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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第5章 崩れた日常

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第119話 セセララビ侵略戦

 マーヴィカン帝国皇帝、ウォーレン・マーヴィカンは玉座の上で頭を悩ませる。


「なぜ、魔王軍が我が帝国を攻めてくるのかが全くわからぬ」


 それまで、転移ゲートなどで魔王軍の可能性に関しては疑っていたが、肝心の動機が全くわからない。

これまで、魔族とは距離もあることから完全に没交渉なのだ。

先代の皇帝からも魔族のことなど聞いたことなどない。


 それが、宣戦布告もなく攻めてきているのである。

 

「陛下、それよりも今はどう対処するかが重要でしょう」


 宰相のセルヴァン・クロウリーに嗜められる。


「そうだな。帝都騎士団長レオナード・ヴァイスハルト」

「ハッ」

「外門の防衛や外壁の防備を固めろ。港湾の防備も確実にな。

近衛騎士団長のクラークと打ち合わせて、城の防備も増やせ」

「ハッ」

「セルヴァン、街中の警備を警備兵を投入して最大警戒にしろ。港湾の警備も騎士団と手分けして守ることを忘れるな」


 すると、伝令が謁見の間に入ってきた。


「奏上いたします。勇者クドウレン様が謁見を申し出ております」


 セルヴァンが答える。


「今は忙しい。後にしてもらえ」

「それが、魔王軍に関してとか」

「陛下、如何いたしますか?」


 工藤蓮は魔族対策のためにトレハミア王国から多額の金貨と引き換えに譲り受けたのだ。

この場に招くのも道理である。


 しかし、到着したその日に御使いである美羽と皇女たちに狼藉を働いた上、小便まで漏らしていたという報告を受けている。

 

 はっきり言って、ウォーレンの蓮への評価は地に落ちている。

しかし、今は少しでも戦力が欲しいのも事実。

それが、勇者の力なら尚更である。


「よし、通せ」


 程なくして、勇者工藤蓮が謁見の間に入ってきた。


「レン殿、体調がすぐれないと聞いていたのだが、調子は如何かな?」

「皇帝陛下、聞けば魔族が攻めてきているそうじゃないですか。

魔族退治は勇者の義務。休んでなどいられません」

「おお、なんと頼もしい言葉。では、出陣をお願いしてもいいかな?」

「そのつもりで来ました。魔族も魔王も私が倒してご覧に入れましょう」

「おお。ありがたい。では、かねてより準備をしていた一隊を勇者殿に預けよう。セルヴァン」

「はい。勇者殿には独立した精鋭部隊を用意しております。

剣と魔法の混成部隊です。

 

 指揮系統は宰相直轄部隊となります。


 今後は私か陛下の指示で動くようにしてください。

 部隊名は勇者部隊でよろしいですかな」


 それを聞いて、蓮が顔を輝かせる。


「おお、僕の部隊ですか。トレハミアではそういった配慮はありませんでした。

さすがマーヴィカン帝国です」


 ウォーレンは一連のやり取りをして、違和感を感じた。

トレハミア王国第3王女ミレーヌからの報告も、皇女たちの報告も、その護衛からの報告も、空気を読めない自分勝手で粗野な性格と聞いていた。


 もちろんミレーヌからは直接的な言葉ではなく、遠回しに注意喚起をしてくる程度だったが……。

それが、会ってみるとやや世間知らずな言動もあるが、見た目も相まってなかなか爽やかな青年である。


 しかし、ミレーヌと少し話してみると彼女が聡明なのはわかるし、皇女たちも頭の回転も良く、陰口を叩く性格でもない。

護衛たちも仕事柄、多くの人を見ているのだ。皆が判断を誤ると言うのは考えづらい。


 そこまで考えていると、蓮が言葉を続けた。


「名前は紅蓮騎士団でお願いします」


 その蓮の言葉に謁見の間がどよめいた。


 マーヴィカン帝国には現在、帝国騎士団、帝都騎士団、近衛騎士団の3つの騎士団がある。

それぞれが宰相直轄の騎士団で命令系統は皇帝と宰相だけだ。


 直轄という意味では勇者部隊も同じなのだが、部隊と騎士団では格が違う。

騎士団は帝国の中核を担う立場なのである。

かなりの権力を与えられている。


 蓮は、他の3騎士団と同等の権力をよこせと言っているのだ。

しかも、他の3騎士団は騎士団長の素行が悪ければ罷免することもできるが、勇者の騎士団となっては、勇者自身を罷免することもできない。


 一人に莫大な権力を握らせるということになる。


 宰相が口を開く。


「勇者レン殿、騎士団と名前がつくことがどういうことかわかりますかな?」

「もちろんです。この国で最高峰の武力を担うということです」

「それでは、新参の勇者殿にその地位を与えることについての、こちらの懸念もわかりますな」

「わかりませんね。今、この国で魔族に対して最高の力を持つのは僕です。

僕がいなければ、魔王を倒すこともできないでしょう。

 

 僕はいわば救世主。救世主の僕よりも強い武力を持つ人がいるっておかしいでしょう。

 それともマーヴィカン帝国は僕の力に頼るのに、僕を信用しないのですか?」


 ウォーレンは、そう宣う勇者を見て、ミレーヌや皇女たちの意見が正しいと判断した。

しかし、魔王軍の力は底知れない。勇者にしか魔王に対抗できないとも言われている。

 

 その魔王が、自ら攻めてきている可能性が高い。そんな中、勇者蓮に臍を曲げられては困る。

ウォーレンは不承不承ながら、受け入れることに決めた。


「あい分かった。勇者レン殿の紅蓮騎士団の創設を認めよう」

 

 ウォーレンのその言葉に謁見の間が再びどよめいた。

だが、皇帝の決定に口出すものはいなかった。


「さすが、皇帝陛下です。必ず魔王を討ち果たして見せます」

(その時はどんな要求をしてくるのやら)


 皇帝は、勇者の増長を危惧したが、顔には出さなかった。


「それでは、勇者殿の紅蓮騎士団は中庭に集めさせますので、そちらに向かってください。

合流後、城にて待機を願います」

「打って出なくていいのですか?」

「それには間に合わないでしょう。状況を見て指示をしますので、それまでは待機を」

「打って出れないのは残念ですが、ここまで攻め込まれたら、私が守ってあげましょう」


 蓮の物言いに眉を顰める者もいるが、蓮は全く気にした様子もなく謁見の間を後にした。


 蓮が出ていった謁見の間では宰相に視線が集まる。

多くのものが蓮の態度に不満を持っているのだ。


「皆の者、気持ちはわかるが、今は目の前の魔王軍に全力で対処してくれ」


 その宰相の言葉に場がお開きとなって、皆が行動に移った。



 皇室の女性陣はティールームに集まっていた。


 ここは普段はティールームとして使われているが、非常時は皇室の待機場所となっている。

一箇所に集まる方が安全だからである。


 先ほどから、水晶に向けてクララが話しかけている。

何をしているのかと思い、クララにイザベルが聞く。


「クララ、何しているのかしら?」

「お母様、これはミウちゃんがくれたテレフォンって神具で、ミウちゃんが遠くにいても話すことができるものなんです」

「まあ、すごいわね。それで、ミウちゃんとは連絡が取れたの?」

「いえ、それが何故か全然繋がらなくて」

「まあ、そうなのね。それじゃあ、ミウちゃんが帰りに魔王軍に遭遇しないか心配ね」

「はい。逃げるように伝えたいのですが」

「なんとか繋がればミウちゃんに逃げるように言えるのね。それじゃあ、大事なことだから、時々ミウちゃんにつながるか確かめてくれるかしら。繋がったら、逃げるように言ってね」

「はい、ミウちゃんはポンテビグナからきてますので、そちらに逃げるように言っておきます」

「そこなら安心ね。ミウちゃんにつながったら、もし時間があったら、変わって欲しいのだけど、時間がなさそうだったら、伝えて欲しいの」

「なんとでしょうか?」

「ミウちゃんと血のつながりはないけど、本当の親子だと思っているわ。本当に愛してるわよ。ミウちゃんには楽しく生きて欲しいのよ。だから、必ず生き延びてねって伝えてね」

「はい。繋がったら絶対に伝えますね」


 この母娘は自分の心配よりも美羽を心配していた。



 ルッツ家は馬車で皇城に急いでいた。


「おねえさま、だいじょうぶかしら?」


 テレフォンが使えなくてミウと連絡が取れないで不安でいるレーチェルの言葉に母のジョディは答える。


「ミウちゃんなら大丈夫だと思うわよ。あの子はとても強いもの」

「でも、おねえさまは、とてもなきむしですの。きっと、オーガをみてないているとおもいますわ」


 事実だった。


「だから、もしまおうぐんとあったら、きっとないてしまいますわ。わたしがまもってあげられたらいいのですけど」

「そうね、もしミウちゃんが来たら、守ってあげましょうね」

「はい! そうですわ。もどってきたらおまもりしますわ」


 そこにカフィが口を挟む。


「ミウは僕が守るから、大丈夫だよ」

「おにいさまはなにをいっているのかしら? おにいさまは、すでにおねえさまにフラれているのですよ。もういいかげんつきまとうのはやめていただきたいですわ。それに、おねえさまをよびすてにするのはふけいですわ。」

「う、呼び捨てはいいだろ。僕たちは近い関係なんだから。それに僕は貴族なんだぞ。ミウは平民だ。当たり前じゃないか。」

「おにいさまは、いつからそんなにきぞくかぜをふかせるようになったんですの? それにおねえさまはみつかいさまなのですよ。いったいだれがおねえさまを、へいみんあつかいするようにいったのですか? だれかにたぶらかされたのですよね」


 レーチェルは正確にカフィの性格を読んで、たぶらかされていると言い当てた。


「た、たぶらかされてなんかいない! カイランはそんなことしない!」

「カイランっていうのですね。おにいさま、わるいことはいいませんから、そのひととはきょりをおいたほうがいいですわ。そういうひととつきあっていると、あとでとりかえしのつかないことになりますわ」

「だから、カイランは悪い奴なんかじゃない! 僕の相談に親身にのってくれるいいやつなんだ」

「それで、おねえさまをへいみんといわされたり、ことわられているのに、つきまとったりしているのですね。

 かんぜんにたぶらかされてますわ。そのカイランとやらはなにをかんがえているのかわかりませんわ」

「レーチェル! いい加減にしろ!」

「なんですの? ほんとうのことをいわれて、おこりましたの?」

「はーい、ストップ。カフィ、頭冷やしなさい。私も御使い様を呼び捨てにするのは不敬だと思うわよ」

「お母様まで……はい」

「レーチェルもミウちゃんの悪口言われたら嫌でしょ」

「わるぐちじゃなくて、ほんとうのことですわ。でも、わかりましたわ」

「ほら、もう着くから、二人とも大人しくするのよ」

「「はい」」





 魔王軍本陣。

 

「魔王様」

「準備ができたか?」

「はい、陣形が整いました。人間どもは気づいていないでしょうが、彼のお方の結界も帝都全体に張られていますので、もはや逃げることは叶いません。もちろん神気も通らないので、女神にも伝わりませんし、オーガ討伐にいった御使いも気が付かないでしょう。


 御使いが来ても、治癒などの神気術の多くが結界によって使えなくなるそうです。

女神の御使いも恐るるに足りないでしょう。


 それでは、進軍の号令をお願いします」

「うむ」


 魔王ガルヴォートは立ち上がり、天が割れるような大声で全軍に向けて鼓舞をした。


「聞け! 時は満ちた。今こそ、積年の恨みを晴らすときだ。かくゆう我も、我の目の前で母を凌辱されて殺され、父もなぶり殺しにあった。皆の中には同じような目にあった者もいるだろう。我ら魔族を目の敵にしているのが人間だからだ。

 このまま放っておけば、再び我ら魔族は男はなぶり殺され、女は凌辱されて殺されるだろう。


 我は、それをよしとしない。ここにいる者たちも同じ考えだろう。違うか!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「そうだーーーーー」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 魔王ガルヴォートは、熱が十分に伝わるまで、時間をあけた。


「そうだ! 我らは我らのために同胞や家族、恋人のために復讐をし、人間を滅ぼし、2度と我らのようなものを出さないようにするのだ。今日はそのための第一歩だ! 汝らはそのための礎になる。その覚悟はあるかーーーーー」

 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ウォォォォォォォォォォォ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「全軍、進めー」


 かくして、後にセセララビ侵略戦と呼ばれる戦いが始まったのだった。


 

 ーーーーーーーーーーー同時刻の美羽ーーーーーーーーーーーーー


 オーガ戦を前にした、休憩の一時。

 

「お腹すいたね。きんちゃん」

「はっ、ミウ様、朝食をとっていないですね」

「そうだね。食べる時間なかったから」

「それはいけません。きちんと食べなければ!」

「うん! 食べるね。いいのがあるんだ」


 美羽は収納リングから、テーブルと椅子とパラソルを取り出した。


 それから、皇城の料理長に焼いてもらっておいたベーグルを取り出す。

収納リングに入れてあったから、まだ焼きたてだ。


 ベーグルにこれまた焼きたてのチキンを挟み、チキンにレモン汁を絞る。そしてスライスしたアボカドとレタスを挟んだ。


「できた! チキンとアボカドのベーグル! そして、スープはオニオンコンソメにコーンとかき玉を入れたスープ。

完璧!」


 美羽がドヤ顔で言った。

 

「おお、素晴らしいです。美羽様。きちんと食事をしていただければ、ホッとします」

「キャハハ、きんちゃんはもう。おかんか!」

「ふふふ、さあ、美羽様、冷めないうちに食べてください」

「はーい、いただきまーす」


 ガブッ。


 ベーグルを両手に掴みひと齧り。

 

 カリッとした食感とモチッとした食感が合わさったベーグルの内側には、ジューシーな鶏肉の旨みとアボカドの濃厚だが、さっぱりした味わい、レタスのシャキッとした歯応えを一度に味わうことができた。

レタスの酸味が効いて、食べるのをやめられなくなる。


「うーん、おいしーーーーー」


 美羽はベーグルを持ち上げて、思わず叫んでしまう。


 周りでは、ベーグルの香りに釣られて、冒険者たちが羨ましそうに見ているが、気にしない。子供だし。


 コンソメオニオンスープを飲んでみると、コンソメの旨みに玉ねぎの甘みコーンのつぶつぶとした食感、ヒラヒラしたドレスのような卵のコクが加わって、これもとても美味しい。


「これも、美味しいー。黒胡椒が入っているところがまたピリッとしていいよね」


 美羽はあっという間に食べてしまった。


 終始、冒険者たちは羨ましそうに見ていたが、美羽は何食わぬ顔でルッツ家のメイドのサシャにもらった、コリルフラワーのハーブティーを楽しんでいた。


「なんか、美味しい朝ごはんを食べると、いい1日が始まる気がするよねぇ」

「そうですね、美羽様。素敵な1日になりそうですね」

「ねー」


 これからオーガ討伐が始まるのであった。

 

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