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渡月橋

 僕たちが橋に到着すると、ほぼ同意に雲龍殿も橋についた。橋は人間たちも往来していて、僕たち猫のことをジロジロとみていたが特に雲龍殿は気にする様子がなかった。


「さて、いつでもいいですよ。一匹ずつでも、まとめてでもお相手します。さあ、どうぞ」


 雲龍殿は憎たらしいほど余裕だった。


「あの、その件ですが、少し話をしたいのですが・・・」 


 僕は恐る恐る雲龍殿に近づき、自信作のきのこの山を献上した。


「美味しいものを食べながら、一緒にお話しましょう。戦うのはその後でも・・・」

「なるほど、そうきましたか」


 雲龍殿は興味深そうな目できのこを眺めていた。よしきた。やはり、僕が準備したきのこは雲龍殿の好みだったようだ。

 しかし、雲龍殿は、


「・・・くだらない」


 ぽつりと呟き、前足できのこを払いのけた。僕の力作は、ころころと橋の外へと転がり、ゆっくりと川へ落ちていき、そのままどこかに流されていった。


「な、何を、されるんですか!」


 僕は思わず大声を出してしまった。

 しかし、雲龍殿は冷静に答えた。


「これでも嵐山の猫、どのような食べ物に毒があるかは承知しています。あなたたちは、毒きのこを私に食べさせ、鍵を吐き出させようとしたのでしょうが・・・」


 心なしか雲龍殿は少し怒っているようだった。


「浅はかです。あまりにも浅はかですよ。怒りすら沸いてくる。観音町の猫の知恵はこの程度なのですか?」


 僕も教授も花音も何も答えられなかった。

 事実、三匹集まっても、この程度の知恵だったのだ。


「・・・少し期待しすぎたのかもしれませんね」


 僕たちが何も答えないと分かると雲龍殿は、体勢を整えて僕たちに相対した。


「あなたたちから来ないなら、私から行きますよ」


 雲龍殿の大きな青い瞳がカッと見開いた。本気だ。本気で僕たちを殺そうとしている。僕は思わず、目を閉じた。

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