和解
風が少し強くなってきていた。
休む間もなく、僕たちはオロチが囚われているという建物へと向かった。雲龍殿が言うには天龍寺から、そう遠くはないという。
雲龍殿を先頭に歩いていると、松虫がトコトコと近づいてきた。
「おい、山田電機。何か言うことあるんじゃないのか?」
恐らく松虫は今回の手柄を自慢したいのであろう、魂胆が見え見えなので僕は無視をした。
僕の無視作戦が聞いたのか松虫は話かけてこなくなったが、ぽつりと呟いた。
「昨日、寝ている時・・・身体をツンツンしてきただろう。あれ、地味に痛かったんだぞ。ったく」
僕は軽めのつもりだったが、松虫の小さな身体では痛み、として感じていたのであろう。最近、忙しくて爪を研いでない。そういう意味でも痛い思いをさせてしまったのだろう。
「・・・その点だけは謝る」
「あン? 何だよ、その点だけって」
「だから謝るって言ってるからいいだろ」
「それが謝る態度か、電車オタク」
松虫は歩きながら罵倒してきた。そのほとんどを無視していたが、電車を馬鹿にされると本当にイライラしてくる。
そのようなイライラと格闘していると、雲龍殿が声をあげた。
「あれがオロチが囚われている建物だ」
その視線の先には、木々に囲まれた、まるで人間の住まいのような建物があった。
あそこに、かつて京都を震撼させたと言われるオロチがいるのか。そう思うと僕は身震いした。教授や花音も同じように緊張した面持ちをしている。
「では、行きましょう」
雲龍殿は僕たちの不安をよそにずんずんと建物へと進んでいった。




