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襲来

 建物の外でオロチはまるで僕たちのことを待っていたかのように佇んでいた。太陽の光が特徴的な毛並みを照らしていて、幻想的な雰囲気すら覚える。よく見ると、オロチの周囲には建物を守っていた天龍家の猫たちが倒れていたのだ。


「これは・・・」


 思わず息を呑んだ。しかし、オロチはそんな僕たちの動揺を気にすることなくただ一点を見つめていた。

 するとエルフキャットが音もなく、すっと物陰から現れた。徳川家と共にいた猫・・・小さいが無毛種。尖った尻尾がくねくねと揺れている。エルフキャットの尻尾の動きが何かの合図かのように黒猫のマムシたちも姿を現した。


「・・・最悪だ」


 雲龍殿は呟いた。

 さすがの僕でも理由は聞かなくても分かる。オロチが放たれただけではなく、マムシたちとすぐに合流してしまったのだ。オロチはかつてのマムシの頭。しかもエルフキャットは徳川家の部屋にいた、名だたる猫。

 もしかしたら、僕はとんでもないことをしてしまったのではないかと急に焦ってきた。

 エルフキャット・マムシ、オロチ、僕たちは三すくみとなって相対している。誰も言葉を発しない。異様な緊張感がその場を支配する。


「マムシがなぜ、徳川家の猫と行動を共にしている?」


 オロチは誰にともなく呟いたがエルフキャットがすぐに反応した。


「・・・はて、オロチは死んだはずだが。偽物が何を言っておる?」


 エルフキャットは目を大きくして笑った。


「・・・偽物?」


 僕は思わず雲龍殿を見た。


「いや、そんなわけあるはずがない」


 雲龍殿をはじめ、松虫、花音も今、何が起こっているのか全く理解できていないようだった。


「偽物とはいえ、再び混乱をもたらす可能性は大いにある」


 再び、エルフキャットの尻尾の動きが何かの合図かのように揺れた。


「マムシたちよ。オロチと名乗る偽物をここで始末しろ」


 その瞬間、黒猫のマムシたちは一斉にオロチに向かって飛び掛かった。


「なぜだ・・・かつては仲間であったであろう?」


 オロチは避けることなく、マムシたちの攻撃を全てを受けた。血が宙に飛び散った。マムシたちは一瞬、動揺の表情を浮かべて動きが止まった。


「気にするな、とどめをさせ。喉元を狙うのだ。偽物とはいえ、オロチもどきを仕留めれば、徳川様はきっと喜ぶだろう」


 エルフキャットがマムシたちを鼓舞する。

 再び、マムシたちがオロチの周囲を徐々に囲んた。オロチは戦おうとせず、目を閉じていた。


「なぜだ・・・」


 オロチがもう一度呟いた。

 その時、マムシたちに向かって雲龍殿、花音、松虫・・・最後尾に僕と教授が相対した。


「・・・どういうことだ? 俺が死んだ方がお主たちは都合がよいのであろう?」


 オロチと雲龍殿が背中を合わせながら会話していた。


「あなたは偽物などではない。それは私が一番知っています」


 雲龍殿の言葉にオロチは黙っていた。


「・・・よく分からなくなってきました。ちゃんと話をしてください。聞きたいことは沢山ある」

「俺の話を聞こうとしなかったのはお前たちだろうが・・・」

「私たちは状況によって対処を変えます。私はオロチ殿の話を今一度、聞くのが最優先と判断しました。従って、その前に・・・あなたの命を狙うものがいれば私が排除します」


 オロチの全身の毛が愉快そうに揺れた。


 一方、エルフキャットはオロチや雲龍殿の様子を気にすることなく、マムシたちを次々と周囲に配置していた。その数は最初は数匹と思ったが、いつの間にか数十匹に増えている。


「だが、この状況、少々厄介だぞ」


 オロチの言葉に今度は雲龍殿が青色の瞳を大きく開いた。


「策はあります。ただ、この状況・・・オロチ殿にも協力していただきます」


 オロチの反応を待たずに雲龍殿はマムシの方位網をあっという間に抜けて、北の方に駆けて行った。ほぼ同時にオロチ、松虫、花音、教授、僕も雲龍殿の後を追った。

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