教授と山田電機 VS スフィンクス①
すると、前方に・・・ついにスフィンクスと観月様の姿が見えてきた。マムシの黒猫たちはまだ十数匹ほど残っている。ちょうど観月様たちは四条大橋の土手を登ってた。四条大橋から知恩院までは、そう遠くない。
「追いつくぞ」
京極様の言葉にカオマニーたちはさらに走る速度をあげた。徐々に四条大橋が大きく見えてくる。
すると一匹の猫の姿を前方に捉えた。徐々にその姿が大きくなってくる。その猫はじっと僕たちのことを待っていた。耳が異様に大きく身体は痩せている。丸みのあるくさび形の頭、幅広の大きな耳、少しつり上がった目、ムチのように先端に向けて細くなるしっぽ。
・・・スフィンクスだ。
「面倒な奴が、まだ残っていたか」
京極様が呟いた。同時にカオマニーの四兄弟が今まで以上に速く駆けた。四兄弟は徐々に横に広がって、並んで走っていく。恐らく、同時に襲いかかり、スフィンクスを仕留めるためだ。しかし、スフィンクスはその場に留まったままだった。狙いは明らかだった。
京極様だ。スフィンクスはカオマニーたちの一つ、二つ、三つ、四つの爪を難なくかわして、逆に京極様に爪をつきたてた。京極様も、走りながらそれを見切って、スフィンクスの攻撃は空振りに終わる。
たった数秒の間に、凄まじい攻防が行われている。このまま、抜けられるか・・・と思いきや、すぐにスフィンクスは後方から追ってきた。前方を走るカオマニーたちは、すぐに後方に向かってスフィンクスに対応した。
それでも、カオマニーの四匹だけでは、スフィンクスの相手が出来ない。カオマニーの爪をスフィンクスは次々とかわしていく。
逆にスフィンクスの爪がカオマニーたちを徐々に削り、再び、京極様に狙いを定めようと後方を走っていた。
「・・・しつこいな」
京極様は苛立っていた。僕たちはスフィンクスのせいで、明らかに足止めを喰らっている。こうしている間にも観月様は知恩院に向かっている。
その時、教授が声をあげた。
「私が対応します」
「・・・無理するな」
京極様がすぐに教授を制した。
「策はあります。山田電機君と共になら」
僕は走りながらも、思わず、口をあけて唖然としてしまった。教授、あなたは、いきなり何を言い出すのですか?
しかし、教授は毅然として言い切った。
「・・・五郎丸殿、外資系殿、雲龍殿、オロチ殿。勇敢な猫たちがここまで道をつくってくれた」
京極様はじっと教授のことを見ていた。
「・・・私とて京都の猫。京極様の力になりたいのです」
「本気、と受け取っていいのだな」
「もちろんです」
「だったら、私も」
走りながら、花音は声を上げた。
「花音殿は京極様と共に。カオマニー殿たちと京極様をお守りした方がいい」
教授の言葉には迷いがなかった。今度は教授は僕の方をじっと見てきた。
「すまないな、山田電機君」
教授は僕のことをじっと見続けた。
「君とじゃないと、出来ない策なのだ」
何となく教授の言いたいことは分かった。
恐らく僕じゃないと出来ない。
・・・そうか、そういうことか。
僕は教授に向かって頷いた。
「恩に着るぞ。観音町の猫・・・いや、教授と山田電機」
京極様の言葉が合図かのように、カオマニーは徐々にスフィンクスから離れていく。
再びカオマニーは先頭に立ち、観月様を追う体勢に入った。京極様、花音はいっきに走る速度をあげていく。




