戦争と猫
「ここからが本題です。今回の戦争は明らかに私たちにとって得策ではない。観音様は断るつもりです。でも、一筋縄にいかない可能性もある。だからこそ、高齢の観音様に代わって直接彼らに会って話し合いをしてほしい。その代表者の選出をしたい。それが今日の集会の趣旨です」
ざわついていた空気は一変して、静寂が訪れた。誰かの尻尾が地面に擦れる音が居心地悪く聞こえてくる。その時、静寂を打ち破って声をあげた猫がいた。教授である。
「私がいきますよ」
教授は特に動揺することなく観音様が演説している境内へとあがっていった。教授の立候補に会場の猫たちは尻尾をぱたぱたと地面に打ち付けた。これは賛同を意味する。教授の博識は皆に知れ渡っている。これほどの適任はいない。僕もそう思い尻尾を縦に振った。
「ありがとうございます、とても心強いです」
花音の言葉に教授に耳がぴくっと動いた。照れているのだろう。わかりやすい。
「じゃあ、僕も行きますよ」
今度は外資系が声をあげた。軽い身のこなしで境内にぴょんとあがる。会場はざわついた。いつも雑種を見下している外資系が観音町のために行動するなんてありえないからだ。
「え、本当にいいんですか?」
花音もまた鼻をぴくっとさせて驚いた仕草をしている。外資系はみっともなく舌を垂れながら、花音の言葉に反応した。
「まあ、任せてください。政財界の猫とは多少コネもありますし、ひと肌脱ぎますよ」
今にもよだれが落ちそうで、いかにも下心がありそうな表情だった。
花音は若干引いていたようだったが「よろしくお願いします」と呟いた。
会場の猫たちの反応はバラバラだった。激しく縦に尻尾を振り賛同の意を表するもの。無関心のもの。しかし、周囲の反応を特に気にすることなく外資系は悠然と境内に座り、毛並みを整えていた。
「では、以上で・・・」
花音が立候補を締め切ろうとした時、急に全身の毛がざわついた。いま、目の前に起きていることは、今後の自分の運命を左右することだ。教授や外資系が交渉に失敗したら、この地の猫たちは路頭に迷う。自分たちの運命を他人に委ねることは本当にいいのだろうか。でも、自分が参加しても恐らく何も出来ることはない。でも、でも・・・考えすぎてよく分からなくなってきた。
その時、今までまるで眠っていたかのような観音様の目が、かっと見開いた。
「大義は、我々にある・・・」
今後の執筆の励みとなりますので、少しでも面白いなぁと思ったら、ぜひ評価ポイントを入力ください!
ブックマーク、感想も絶賛募集中です!




