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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第2章 辺境編

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第25話 行き先変更

 代官邸の執務室では、モーガンが冒険者ギルド長のグインの報告を受けていた。


「なるほど、転移ゲートか。何者が設置したかわかるか?」

「いえ。しかし、ミウが言うには、近くに人間でないものがいたようですので、その者の仕業かと」

「なぜ、こんな辺境を狙ったんだと思う?」

「おそらく、ここは実験的な意味で狙われたのではないかと思います」

「実験だとしたら、成功と見て間違いないだろうな」

「おそらく」

「同じものがそこらじゅうに作れると思うか?」

「いえ、かなり手間がかかるかと思います」

「それなら、まだ少しは時間的な猶予は残されていると見て良いだろうな」

「次のターゲットはどこだと思いますか?」

「分からん。が、それなり以上の大都市になるだろうな」

「なるほど」

「転移ゲートはおそらく、設置する者がいないといけないだろう。

と、すると、現場にいたという怪しい者が犯人だと見て良いと思う。

そして、次のターゲットに徒歩や馬や走竜、馬車を使っての移動となると、あまり遠くにはいかないのではないか?」


 聞いていたグインの顔が引き締まる。


「領都フラスコですか?」

「可能性はあるが、今回は本命を直接狙う気がする」

「と、言うと……ま、まさか」

「そう、帝都セセララビ」

「しかし、帝都は城壁も大きいですし、ゴブリンごときでは落ちないのではないですか?」

「確かにそうだ。仮にゴブリンキングがいたとしても、帝都には優秀な騎士がいる。問題ないだろう。

しかし、それはゴブリンに限った時の話だ」

「ゴブリン以外も呼べると言うことですか?」

「転移ゲートはどこかと繋げる物なのだろう? であるなら、実験が終わった今だったら、もっと強い魔物を送り込んでも自然なことだろう」

「な、なるほど。それでは、帝都に報告をしないといけませんね」

「帝都には私が報告に行こう。対策を促さなければならないからな」

「領都フラスコの守りはどうするのですか?」

「領都は弟に任せてあって、防備にも十分な兵を残してきてある。

それでもダメなようだったら、私がいてもダメだろう。

だから、帝都の注意喚起の方が先だ」

「そうですか」

「グインは各ギルドに注意喚起を行ってくれ」

「はい、すでに連絡を始めています」

「ご苦労。話が早くて助かるな」

「恐縮です。ところでお聞きしたいことがあるのですが……」

「なんだ」

「ミウのことなんですが、何者なんでしょうか?」


 モーガンはしばし黙って下を向く。

やがて顔をあげ探るように言う。


「そなたはどう思う?」

「ミウ、いえ、ミウ様は御使い様ではないかと疑っています」

「本人が言ったのか?」

「副ギルド長には女神さまのところから来たという話だけしたようです」

「なるほど。ミウ様がそこまで言っているのなら良いだろう。

そうだ、ミウ様は御使い様だ。証拠はあの桜色の髪と瞳だ。女神様に変えられたらしい」

「確かに桜色は女神様の色だと言われておりますね。これは、陛下に報告はするのですか?」

「立場上しないといけないだろう。美羽様が強く反対した場合は、国を守る意味でも報告をしないという選択をするべきかもしれないが。今のところ、隠そうという意思は見えないしな」

「そうですか。帝都は揺れそうですね」

「その通りだな。取り込みたい皇族と貴族と教会の間で揉めるだろうな」

「ミウ様はどうしていくのでしょうか?」

「女神様には特別に課された役割などはないそうだ。ただ、時々女神様に祈ることだけはするそうだが。

あとは楽しく生きろと言われているらしい」

「そうですか。C級冒険者にしてしまったのは大丈夫でしょうか?」

「問題ないだろう。特別強制することもないのなら」

「そうですね」


 そのあと、2人は今後の美羽の扱いについて話し合った。



 ディナーの時間の後、くつろいでお茶を飲んでいる時にモーガンが言う。


「もともと明後日には領都フラスコに向かって出発する予定だったが、行き先が変わった」

「まあ、どこに行くのかしら?」

「帝都セセララビだ」

「どうして急に帝都に?」

「帝国にとって、緊急と思われる事案が発生してな。お前たちは領都に送ろうかと思ったのだが、それでは間に合わない。

それに、美羽様にも帝都に来ていただきたい。美羽様、帝都に来ていただけないでしょうか?」


 美羽は興味なさそうにしていたが、きんちゃんが美羽に口添えをした。


「大きな街に一度行っておいた方がいいです」

「どうして? きんちゃん」

「食料やさまざまな道具など仕入れておきたいのです」

「そうなんだ」

「それに、帝都ともなれば、美羽様の治癒の鍛錬になりますので」

「あ、そうか。わかった。モーガン、私も帝都に行くよ」

「ありがとうございます」

「おねえさまと、ていとにいけるのですね。うれしい。いっしょにまちをあるいて、おいしいものをたべましょう」

「うん、いいよ。楽しみだね」

「はい、すごくたのしみですわ」


 すると、先ほどから話したそうにしていたカフィが口を開いた。


「僕もご一緒してもいいでしょうか?」

「まあ、おにいさま。これはおとめどうしのさんさくですわ。とのがたはえんりょしてください」

「いいじゃないか、僕がいたって」

「それではおねえさまもわたしもたのしめないじゃありませんか」

「いいわ、レーチェル。2人きりの時も作るから、カフィもいっしょに行く日も作りましょう」

「本当ですか? きっと、貴女を楽しませてみせます」

「そんなに気負わなくてもいいけど」

「もう、おにいさまったら」


 モーガンもジョディも苦笑いをしながらカフィの美羽に対するアプローチを見ていた。


 その晩、美羽の部屋からは桜色の光が漏れていた。

その部屋の中心で、美羽が集中している。


 向かい合わせにした手と手の間には、強い光が輝いていた。

美羽が集中するほどに、桜の花びらが舞って幻想的な光景になる。


 やがて、光が収まると、そこには1人の可愛い幼女の像があった。


「やったぁ、完成!」

「それはどなたですの?」


 部屋にいたレーチェルが口をひらく。


「これはフィーナちゃんだよ」

「まあ、めがみさまですの?」

「うん、そうだよ」

「とてもかわいいですわ」

「うん、フィーナちゃんは可愛いんだよ」

「おねえさまはどうして、めがみさまをおつくりになったんですの?」

「フィーナちゃんにお祈りするって約束してるからね。教会に行くの大変でしょ。それだったら、作っちゃえって思ったの」

「みてると、とてもあんしんします」

「神気で作ってるから、癒しの効果があるんだよ。これを胸で抱いてみて」


 そう言って、レーチェルに渡す。

レーチェルは大切そうに胸に抱く。

すると、レーチェルはうっとりした顔になる。


「とても、きもちがやわらぎますし、つかれもとれるかんじがします」

「うんうん、そうでしょ。神気って気持ちいいよね」

「はい、とっても」


 それから、美羽はひざまづき両手を合わせて、レスフィーナにお祈りを捧げた。

レーチェルも隣でお祈りをしていたのだが、美羽から溢れ出す神気が気持ちよくて、手を合わせながら眠ってしまった。


「ふふふ、レーチェルったら」


 そう言って、美羽は女神の手でレーチェルを運んで、ベッドに入れた。


 最後にここのところ日課にしている、ローズクウォーツのネックレスに、残った神気を全て入れた。

ネックレスは淡く、しかし力強く光った。


「残った魔力はどうしようかな?」

「それでは私に入れてください。私は空気中の魔力を補充していますが、美羽様に注いでいただければ、より強くなれますので」

「分かった。おいできんちゃん」


 美羽はありったけの魔力をきんちゃんに注いだ。

きんちゃんが銀色に輝いた。

明らかにきんちゃんの魔力量が先ほどよりも増えている。


「これからは毎日あげるからね」

「はい、よろしくお願いします」 


 それが終わったら、美羽もレーチェルの寝ているベッドに潜り込んで寝た。

 

 部屋の中にはいつまでも桜の花びらが舞っていて、2人の幼女の安らかな眠りを助けていた。

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