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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第5章 崩れた日常

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第117話 ハイオーガ

「なに、これ?」

「ウガアアア」

「ゴアアアア」


 美羽が、治癒本部まで戻ると、20体のハイオーガがオーガの盾100枚に押し囲まれて、呻いている。

全方位から盾に強力に押し込まれているから、逃げられないようだ。


 美羽に気付いたハイオーガ達は怒りの形相で一斉に美羽を見る。


「ひっ」


 美羽の口から悲鳴が漏れた。

やはり、ブラックオーガを倒したといっても、『御使いモード』で倒しているのだ。

御使いモードを解いた今の美羽ではハイオーガは怖い。


「美羽様ー、ブラックオーガを単独討伐したのですね。おめでとうございます」

「きんちゃーん、これ何ー、怖いんだけどー」


 すると、きんちゃんは金魚ちょうちんの体をクルンと回し、誇らしげに言った。


「美羽様の刀の練習のために、捕まえておきました!」


 きんちゃんの目は期待で輝いている。

これは、犬が褒めて褒めてっていう目と同じだ。ブルハウンド達がそうだった。


「あ、ほんと。あ、ありがとうね、きんちゃん」


 美羽はきんちゃんの頭を撫でる。

きんちゃんは嬉しそうに身を捩った。


(え? この流れって、やっぱり私がハイオーガを斬るんだよね。怖いよー)


 ハイオーガの恐ろしさは、ブラックオーガほどではないが、いかつい顔に口から生えた鋭い牙、額にあるツノ、4メートルはある体の大きさ、筋骨隆々の肉体。

かなり恐ろしい。


「さあ、美羽様。ハイオーガを神刀コザクラで斬ってやってください」

「え、ええ〜」


 美羽が戸惑う。

それを見たきんちゃんが不思議な顔をして言った。


「もしかして、美羽様。ハイオーガを斬るのはやりたくなかったですか?

 ハッ、私が勝手に余計な気を回しただけなのでは。

 美羽様のことでわからないなんて、なんたる不覚。美羽様の従魔失格です」


 きんちゃんが見るからにしょげてしまった。

美羽はこれはいけないと思ってきんちゃんを励まそうとする。

でも、今回は本当にきんちゃんが余計な気を回しただけだから、フォローはどうしても決まりきっていて、


「そんなことないよ。私ね、ブラックオーガも斬ったんだよ。

 もう少し斬った方がいいし、きんちゃんはナイスアシストだよ。

 ありがとうね」

 

 と、言うしかなかった。

きんちゃんは再び目を輝かした。


「おお、やはりそうでしたか。私が美羽様のことで間違えることなどあり得ませんからね」


 きんちゃんがすごく嬉しそうに言う。


 美羽は後に引けなくなってしまった。


(間違ってるよー、きんちゃーん)


「それでは、美羽様。このまま斬りますか? それとも盾を解除して、戦いますか? それとも、魔法で一発で滅しますか? あ、しかし魔法は威力が強すぎて危険ですね。それでは女神の手で握りつぶしますか?」


(えーん、どれもやだよー)


 しかし、本当には泣くことができない。

仕方ないので、ハイオーガの方に歩いて行く。


 ハイオーガと目が合う。


「グオオオオオ!」

(ヒイイイイイイイ)


 ハイオーガに威嚇されて、縮み上がる美羽。


(怖い怖い怖い……そうだ、忘れてた)


 『御使いモード』


 美羽が御使いモードと口にすると、美羽から桜色の光が溢れ出し、背中に桜色の翼が生え、あたりに桜色の羽が漂う。

溢れ出す神気で桜色の髪は輝きながらなびき、桜色の瞳は一層美しく輝く。


 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おおー、天使様だ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 周りにいた治癒士、冒険者、騎士達も感動している。


「美羽様、これが女神様に教わったという、新しい神気の使い方でしょうか?」

「そうだよ。怖がりの私にフィーナちゃんが作ってくれたの。これをすれば怖いのがなくなるんだよ。

他にも色々効果があるんだけどね。それで……似合う?」

「ええ、美羽様、とってもお綺麗です。普段から絶世の美少女ですが、今はすでに神の領域に入っています」

「えへへ、嬉しいけど、言い過ぎだよ。きんちゃん」

「言い過ぎなんてとんでもないですよ。美羽様の美しさは神がかっています」

「えへへ、ありがと。照れちゃうな〜。あ、そうだ、オーガね」


 美羽が、左目の下の桜の花びらをぺりっと剥がすと、一瞬で刀に変わった。


 そして、それは天に向かって伸び、20メートルほどの長さになった。

オーガに向かって言う。


「神刀コザクラよ。ハイオーガ達、これでまとめて首を斬ってあげ、あげ、……あげてもいいんだけど、何? その態度」


 ハイオーガ達は全員項垂れていた。


 ハイオーガ達は御使いモードを見た瞬間、悟ったのだ。

自分たちは死から逃れようもないと言うことを。


「ちょっと、さっきみたいに威嚇してきてよ」

「グルル……」

「あなた達は散々暴れたんでしょ」

「グル……」

「これからも人間を傷つけるつもりなんでしょ」

「グ……」


 ハイオーガはすっかり萎れてしまった。

 

 美羽は天を仰いで絶叫した。


「ああ、もう! これじゃあ斬れないよーーーーー」


 きんちゃんがやって来た。


「美羽様、どうされますか? お優しい美羽様では、この態度のハイオーガを殺すことはできないでしょう。

私が殺しておきますか?」

(もう、最初からきんちゃんがやってくれればよかったんだよー)


 美羽はジト目できんちゃんを見るが、きんちゃんは「?」と言う顔をして、わかっていない。

 

「もういいよ。ハイオーガに桜塵の誓いをかける」


 桜塵の誓いは、人身売買をしていたゴルディアック商会の人間にかけた神呪だ。

悪いことをしたら、全身が桜の花びらになって、消え去ってしまう。


「美羽様がそれでよろしいなら、従います」


 きんちゃんも美羽の意見を尊重する。

美羽がハイオーガに向かって言う。


「話がわからなくてもなんとなくは感じるんでしょ。聞きなさい。

今から神呪をあなた達にかけるわ。

 

 これをかけられたら、悪いことはできない。身を守る時と生きるための時以外は戦えないわ。

もし残虐なことをしたら、桜の花びらになって消えてしまう。


 だから、選ばせてあげる。今ここで私に切られて死ぬか、この神呪桜塵の誓いを受けて、残虐なことから離れた魔物生を送るか。どっちにする?」


「グルル」


「そう。分かったわ。それじゃあ、全員桜塵の誓いをかけるわ」


 美羽の翼がバサリと一つ羽ばたいた。


 すると、大量の桜の花びらが現れて、周囲一帯を埋め尽くすほど舞い回る。

息ができなくなるかと、感じてしまうほど、桜の花びらが陽の光を反射しながら舞っていく。


 それらは全てハイオーガ達に降り注ぎ、ハイオーガたちが見えないほどの密度で包み込んだ。

そして、それはハイオーガ達に吸収されて行くように体に染み込んでいき、やがて消えた。


 ハイオーガ達の左胸には、桜色の花びらがついていた。


 「神呪はなったわ。もうこれで、あなた達はこれまでのような残虐なことはできない。する気も起きないだろうけどね」


 そういうと、きんちゃんがハイオーガを抑えていた盾を収納魔法に回収した。


 ハイオーガ達が一斉に膝をつく。


「前よりも言葉を理解できるようにはなっているはず。だから、聞きなさい。

これからは悪さをしていない人たちを襲ってはいけない。

 

 悪いことをしている人たちはいいわ。今念話で送ったイメージのようなことをしている人たちよ。

 

 困っている人がいたら、助けてあげなさい。でも、驚かせないように。


 あなた達は、見た目がすごく恐ろしいのだから。


 普段は森で暮らしていなさい。生きるための殺生はいいわ。


 でも、人間はダメよ。あなた達が討伐対象になるわ。


 あと、今イメージを送った人たちは最優先で守ってね。

クララたちよ。


 いいかしら? そうだ、えへへ。私も守ってね」


 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「グルル」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 美羽は念話で、イメージを送りながら話した。

ハイオーガ達は神呪をかけた時に理解力を少しあげたから、スムーズに話が進んだ。

ついでに、美羽が守りたい人を守るようにお願いしておいた。



「オガタロ、あなたがこのハイオーガ達のリーダーよ。オガジロが副リーダーよ。

 集落を作って、秩序を守って暮らしなさい」


 美羽は南極のあの物語の犬の兄弟の名前にオガをつけてオガタロ、オガジロとし、以降オガとロをつけて、オガサブロ、オガシロ、オガゴロと続けて、オガニジュウロまでつけた。

 

 ブルハウンドの時と同様の手抜きである。

オガジュウシチロなどは言いにくいのに、気にしない美羽であった。 

実はメスのオーガも混じっていたのだが、それにもやはり気にしないでつけた、美羽だった。


「じゃあ、お前達も仲良く楽しく暮らすようにね」

「オガオガ」

 

 話が済んだら、ハイオーガ達に森に行くように指示を出した。


 ハイオーガ達はすっかり美羽に懐いてしまったので、名残惜しそうだったが、おとなしく森に向かって行った。


 ちなみに、「オガオガ」と言っていたのは、美羽が「グルルとかガアアとか怖いからやだ。オガって言って」と言ったから、ハイオーガ達は「オガオガ」言うようになったのだった。


 オーガ達が去っていった方を見ながら、美羽はドヤ顔になった。


「これにて一見落ちゃ……いやーーーー、来ないでーーーーー」


 美羽が名奉行の真似をしようと振り返ったら、いまだに治癒されていない、千数百人もの手足がちぎれたり、ハラワタが飛び出したり、上下の体が泣き別れになっている者達が、よろよろと近寄って来ていた。


 絶望的な数のゾンビに囲まれるアレである。


 「アーーーーーン、もうやだーーーーーーー」

 

 美羽はあまりの恐ろしさに泣き出してしまった。

 

 それにしても美羽の身体強化のおかげとはいえ、よく生きているものである。


 この後、御使いモードになった美羽が、女神の手を駆使して、ちぎれた手足や下半身をパズルのように組み立てながら、治癒をしていった。

美羽の治癒は欠損を生やすこともできるが、それだと残った部分が怖いから、手間だが残らずくっつけたのだった。


 そのあと、膝を抱えて拗ねている美羽に治癒士のコリンが声をかける。

 

「大丈夫ですか? 御使い様?」

「もうやだ。もう、オーガも、バラバラ人間もやだーーーーー!」


 美羽の心の叫びだった。

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