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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第5章 崩れた日常

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第115話 きんちゃん圧倒的

 美羽が、ブラックオーガを『女神の手』で投げる少し前、治癒本部。


「御使い様、お逃げください。オーガが迫ってきています!」


 コリンが血相を変えて天幕の中に入って来て、言った。


「オーガ? 来たの? 怖いなぁ」

「言ってる場合じゃありません。すぐ逃げないと危険です」


 ともすると、美羽の呑気な返しにコリンが焦れながら言う。


「じゃあ、とりあえず外に出よう」


 外に出ると、肩車したオーガが円形に走りながら、騎士たちを跳ね飛ばし、切り刻みながら、近寄ってくる。


「何あれ! 怖っ!」

「御使い様は本部の人が騎馬で助けに来てくれるはずです。それに乗って逃げてください」


 美羽が本部の方を見ると、確かにロイドたちが馬に乗り込んだ。


 そして、美羽たちがいる治癒本部とは別の方に走り始めた。


「助けに来てくれないみたいだよ」

「なっ! いざという時には御使い様を最優先でお守りするように、上からも通達が来ているって聞いていたのに」

「ロイドはやっぱり裏切ったか……そういう人っているよね」

 

 美羽は、ロイドがそう言う人間だと思っていたから、別に驚かない。

対してコリンは申し訳なさそうだ。


「申し訳ありません。御使い様。巻き込んでしまったのに、お助けすることもできないなんて」 

「大丈夫だよ。オーガは怖いけど、なんとかなるはずだから」

「なんとか……ですか?」

 

 美羽は、すでにオーガの方を見ている。

 

 オーガの円のそばにいた、一際大きいハイオーガとさらに大きいブラックオーガのうち、ブラックオーガが、何事かハイオーガに指示をして、当のブラックオーガは逃げ去ったロイドの方に走り始めた。


「きんちゃん、あれって」

「はい、逃げたロイド達をブラックオーガが追い始めたようです。

 どうやら、今回はこの戦場のものを誰一人残さずに殺すつもりのようですね」

「このままだと、ロイドは助からないね」

「自業自得かと。それに、あの者が美羽様を裏切ったのは2度目です。このまま放っておけばいいでしょう」

「うーん、勘だけど、ロイドは助けておいた方がいいみたいなんだよね」

「……そうですか。それなら勘の通り動いた方がいいでしょうね。

 それでは不本意ですが、助けにいきましょうか」

「ううん、私だけ行ってくるよ。きんちゃんは、あのクルクル回ってるオーガを処分しておいて」

「大丈夫でしょうか? 美羽様、ブラックオーガはかなり怖いですよ」

「うん、この間神界に行った時に、フィーナちゃんに伝えられた神気の使い方があったの。

試してないけど、それを使えばトラウマもなんとかなるはず」

「そうですか……」


 きんちゃんはまだ心配そうで、金魚ちょうちんの体を捻って考える。


「大丈夫だってば。きんちゃん。行ってくるよ。ここはよろしくね」

「あっ、美羽様ー」


 美羽が駆け出していってしまった。

美羽に忠実なきんちゃんは、言われてしまった以上、美羽を信じて言われたことを実行しなければならない。


 デスサークルがすぐそばまで近づいて来ている。


「逃げろー」


 治癒士の一人が叫んだことで、全体が逃げようとしたが、すでにハイオーガが周囲を取り囲んで逃げることができなかった。


 逃げ道にハイオーガ、そして迫り来るオーガの殺人的な円運動。治癒士を含む90人ほどの後方支援達が絶望に顔を歪ませた時、自分たちとデスサークルの間の空中に無数の剣や斧や岩が現れた。


 全て、デスサークルに向いている。


 オーガは盾を構えて円運動のまま突き進んでくる。


「知能がある動きをしても、所詮は魔物だな。危険を感知する能力はないようだ。

でもそうだな。回ってくれているおかげで手間が省けるぞ。『行け』」


 きんちゃんが言うと、肩車の上の位置の一カ所を狙って、剣や斧や岩が高速で殺到する。

 

 一カ所に一度に殺到して来たために、オーガの盾でも防ぎきれずに、オーガが爆散する。

そして、次から次へとオーガがその位置に円で回ってくる。来たオーガは逃げることも叶わずに次々と爆散していく。

 

 そして、一周する頃には肩車の上に乗ったオーガは全員いなくなっていた。

それでも、オーガは命令が走り続けることだったから止まれずに、回っている。


 きんちゃんは次に、走っているオーガに狙いを定めて、武器を大量に射出していった。

 

 オーガの動きは早いために、あっという間に外の円は一体もいない状態になった。


 ここまでの異変になれば、さすがにオーガもわかる。


 内側の円は足を止めて、密集しようとした。


 しかし、遅かった。


 きんちゃんは爆散したオーガ達が使っていた大剣や盾まで浮遊魔法で取り込み、オーガを全方向、包囲した。


 オーガ達が困惑を顔に浮かべる。


「死ね」


 きんちゃんの一言と同時に、様々な武器が高速で射出された。


 全方位から来られては、オーガの盾も役に立たずにオーガは残らず爆散した。


 ハイオーガ達は一瞬にして無くなってしまった、デスサークルに困惑したが、とりあえず目の前の人間を倒すことにしたらしい。


 一体のハイオーガが近くの治癒士に向かって大剣を振りおろす。


「うわああああああ」


 ガキーン……。


 きんちゃんの操る、オーガの持っていた盾が、大剣を防いだ。


 ハイオーガは目を疑った。


 いかにオーガの盾が強靭でも、ハイオーガの膂力を防ぐのは不可能なはずだ。

それが現実に防げてしまっている。


「ウガアアアアア」


 そのハイオーガが他のハイオーガにも呼びかけた。


 すると、ハイオーガ20体全員で、治癒士を狙って、大剣を振り下ろした。


 ガガガガガガガガキーン。


 耳障りの悪い音がそこらじゅうで起こるが、どの個体の大剣も治癒士には届いていなかった。


 なぜなら、ハイオーガ達の目の前には、ずらりとオーガ100体分の盾が並んでいたからだ。

きんちゃんが並べたのだ。

 

「ハイオーガども。私は美羽様に円のオーガをなんとかしろとしか言われていない。

美羽様はお前達を経験のために斬るつもりなのだろう。すこし待っていろ」


 きんちゃんがそう言うと、ハイオーガの前にあった盾がオーガ達を包囲し狭まっていった。

ハイオーガは盾を斬りつたり殴ったりしてみるがびくともせずに、押し込まれて、一塊にされてしまった。

 外側をオーガの100枚の盾が所狭しと押し込んできて、全く身動きがとれない。


 美羽に忠実なきんちゃんは、このまま、美羽が戻ってくるまで待つつもりだ。


 ……きんちゃんは、美羽の気持ちを汲み取ったつもりで、ハイオーガを残しておいたが、美羽としては残して欲しいとは全く思っていなかった。ただ、倒すように言い忘れてしまっただけである。


 なぜなら、美羽はスプラッタな場面を自分で起こしたいとは思っていない。吐いてしまうから。


 きんちゃんの仕事をした感のある表情が痛い……。


 

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