七条大橋
こうして僕たちは何とかして鴨川の対岸へと渡った。前方を走る徳川家の猫たちと少しずつ距離が詰まってくる。
具体的にどの猫がいるのか分からず、そこに観月様がいるかどうかも定かではなかった。
「嫌な奴らが来そうですね」
雲龍殿はどこか遠くを見て呟いた。
どういうことか、と思ったがすぐにその意味が分かった。七条大橋に近づくにつれて、とある猫たちが前方の集団に合流したのだ。
よく見ると、これまで散々苦しめられた猫たちだ。ボンベイ、エルフキャット、メインクーンが集団の中に含まれていた。伏見稲荷からそのまま鴨川に向かって合流したのであろう。
「しつこい奴らだな」
オロチの表情がぐっと険しくなった。
前方の集団もまた、僕たちの存在にとっくに気づいていて、ちらほらと様子を伺っている。
「策はあるのか?」
オロチは雲龍殿に尋ねた。
「もう、ありませんね」
雲龍殿はあっさりと笑った。
オロチの表情は険しいままだった。
「だったら、ここで俺が食い止めよう」
しかし、その言葉を五郎丸が遮った。
「いえ、私が食い止めます」
走りながらオロチと五郎丸は言葉を交わす。
「五郎丸、お主では無理だ」
「なぜ、そう言い切れますか?」
五郎丸はオロチを睨み返し、走りながら、言葉を続けた。
「京極様に対して、恩を返せる絶好の機会」
五郎丸は「それに」と言葉を選びつつも、口を開いた。
「・・・『父上』。僕は、あなたに対しても、まだ何も恩返しできておりません」
五郎丸はオロチの反応を見ることもなく、猛然と走り始めた。
「・・・愚か者が」
オロチはぽつりと呟いた。
一方、猛然と先頭を走る五郎丸に、唯一、ついて行った猫がいた。
外資系である。
「・・・無理するな。お主はまだ、傷が癒えていないのであろう」
五郎丸の言葉に外資系は、くくくと笑った。
「何がおかしい」
「自分は一度死んだ身と同じ。五郎丸殿のおかげで、何とか今、ここにいるのです」
五郎丸が、ふっと笑った。
「それに徳川家の奴らに一方的にやられたままで、まだ何の借りも返せてませんから」
「絶対に死ぬなよ」
「お互い様です」
五郎丸は走る速度をさらにあげた。外資系もついていく。




