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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第2章 辺境編

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第24話 高い高い

 美羽たち一行はポンテビグナにつくと、冒険者ギルドに直行した。

ギルド長室で報告をした後、報酬の支払いを受ける。


 今回は、金貨5枚だった。


「……」

「なんだミウ?」


 グインが不思議に思って聞く。


「……なんか少なくない? 子供だからと思って舐めてるとか?」


 グインが慌てた顔をして答える。


「いや、そんなことはないんだ。美羽が活躍してくれたことは報告を受けて知っている。

知っているが、このギルドで出せる報酬がこれで限界なんだ」

「ふーん、この前も思ったけど、お金ないの? このギルド」

「すまない、復興に金がかかりすぎて、出せるものがないんだ。

その代わりギルドへの貢献のポイントはしっかりつけておくからな」

「それは普通つけるんだよね。別に代わりでもなんでもないでしょ」

「うっ、ま、まあそうなんだが」

「まあいいや。その代わり、貸し1つね。ちゃんと書面にしておいたほうがいいんだよね、どこのギルドでも融通してもらえるようなことを書いておいてね、グイン」

「わ、分かった」


 美羽がギルド長室から出ていくと、スウリがジト目でギルド長を見ている。


「なんだ、スウリ」

「だから言ったではないか。美羽ちゃんを甘く見るなと」

「う、だが、できることなら節約をしたいしだな」

「そんなことを言って、いざという時に力を借りることができない方が問題だろう」

「ああ……、その通りだな」

「今後気をつけてくれ。それと、今回の転移ゲートというものはどう思う?」

「うーん、人間と敵対している種族だろうが、エルフや獣人ではないと思うぞ」

「それでは、やはり魔族か」

「可能性があるな」

「魔族がなぜ、こんな辺境に仕掛けてきたのだろうか?」

「推測でしかないが、大都市を攻める前の実験的なものではないだろうか?」

「そうすると、今後帝都などが攻められる可能性があると?」

「かもしれないな」

「それでは早急に対策をしないとな」

「帝都や他の冒険者ギルド支部への連絡の準備をしてくれ。

俺は、これから領主さまに報告に行く。場合によっては今後帝都に行かないといけないかもしれない」

「分かった。次のギルド便に間に合うように準備をしておく」

「頼んだ」

「ああ、それと、美羽ちゃんのことなんだが、本人から聞いたわけではないが、もしかしたら御使い様かもしれない」

「なんだと? 詳しく話してくれ」


 スウリは見て聞いたことを詳しく話した。


「なんということだ。それなら最上位の待遇をしなければならないではないか」

「美羽ちゃんがそれを望んでいない節があるからな」

「しかし、御使い様とはっきりしたら、そうしなければなるまい」

「まあ、そうだな。それまではこのままでいいんじゃないか? 決まったわけではないし」

「女神さまのところから来たのなら、まず間違い無いだろうが、スウリの言う通りにしよう」

「ああ、とりあえず様子をみよう」

「分かった。しかし、ギルド便には最重要人物として厚遇するように通達してくれ」

「分かった」


 スウリがギルド長室から出ていく。

グインがため息を吐く。


「先日の襲撃に、転移ゲートに怪しい人間以外の種族に御使い様か。しばらく息をつく暇もないな」


 

 美羽は代官邸に帰った。

エントランスホールに入ると、レーチェルが全力で走り込んできて、お腹に突っ込んできた。


「ぐふぅ」


 全然可愛くない顔で、可愛くない声をあげる美羽。

それに対して、満面の笑みで美羽のお腹に顔をすりすりするレーチェル。


「おねえさまー、さびしかったですわー」

「レ、レーチェル、きてくれるのは嬉しいけど、お腹に突撃はしないで」

「えへへ、ごめんなさい」

「うふふ、もう、しょうがない子ね」


 美羽はレーチェルの両脇に手を差し込むと、『女神の手』の力も使って、上に放り投げた。


「高い、高ーい」

「きゃあ」


 大人の背よりも高いくらいまで投げて、受け止める。


「おねえさま! もっとやってください」

「よーし、もっと高くいくよー。それ」

「きゃああ」

「もっといくよー。高い高ーい」

「きゃあああ」


 何度か投げて、受け止めてあげる。


「うふふ、おねえさま、たのしかったです」

「それならよかったよ」

「お父様もやってくれないので、嬉しかったです。おねーさま」

「うふふ」


 2人が仲良く話していると、いつの間にかモーガンとジョディとカフィがやってきていた。


「ミウ様、お帰りなさい」

「ミウちゃん、おかえりなさい」

「お、おかえり、ミウ……様」

「ただいまぁ」

「どうだった、お仕事は?」

「うん、楽しかったよいろいろと」

「それなら良かったわ。

お風呂に入れるから、入ってらっしゃい」

「わたしもおねえさまとはいりますわ」

「僕も!」


 カフィが一緒に入ることを主張してきて、みんなの注目が集まる。

カフィが慌てて付け足す。


「僕はレーチェルと一緒に入っているんだから、レーチェルと歳が1つだけしか違わない美羽様と一緒に入っても大丈夫なはずです」

「言ってることは間違ってないような気がするけど、ダメよ」

「どうしてですか、お母様」

「御使い様と入るなんて不敬よ」

「そんなこと言ったら、レーチェルだって不敬じゃないですか」

「それはその御使い様が許しているからよ」

「それなら、美羽様がいいって言ったら」


 そこまでカフィが言うと、黙ってじっとカフィのことを見ていた美羽がにっこり笑った。


「それは嫌だよ」

「そ、そんな」


 一言で切られて、絶句したカフィ。

ジョディはそんな息子をため息をついてみる。


「じゃあ、行こっか。レーチェル」

「はい、おねえさま」


 レーチェルと仲良く手を繋いで立ち去ろうとする。

 しかし、カフィはさらに言い募る。


「ミウ様は……」

「ん?」

「ミウ様は、僕のことがお嫌いですか?」


 カフィは焦っていた。

美羽と仲良くなりたいのに、仲良くなるのはレーチェルばかり。

自分とは明らかに距離を置かれている。

しかし、美しい美羽と仲良くなり、あわよくば将来結婚したいと思っているからだ。


「カフィ、やめなさい!」


 モーガンが制する。

御使いに対して、言葉がすぎるため、モーガンは慌てた。


「なぜですか、父上!」

「御使い様に対して、自分を好きか嫌いか問い詰めるなど、それこそ不敬だ」

「でも……」


 美羽がしかたないとばかりに再び口を開く。


「カフィのことは別に嫌いじゃないわ」


 カフィの顔がパァと明るくなる。


「それなら……」

「でも、お風呂に一緒に入るのは嫌」

「う……」

「カフィは私の裸を見たいの?」

「っ!」


 カフィは途端に顔が赤くなる。

メイドと一緒にお風呂に入ることがある。

それに慣れているので一緒に入ることを主張したが、美羽の裸を想像したら、途端に恥ずかしくなった。

美羽がそれを見て、冷静に話を続ける。


「私は、たとえ子供でも、男の人に裸を見られるのは絶対に嫌。

今後、そう言う事は言わないでね」

「……はい」

「そもそも、兄妹でもない女の子とお風呂に入ろうなんて、ダメだよ。

子供だからって、私だって女の子なんだよ。

モーガンはその辺、教えてないのかな」


 モーガンが頭を下げて謝罪する。


「私の監督不行届です。申し訳ございません」

「分かってくれれば良いよ。それにあんまり嫌だったら、出ていくだけだからいいし」

「それは、お許しください」


 御使いがお風呂を強要されて、伯爵家から出たなんてとんだ醜聞だ。

なんとしてでも防がなければならない。


「今後、このようなことは言わせませんので」

「分かった、良いよ。じゃあ、レーチェル、お風呂に行こ」


 美羽とレーチェルが手を繋いでキャッキャと小走りしながら、エントランスホールから出ていった。

その後からジョディもついて行った。

モーガンはカフィに指示を出す。


「お前は、執務室に来なさい」

「……はい、お父様」


 この後、カフィはどれだけ御使い様が重要な意味を持つか話され、もし、不興を買ったら、家の取りつぶしでは済まないと諭された。

これで、カフィはおとなしくなると思って解放したが、カフィのアプローチは続く。

それにはモーガンも頭を悩ませる。

もちろん、御使いと恋仲になり、婚姻を結ぶと言うことになれば、国での立場も確固たるものになるし、御使いにルッツ伯爵家は守られることになる。ひいては女神の加護を得るということと同じである。


 しかし、美羽の意向がわからない。

わからないまましつこくしてしまった結果、美羽の不興を買うことがどれだけのマイナスになるか、想像もできない。

何せ、女神を敵に回すことと同義なのだから。


 モーガンとしては、そんなリスクを負うよりもカフィには無難な家と婚姻してもらい、美羽と仲良くするのはレーチェルだけで良いと考えている。


 とはいえ、今の段階ではモーガンは完全に油断をしているのだった。



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