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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第5章 崩れた日常

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第122話 ?具 スクリーン

「魔王様、炎斬魔将ヴォルクが勝利を収め、戻ってまいりました」

「うむ、統軍魔将ヴィルトランに魔族500を預けて街の制圧に向かわせろ。それと躁獣魔将ミューラをサポートにつけろ。

ただし、抵抗しない者は殺してはいかん。抵抗する者だけ殺せ」

「殺さなくていいのですか?」

「残したものには魔王軍の恐ろしさを伝える役割がある。ただで生かす気はないがな」

「かしこまりました」

「彼の方から授かったあれを使え。帝都民に絶望を見せてやろう」

「ハッ、すぐに準備をさせます」


 魔王がそういうと、すぐに台座に乗せられた水晶が現れた。

それは淡く黒い気を纏っている物だった。


 魔王が手をかざすと、黒い気が増幅し帝都の上空に集まる。

それが徐々にいくつもの長方形に形を変えていき、複数の巨大なスクリーンになっていった。

帝都のどこにいてもみれるような数がある。


 さらに皇城の謁見の間、避難所、人が集まっている場所にまでスクリーンが現れた。


「セルヴァン、なんだこれは」

「陛下、分かりませぬ。しかし、帝都上空にも同じようなものができているようです」

「魔王軍の魔道具か。こんな規模でできるとは……」

 

 スクリーンの色が変わり何かの形を映し出そうとしている。

その像が結ばれると恐ろしい形相の男が映っていた。


 スクリーンのその男が口を開く。


『帝都セセララビの住民よ。そして、マーヴィカン帝国の為政者たちよ。

我は魔王ガルヴォート。汝らを地獄に落としにきた者だ』


「あれが魔王か……」


 皇帝ウォーレンが呟く。

他の閣僚も口々に魔王の名を言う。


 帝都の街でも、魔王の威容に恐れ慄きながら、次に何を言うのか、固唾を飲んで見守っていた。


『汝らが今見ているこれはスクリーンと言ってな、ある偉大なお方が我に授けたものだ。

これは、便利でな。過去のことも今のことも帝都内のどこでも自在に映すことができるのだ。

これを使って、今から、汝らに抵抗することがいかに無駄なことか、帝国の防衛力がいかに無力かを見せてやる』

 

 魔王がそう言うと、画面が切り替わった。

先ほど魔王軍が城壁に接近している光景が映し出されたようだ。


 城壁から多数の矢や魔法が放たれる。

それは何者をも近づけることがない攻撃に見えた。


 帝国民はその映像を見て、帝国側の頼もしさを感じた。

しかし、次の瞬間にはその思いは打ち砕かれた。


 全ての攻撃は魔族側の障壁で最もあっさりと防がれてしまったのだ。


『この障壁は、魔王軍の絶牙魔将リュグナたった一人の絶対障壁というものだ。帝国はたった一人の障壁さえも破ることができぬのだ』


 それを見た帝国民たちは怖れ震える。


「あんなの、どうやったら倒せるんだよ」


 落ち込む者たちが多い中、声を上げるものもいた。


「でも、あんなことができるのなんて、そいつ一人じゃないか? 一人なら怖くねえよ」

「確かにそうだな」


 『フハハ、魔王軍にこのようなことができるものは一人しかいないと思うものもおろうな。ではこれを見よ』


 次に映ったのは、身長10メートルはありそうな鬼のような大男であった。


 『奴の名は破城魔将エルガ。文字通り、城を一人で落とすことができる』


 魔王がそう語ると同時に、エルガの口から大きな紫色の魔力波が出て、堅牢な外門を砕いて、帝都の街を消しとばしていった。


「さ、さっきの衝撃はたった一人がやっていたのか?」

「あ、あんなの防ぎようがないじゃないか」


 『汝ら、防ぎようがないと思ったな。それは正しい意見ぞ。エルガの攻撃は防ぐことなどできない。

その気になれば、帝都など更地にできるのだ』


「ああ、もう、帝都は終わりだー」

「いや、まだだ! 帝都には近衛騎士団長のクラーク様も帝都騎士団長レオナード様もいるんだ」

「そうだ! あのお二人がいればなんとかなる」


『フハハ、まだ希望はあるな。それでは次に見せるのは炎斬魔将ヴォルグ。さて、誰と戦っているかな?』


 次にヴォルグとレオナードが戦っているところが映し出される。


 レオナードから、帝都民でもわかるくらいの魔力が溢れ出ている。

これなら、どんな相手にも勝てるだろう。帝都民はそう期待した。


 しかし、結果はレオナードが無惨に左腕を斬り落とされ、切断面から燃えて火だるまになった。

消火された時には黒焦げになったレオナードの姿だった。


「きゃああ、レオナード様ー」

「レ、レオナード様が……」

「矢も魔法も通じなくて、街を消し飛ばす化け物がいて、レオナード様さえあんなにあっさりとやられるなんて、どうすれば勝てるんだよ……」


 帝都民は絶望した。

魔王はその絶望にさらにたたみかけた。


『汝ら、まさかこれが我が魔王軍の全ての力と思ってはおるまいな』


「ま、まさか。まだ……」


『これから映すのは今の姿だ。紹介しよう。統軍魔将ヴィルトランにそれと躁獣魔将ミューラだ』


 映し出したのは知的な外見をした、人間と大差のない外見をした男と、青い髪をツインテールにした、可愛らしいと言ったほうがいいが、大型の牛の魔物に乗った少女だった。


 『ヴィルトランは魔族に天才的な指揮を出す。今500人の魔人を預けている。

 ミューラは見た目は少女だが、一人で2000の魔物を操っている。

 こやつらが、お前たちの街を蹂躙するのだ』


 魔王がそういうと、ミューラが叫ぶ。


『みんな! 魔人が入る隙間を作ってー』


 そう言うと、外門の内側で騎士たちと対峙していた魔物たちが左右に騎士たちを押し込んでいった。


 直後にヴィルトランが手を前に出して叫ぶ。


『デスサークル!』


 すると、大柄の盾と大剣を持った魔人たちが魔獣が開けたスペースに二重の円になって立つ。

一つの円は50人いる。

それが、前の魔人を肩車をした。

一つの円に25の肩車ができる。

右側が外側、右手に剣左手に盾を持っている。

 

 それがやがて走り出した。

上下の魔人は内側の盾を右に体を捻ることによって、外側に向けて、騎士たちの弓や魔法をことごとく防いでしまう。

そして、騎士たちに近づいたら、盾を戻す反動を使って、剣を繰り出す。


 騎士たちはこの動きは初見で、対応ができない。

人間にこんな動きはできないから当たり前である。

 

 これは、オーガたちがやっていたものと同じだが、魔人はオーガの3メートルに比べて2メートルと小さいが、速さがその分あって付け入る隙が全くない。


 『一旦離れろー』


 騎士たちは指揮官の号令で後ろに下がる。


 すると、今度は内側の円から弧を描いて炎や氷の魔法が飛んでくる。

後ろに下がって密集してしまった騎士たちは避けられない。


 騎士たちはなす術もなく、燃えて、氷が刺さり、次々と倒れていく。

しかも弧を描いているため、騎士たちの中程に飛んでくる。

攻撃された中間の騎士が倒れて、前列の騎士はさらに後ろに逃げることができなくなってしまう。

 

 近づくデスサークルを避けようと後ずさって、倒れた騎士に躓いて転んでしまい、逃げることもできずにデスサークルの餌食になる。

 

 これはオーガのデスサークルにはなかったことだった。

近づいても地獄、離れても地獄なのがデスサークルの本当の恐ろしさだったのだ。


 『どうだ、帝都民よ。これが魔人の力。魔将がいなくても十分強いのだぞ。それが500人もいる。

この恐ろしさは愚鈍な汝らにもわかることだろう』


「あ、あ、あ、あ」


 スクリーンを見つめる帝都民たちはあまりもの光景に声を失ってしまった。


 帝都民が十分に恐怖に陥った頃合いを見て、魔王は言う。

 

 『汝らはここで死ぬのだ。しかし、すぐには殺さない。汝らにはこの恐怖を存分に味わってもらいたいからな。

しかし、抵抗したものは即殺す。少しでも生きたければ、抵抗をしないようにな』


 帝都民の顔が絶望の色に染まる。

騎士団も勝てないような敵に抵抗のしようなどないのだ。みんな殺されてしまうしかない。


『しかしな。この絶望を語り継がねばならないものも必要だ。魔王軍の恐ろしさは人間の社会全体で共有させる必要がある。そこで、殺さない者も出すことにした』


 殺されない可能性を聞いて、帝都民は少しの希望にすがる顔をした。


 『1家族に1人だ。1家族に1人の命を助けてやろう。ただし、その1人の家族が抵抗をしたらその1人も殺す。

自分がその1人に入りたかったら、あるいは家族の誰かを助けたいなら、無駄な抵抗をしないようにすることだな。


 そして、この蹂躙劇を必ず最後まで見ているが良い』


 逆らえば殺される。自分が抵抗したばかりに、生き残る可能性がある家族も殺される。

唯一家族の誰かが生き残る方法は、抵抗せずにいるしかないのだ。


 ここで、若い層に多いが、あからさまにホッとした者たちがいた。

しかし、その者たちに魔王が追い討ちをかけてきた。


「フッ、助かったと思った者たちがいたろう? 家族がなく一人暮らしのものたちだ。

そのものたちも公平にしないといけないな。

一人暮らしのものたちは5人に1人助けてやろう。

ただし、一人暮らしのものが逆らった場合はランダムに助かった1人も殺す」


 これで、ホッとした者たちも逃げ道が塞がれてしまった。

お互いが逆らわないように見張る体制ができてしまったのだ。


「お願いします。この子だけは助けてください」

「俺はまだ若いんだ。俺を助けてくれ」

「なんでもしますから、助けてください」


 帝都中から、スクリーンに向かって命乞いを叫ぶ声が聞こえてきた。


 帝都セセララビの住民の心が折れた瞬間だった。



 —————————— 同時刻の美羽 ———————————


「美羽ちゃん、美奈ちゃん、起きて。保育園の時間よ」


 美羽は眠い目を擦り、上半身を起こす。

まだ、頭がぼーっとしている。


「ふぁ、ママ、おはよー」

「おはよう美羽ちゃん。起きられて偉いわねぇ」


 優しいママの声に美羽は嬉しくなる。


「うん! 私、お姉ちゃんだからね」

「あら、話し方もお姉ちゃんになったみたいねぇ。えらいえらい」


 美玲が美羽の頭を撫でる。

 

「えへへ、ありがとう、ママ」

「うふふ、それじゃあ、お姉ちゃんが美奈ちゃんを起こしてあげてね。ママはお弁当仕上げちゃうからね」

「はーい」


 美玲が台所に行くと、美羽が美奈を起こす。


「美奈ちゃん。起きて、保育園に行くよ」

「おねえちゃーん、おはよー」

「おはよう、美奈ちゃん」

「おねえちゃん、いっしょにごろんしよう」

「え? 起きたのに?」

「うん……」

「じゃあ、ちょっとだけだよ」


 美羽も嬉しくて美奈とゴロンとして、抱き合う。




「美羽ちゃん、美奈ちゃんは起きたかし……あら、また寝ちゃったのね」


 美羽と美奈は抱き合ったまま寝ていた。


「うふふ、気持ちよさそう。私も一緒に寝たいわ。でも、そういうわけにもいかないわね。

残念だけど、起こさないと」


 美玲は2人に声をかけた。


「焼きたてホットケーキに、シロップをたっぷりかけて食べたいのは誰かなぁ?」


 美羽がガバッと起きる。


「はーいはーい! 私でーす」

「ふぁーい、みなちゃんもー」


 美奈も美羽に釣られて起きたのだった。


 朝ごはんを食べたら、美羽と美奈は仲良く保育園のお迎えバスで登園。


 保育園で、お友達の方に行こうとしていたら、男の保育士、柏原に呼び止められた。


「美羽さーん、ちょっとこっちにきてくださーい」

「え?」

「さあ、早くこっちにきて」


 美羽の心臓の鼓動がドキドキと激しくなる。

なんだか、覚えていないけど、怖い気がする。


 手を掴まれて、連れて行かれた。

怖くて、逆らえないままに連れて行かれる。


 誰もいない部屋に入れられた。


(やだ、怖い)


「さあ、美羽ちゃん、こっちにおいで」


 美羽は引き攣った声をあげる。


「いやぁ」


 手が近付いてくる。

恐怖でガクガクと震えてしまう。


(触られたくないよぉ)

 

 手が美羽に触れそうになったその時、

 

「なにやってるんですの!」


 そこには、ライトブラウンに輝く髪に同じ色の瞳のレーチェルが、堂々と立っていた。

 

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