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地獄の川下り③

 川の流れが、ゆっくりとなり自然とオロチ、花音・松虫、五郎丸・外資系と合流した。


「もう少し行けば、天神川との合流地点・久世橋に着く。橋をくぐったあたりの左岸に板を寄せろ」


 オロチは説明しながら、川の流れをじっと観察していた。


「この先・・・川の幅が狭くなる。しかも、中央に中州があったり、岩などの障害物もある。故に川の流れが変則的になりやすい」


 中州? またよく分からない言葉が出てきた。しかし、徐々に川の流れが再び早くなってきて、ゆっくり話す余裕はなさそうだった。


「あ、あの。僕たちはどうすれば!?」


 かろうじて、一つだけ質問した。


「落ちるなよ・・・場所によっては沈んだら、二度と浮き上がってこれない場所がある」


 オロチは僕に背を向けたまま、説明した。


「二度と浮き上がれない・・・」


 さっきまで川下りを楽しんでいたのに、また恐怖心がむくむくと復活してきた。でも、僕には教授がついている。ただ、それだけで何とか平常心を保っていた。


「・・・教授、大丈夫ですよね?」

「まあ、何とかなるだろう」


 さすが、教授という言いたいところだが、徐々に流れが早くなってきて、余裕がなくなってきた。オロチ、花音・松虫、五郎丸・外資系の板は既に早い流れに乗っていた。さっきまで、そよ風のように聞こえた川の流れは、まるで何かに怒っているような唸り声に聞こえてきた。

 板は今まで以上に早く流れていった。すぐにオロチが言っていた意味がわかった。流れが早く、川幅が狭くなってくると板を左右に操作できない。しかも、目の前には岩などの障害物が沢山ある。


「教授、どうしましょう!?」

「うむむ」


 教授は注意深く、先を行っているオロチ、花音・松虫、五郎丸・外資系の様子を見ていた。みな、苦戦をしているようだが、何とか難所を越えている。しかし、それぞれ右に回ったり、左に回ったりと動きはバラバラだ。つまり、流れが変則的ということなのであろう。


「見えた!」


 教授が珍しく強い言葉で断言した。しかし、教授は一向に動く気配がない。岩などの障害物がどんどん近づいてくる。


「・・・教授、どうしましょう?」

「このままでいい」


 恐らく川の流れを読んでいるのだろうか。しかし、このままだと岩にぶつかる。


「教授、教授、本当に大丈夫ですか!?」

「うむ。私の計算だと・・・」


 教授は何かを話そうとしていたが、その前に板がガンッと大きな音を立てて岩にぶつかって、僕と教授は宙高くに放り投げられた。

 一体、どれぐらいの高さなのだろう。ふと周囲を見回すと遠くに阪急嵐山線が見えた。

 しかし、すぐにドボンッと川に落ちた。ごぼごぼと底へと沈んでいく。僕はもがいた。でも、思うように身体が動かない。息もできない。苦しい。これが水の中なのか。次第にもがく力もなくなってきた。ふと上を見上げた。太陽の光が水に反射して、宝石のようにキラキラしている。

 これが美しいことなのか、と何となく思ったと同時に段々と意識がなくなっていった。


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