背けている。

美羽はそれを見て笑ってしまった。


「あはは、どうかした? クララ。さっきまでと全然違うんだけど」

「笑わないでよぉ、もう。あのねミウちゃん、お願いがあるの」

「お願い?」

「ええ。私の兄の病気を治して欲しいの」

「お兄さん? どんな病気なの?」

「それが、どんな病気かもわからないの。

3日前から急に寝込んでしまって、いろんなお医者さんや医師の方に見てもらったけど、全然わからなくて。

それが昨日の夜から急に容体が悪化して、お医者さんの見立てでは今日が山場と言うの」

「分かった、案内して」

「いいの?」

「いいよ。クララの大切なお兄さんなんでしょ。早く連れて行って」

「ありがとう、ミウちゃん」


 クララは嬉しそうに微笑む。

美羽もつられて微笑んだ。


 ルッツ家の人々を残し、クララの案内で、立派な部屋に入る。

入り口に護衛の兵士が二人立っていて、侍女が二人控えている。


 そこには病床で痩せてしまったであろう、金髪の青年が横たわっていた。

元は色男だったと思われるが、目は落ち窪み頬はこけ、みる影もなくなっている。

目を閉じて、苦しげな呼吸をしていた。


 きんちゃんが、美羽に耳打ちしてくる。


「美羽様、あの方はエルネスト・マーヴィカン第2皇子、17歳です。皇太子になるのは時間の問題と言われている方です。聡明で、優しく、女好きのようですね。お気をつけください」

「女好きなの? あはは、私は5歳だから興味ないでしょ」

「多分?」

「……」


 きんちゃんの反応に美羽が柏原を思い出し、苦い顔をしていると、エルネストを見ていたクララが美羽に話しかける。


「きんちゃんの言うとおり、エルネスト兄様というの。確かに女好きなんだけど、私にはとてもいい兄様よ」

「あはは、聞こえていたんだ」

「うふふ、私地獄耳なの」

「ナイショの話はできないね」

「されたら寂しいわ」

「そうだね、しないようにするね。それじゃあ、早速見させてもらうね」

「うん、お願いね」


 美羽は神気結界を発動する。

最初の頃は集中しないとできなかったが、最近は一瞬で展開できるようになったし、動きながらでも出せるようになった。


 桜色の淡い光が部屋に溢れ、桜の花びらが部屋に舞う。


「きれい……」

 

 クララだけでなく、侍女もその光景にうっとりとしていた。


 神気結界はその範囲内で不浄のものの存在を許さない。

エルネストの周りに黒いモヤのようなものが浮き出てきた。


「に、兄様。……ミウちゃん、これは?」

「これがエルネストの病の原因だよ。でも、病というより、これは呪いね」

「の、呪い。いったい誰が」


 美羽が、エルネストの右手を布団から引っ張り出す。

すると、右手が一際濃いモヤに包まれていた。


「これが原因ね」

「右手が?」

「右手というより、人差し指に指輪がついているの。そこから呪いが出ているよ。

術者が誰かを使って、エルネストに渡るようにしたんだと思う。

この人、女好きなんでしょ。女性に渡させたんじゃないの?」

「に、兄様……」


 美羽が指輪を外そうとすると、指にくっついているようで抜けなかった。


「私がやろうか、ミウちゃん」

「ううん、クララじゃあ私があげたペンダントが結界で弾いてしまって触れないよ。

それに、外れないのも呪いだから」

「じゃあ、どうすれば」

「大丈夫。今はずす」


 美羽が指輪に触れて、言った。


「外れて」


 すると、一際濃い桜色の光が右手を包み込む。

それとともにモヤが晴れて、指輪がするりと抜けた。


「指輪は神気で呪いを完全に消すことはできるけど、術者を探せるように少しだけ呪いを残しておいたよ。

もう人が触っても長い時間じゃなければ害はないよ」


 そう言って、美羽はテーブルの上に指輪を置いた。

クララが興味深そうに指輪を眺めている。


「これが呪いなのね」

「もうほとんど力は失ってるけどね」

「じゃあ、兄様はもうこれで」

「ううん、もうすでにエルネストに呪いが侵食しているから、直接浄化しないとダメだよ。

でもすぐにできるから心配しないで、クララ」

「うん、お願いね」


 美羽がエルネストに向き直り、手をかざす。


 ズズズ


 と、黒いモヤの塊がズズズとまるで生き物のようにエルネストの体から出てきた。


 美羽から桜の花びらが舞ってきて、モヤとエルネストを包み込んだ。

すると、エルネストが桜色に光、モヤは桜の花びらが触れると触れたそばから消えていった。


 モヤが全て消えると、エルネストがゆっくりと目を開けた。

浄化をするとともに治癒もかけたので、すでに病気だったのが嘘のような血色に戻り、窪んでいた目もこけていた頬も元に戻っている。


「エルネスト兄様!」


 エルネストは完全に目を開ける。

その瞳には桜の花びらを纏って、桜色に輝いている美羽がいた。


「て、天使だ」


 美羽と目が合うと、美羽がにっこりと笑う。


「調子はどう?」

「好きだ! 結婚しよう」

「へ?」


 突然のエルネストの告白に美羽が呆然とすると、エルネストは美羽の腕を引っ張り抱きしめる。

背筋がゾワっとする。

美羽は咄嗟に逃げようとするが、美羽の素の力では鍛えているエルネストには到底敵わない。


「ちょ、ちょっと」


 美羽が抗議の声をあげようとしたその時……、


 チュ


 美羽のおでこにエルネストがキスをした。


 ゾワワワワワワワワ〜


 美羽の全身がゾワゾワして、鳥肌が立つ。


 そして、一拍遅れて……


「うぎゃあああああああああああああああああああ」


 美羽の絶叫が城中に響き渡った。

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