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迷走

 僕は走りながら、改めて今までのことを思い返していた。考えれば考えるほど後悔の気持ちが強くなる。徳川家やスフィンクス、見たこともない猫たちに威圧され、混乱してしまっていた。今から謝れば許してもらえるだろうか?

 いや、絶対に無理であろう。ふと考えを変えた。戦うと宣言してしまったが、現実は厳しそうだ。このまま戦うのは明らかに無謀。だとしたら、いまはただなりふり構わずこの状況から一旦、みんなで逃げることに集中した方がよいのではないか。あの徳川家と観音町の猫が戦って無事で済むわけがない。


 大事なのは命、とにかく戦いたくない。何とかならないであろか、そんなことを考えているといつの間にか教授や花音の姿が見えなくなっていた。



「・・・あれ?」


 気が付くと、周囲の建物はどれも似たような感じで、どこを走っているのかよく分からない。

 つまり今、僕は道に迷っていた。


 どのくらいの時間が経ったのだろうか。僕は鉄の塊が行き交う道に迷い込んでいた。行き交う人の数も、朝と比べて格段に多い。気のせいか、みなジロジロと僕のことを見ている。明らかに場違いな気がして、すぐにその道から離れた。

 さらに行く当てもなくウロウロして、何とかして近くの公園にたどり着いた。蛇口から落ちる水滴で少しだけ喉を潤して落ち着くと、急に現実に戻された気がした。勢いよく走り出したのはいいが、この後、どうすればいいのだろうか?

 急にお腹が空いてきた。先のことは後でもいい。まずは食料と寝床だ。どこかに煮干しでも落ちていないかな、と僕は都合の良い妄想をしながら周囲を見回した。すると見慣れた猫の姿が目に入ってきた。


「あれ?」


「うん?」


「山田電機君!?」


 教授と花音だった。


「え、何で・・・?」


 何だかんだ言って僕のことが心配で追ってきてくれたのだろうか?


「いや、我々はさっきの場所をほぼ動いていないのだが」


 教授の言葉に花音も頷いた。そんな馬鹿な。だったら僕は全速力で走って、全速力で戻ってきたというのか。


「このあたりは似たような建物が多いし、それに道の長さも等間隔だ。方向感覚がおかしくなっても、おかしくないだろうな」


 徳川家の時とは別の猫のように教授は冷静に状況を分析していた。ちらりと花音の方を見た。特に怒っ

ていないようだ。少しだけ安心した。僕は藁にもすがる思いで教授に相談した。

「・・・あの、この後どうしましょうか。このままだと観音町に帰るに帰れないのかなと僕は思っているのですが。いっそのこと、みんなで・・・」


 僕は暗に逃げることを提案した。怒られるのはまだマシだ。最悪なのは町から追い出されることだ。たった数時間、この辺を彷徨っただけでも僕は一匹で生きていくことの難しさを知った。


「その件だけど、教授と同じ話をしていたの」


 花音は迷いながらも言葉をつづけた。


「本来だったら観音様にすぐにでも相談した方がいい・・・でも、高齢故に最近は体調も優れない。これ以上無理させたくない。それにこれからのことを考えたら、私たちが自分たちで考えて行動することが大切だと思うの」


 僕は思わず尻尾を振ってしまった。でも・・・ふと思った。僕たちだけで何か出来ることがあるのであろうか。ちらりと花音の方を見た。僕の心の声が聞こえたのか花音の尻尾がぴくっと動いた。


「これから、策を説明します」

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