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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第5章 崩れた日常

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第118話 最大警戒警報

 美羽が、騎士団、冒険者、傭兵の全員の怪我を治すと、ガルドとロイドがお礼を言いにやってきた。


 「ミウ様、今回の遠征では本当に助けられました。

 怪我どころかオーガの討伐までしていただいてしまって。

 なんと言っていいやら」

「うふふ、ガルドは私の身の安全を保証するって約束だったものね」

「そう言われると、申し開きのしようがありません」

「いいよ。気にしないで。元々、来るって決めてた時から、こうなるかなってことは予想していたんだよ」

「壊滅状態になることを予想されていたのですか?」

「ううん、ここまでになるとは思わなかったけど、勝てるとも思ってなかったから。

まあ、ただの予感だけどね。私の予感は当たるの」

「そうでしたか。しかし、ミウ様のおかげで、一度は壊滅したものの、オーガを全滅させて、重傷者まで完全に回復させていただいて。それに死者が少なかったのも、ミウ様の身体強化のおかげということも伺っております」

「うん、身体強化で死なないようにはしていたんだけど、みんな体のどっかが無くなってて怖かったよぉ」

「ははは、ミウ様はいまだ5歳ですからな。あの光景は辛いでしょうね」

「……でも、死んじゃった人もいるんだよね」


 美羽が少し、暗い声で言う。

ガルドは美羽の心情を察して、務めて明るい声で返した。


「ミウ様。ここは戦場です。戦場では生き死にもあるものなのです。

特に今回の戦は本来なら死者数はとんでもない数字になっていたでしょう。

しかし、ミウ様のおかげで、死者数はわずかでした。

これは奇跡と言っていい結果だったのです。


 ミウ様は今回の我々の誇りです。

 

 死者のためにも生者のためにも胸を張っていただけませんか?

それが、死者を弔うことになるとも思います」


「……うん、そうだね」

(私の知識でも、戦争は人がなくなるって普通にあるし、そこに私が暗くなる意味なんかないのはわかってる。

……でもなぁ)


 わかっていることと割り切ることは違う。

 美羽は胸にある苦いものを飲み込んで薄く笑った。


 ガルドと話していると、ロイドが話にはいってきた。


「御使い様! この度は軍を救っていただくだけでなく、ミウ様を見捨てた私の命まで救っていただいて、ありがとうございました。そして、申し訳ありませんでした」

「ロイド……逃げちゃったもんね」

「はい、恥ずかしながら」

「でも、ああいう行動も人間だからね」

「しかしながら、私は騎士団の人間として、この借りは必ず返すことを……」

「ふふふ、私に騎士団のことは関係ないよ。怖いものは怖いでしょ。オーガ部隊、あれは怖かったよ」

「御使い様……」

「最初から期待していたわけじゃないんだから、気にしないでいいよ」

「期待していないと言われると、心底情けないのですが、今度こそ誓います。

 御使い様に何かあった時は、必ずお力になります。これは特務中隊全体の想いです」

「ええー……ありがとう。じゃあ、期待してるね」

「はい、必ずご期待に添えるようにして見せます」


 そのあと、ガルドとロイドから状況の報告を受けた。

死者は38名で負傷者は美羽の治癒のおかげで0名ということだった。


「さあ、きんちゃん。私たちは、一足先に帰らせてもらおうか。

 クララやレーチェルにお母さんに早く会いたいわ。!?」


 そこまで言った美羽の脳裏に警鐘がなった。

いつも何かある時は、もう少しはっきりと感じたり視えたりするのだが、それはない。

ただの悪い予感と言ったものだけだ。


 なぜ、何も視えないのか、それが逆に不気味である。


「どうしたのですか? 美羽様」

「なんか、悪い予感がするの。何かは全くわからないんだけど、早く戻ったほうがいいって」

「それでは、すぐに行きましょう」


 きんちゃんは美羽の予感を全く疑わない。美羽の勘を全面的に信頼しているからだ。


 ガルドとロイドが心配そうに見ている。


「何があったかわからないけど、私は早く行かないといけないの」

「そうですか。護衛をしたいところですが、逆に足手纏いになりますね。お気をつけて」

「あ、そうだ。治癒は一人銀貨1枚でいいからね」

「はは、ミウ様はぶれませんな」

「お金は大事だよ」

「そうですな」


 そういうと、美羽は御使いモードになった。

桜色の翼が広がり、周囲に桜色の羽が舞う。

 

 飛んでいくつもりなのだ。


「ぶっつけ本番だけど……あ、きんちゃんついてこれる?」

「問題ありません」

「じゃあ、いくよ」


 そういうと、美羽は帝都の方角の空に向かって、羽ばたくと、浮き上がり、それと同時にすごい勢いで飛び出した。


「キャーーーーーーー!」


 バキン。バキバキバキ……。


 飛び出した方角の大木の上の方の幹にぶつかり、その部分から幹が折れる。

美羽折れた木の上で頭を押さえているが、頭を振りもう一度浮き上がった。


 そして、またしても勢いよく飛び出し、そのまま遠くに消えていった。


「ミウ様……大丈夫だろうか」

「御使い様なら大丈夫だろう」


 残されたガルドとロイドはそう話した。




 美羽が御使いモードで戦場を飛び出すより数時間前、帝都。


「ローガン門将、今日も暇ですね」

「だからと言って気を抜くなよ。我々は帝都を守る大切な任務があるんだからな」


 門将ローガンは部下と外門の上に登り、周囲の警戒をしていた。

しかし、毎日やっていることだが、変わり映えがしない。

 

「わかってますよぉー。ただ、ぼやきたくなることもあるじゃないですか」

「今日の勤務終わりには、久しぶりに飲みに連れて行ってやるから、集中しろ」

「おお、やった! やる気が出てきたぞー」

「ああ、きっちり仕事しろよ」

「了解! 『視力強化』遠方に敵影なーし、え? あれ?」


 お調子者の部下がローガンに奢ってもらえることを喜んで、視覚強化魔法を使って、遠くの森の切れ目あたりを見ると、無数の魔物がいた。


 部下の唖然とした様子を不審に思ったローガンは、あえて軽口で問いただす。


「どうしたんだ。美女でもいたか?」

「ま、魔物です。それもかなり大量に……」

「なに!? 『視力強化』」


 ローガンも視力強化で遠くを見てみると、無数の魔物がいた。しかし、それだけではなかった。


「最悪だ……」

「あんなに魔物が来るなんて最悪ですね」

「いや、問題は魔物ではない。中央の辺りをよく見てみろ」


 部下が言われたあたりを見てみると、大小様々な人間の形をしているものが見えた。


 ちょうど中央あたりには、大きな竜車の上に据えられた玉座に座った、捩れたツノを持つ異様な迫力の大男が座っている。


「な、なんですか! あれは。あれではまるで」

「ああ……あれはおそらく魔王軍で、玉座に座る男は魔王だろう」

「な、なんで魔王軍が帝国に……帝国から魔王国は遠いって聞いていますよ」

「ああ、だが数ヶ月前にポンテビグナの山奥に転移ゲートが発見されている。

あれは、このためのテストだったのかもしれない」

「ど、どうすればいいですか?」

「非常警戒花火を打て。外門兵の主だったものを今すぐここに集めろ。対策を話す。それから外門は封鎖する。入都検査は門の内側でしろ。ただし、手は抜くな。間者が混じっているかもしれない。いけ!」

「はっ!」


 先程までおどけたり、怯えたりしていた部下が指示を受けたことにより、顔を引き締めて行動を始めた。


 主だった者はすぐに集まり、ローガンの説明を受けた。

ローガンは魔王軍の可能性や、これからの行動などを説明し、最初にする行動を再度説明した。


「まず魔法花火を上げろ。最大警戒用だ。 そして警鐘をならせ。これも最大警戒用だ。城には魔導通話装置で報告しろ。

 非常呼集をかけろということを忘れるな。外門にはできるだけ兵を送るように言ってくれ! 

 全て門将通達だ。よし、すぐに動け」

 「「「「「「「「「「ハッ」」」」」」」」」」


 一人になったローガンは、もう一度魔王軍と思しき軍団を見てみる。

今は隊列を整えるために止まっているようだ。

しかし、すぐに動き出すだろう。

 

「長い1日になりそうだ。妻や娘にもう一度会えるだろうか。

 ……娘と言ったら、ミウ様はオーガ討伐に行っていないんだったな」


 ローガンは、美羽の屈託のない笑顔を思い出す。美羽に対して、なかなかの執着心であるが、本人はそれに気がついていない。


 程なくして、魔法花火が上がり、警鐘の音が帝都に鳴り響いた。

 

 


 魔法花火と警鐘が鳴る数分前。


「いつまで、そうしているんですか? 勇者蓮様」

「僕は恥をかいたんだ。ほっといてくれよ。ミレーヌ」


 ベッドの上で布団にくるまる勇者工藤蓮と、トレハミア王国第3王女ミレーヌ・トレハミアだった。

 二日前に帝都についてから、ベッドから出てこなくなってしまった蓮を、皇帝に謁見させなければならないミレーヌが連れ出そうとしている。

 

「まったく、帝都についた途端にいなくなったと思ったら、御使い様に会いに行っていたなんて。

そんな失礼なことをするからです。しかも結婚まで申し込んで断られた挙句、目の治癒を依頼して、治癒の痛みで絶叫した上、失禁するなんて」


 無理やりキスされた件で、心底蓮を軽蔑しているミレーヌの言葉は辛辣だ。

アメリアの侍女から経緯を聞いた時は、胸が空く思いだったのだが、今はいじけている勇者が心底鬱陶しい。


「ああー、それを言うなー。どんなに綺麗な女の子でも惚れさせるこの僕が、漏らしてしまうなんて……。

しかもそれを皇女姉妹に見られていたなんて。どんな顔して会えばいいんだよ」

「そんなことを言っても、今日は謁見でその皇女様方ともお会いになるんですよ」

「謁見はしない! 皇帝には来た時に会ってるからもういいだろ」

「そうはいきません。先日は顔合わせだけだったのです。今回は正式な魔族対応の依頼になります」

「そんなところに行ったら大恥だ……いや、ミレーヌ。君、今なんて言った?」

「ですから魔族対応の依頼です」


 蓮が布団から飛び出した。


「きゃ」


 驚いて、ミレーヌが声を上げるが、蓮は気にしない。


「そうだよ、魔族を退治すればいいんだよ。僕がかっこいいところを見せれば、漏らした件なんて帳消しだろう?」

「はあ……」

「そうだ、謁見したら、姉妹たちに会ってしまうなら、謁見をしないで、先に魔族退治をしよう。

それから、姉妹に会えばいいんだよ」


 ミレーヌは、呆れた目で言った。


「その魔族はどこにいるんですか? まだ、魔族かどうかもわからないと伺っています。

いるかどうかもわからない魔族をどうやって倒すんですか? それに謁見は必ずしてください」

「うう、謁見をしないといけないなんて、なんて面倒なんだ」

(面倒なのはあなたよ)

 

 ミレーヌは蓮の思考の幼稚さにうんざりする。


「そうだ! 魔族でなくてもこの国で何か大きな問題を解決すればいいんだ」

「いい加減にしてください! そんな問題が都合よく起こるわけが……」


 ミレーヌが、我慢の限界とばかりに声を張り上げている途中で異変が起きた。


 ヒュルルルルルルル……ドカーーーン。


 カンカンカンカン!


 侍女が部屋に飛び込んできた。


「最大警戒警報です!」


 大きな問題が都合よく起きた。


 それを聞いた蓮がニヤリと笑った。



 

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