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拉致されて1日目2

 やっと交々の案件に結果が出たのでお引越しの準備のついでに投稿。

 魚を食べ終わってボンヤリした後、早速お風呂の準備に取り掛かった。


 まずは風よけだ、河原に2㍍の枝を3本用意して三脚を立てると立て掛けた枝を固定していき骨組みを作る。骨組みの隙間に枯草を詰めて風よけの壁の完成。ゆくゆくは泥でコーティングして密閉性を高めてもいい。てっぺんの穴に傘をかけて、明り取りと雨除けもバッチリだ。簡易的な風よけのつもりが、ついつい気合が入って風よけ小屋になってしまった。出来上がったころには夕方になっていたから、晴れているし傘を取り払って月明かりか星明かりになっちゃうか、まぁダークビジョンあるから十分。


 風よけ小屋の中心のたらいを水で満たすと、焚火で石を焼き始めた。ワクワクする、せっせと薪を集めては河原で石を焼いていく。どんどん焼やいて、十分にたらいの水をお湯に沸かすに足りるだけの石が焼けた。いよいよお風呂に入るぞ! っと腰を上げた所だった。


 何かが居る。


 冷や水をぶっ掛けられた様に冷や汗が噴き出て全身が緊張する。不味った、お風呂にはいれると期待が有頂天になって警戒を怠ってしまった。胸元の乗りリャマくん召喚笛に手をやりながら辺りを伺うが、居る事が分かっても、何処かどんなかは全く分からない、分かるのは囲まれている事だけだった。取り落した焼き石が河原の湿った土の上で湯気を立てているのを横目に、腰のナイフに手を伸ばした所だった。

「おい」と呼び止められた言葉で飛び上がった。


「な、なんでしょうか?」

「この川は我らの縄張りの内にある川だ、侵入者」


 落ち着いた声で、迫力があった。


「え、あ、う」


 パニックになっている自分とそれを俯瞰して見ている冷静な自分を自覚する。

 ススキノの外で一切人に遭遇しなかったから完全に油断していたのもある。だけど、よく見ると、こいつらは隠れるのが上手いんだ。この男だけじゃない、数人の男が周りを固めている。目の前の男はLv90、NPCなのか? 亜人だ、しかもライカンスロープ。善の種族と言うわけでは無いが、悪の種族と言うわけでもない、NPCにこんな種族が追加されていたのか、知らなかった。


「何をしている」

「あの、その、お風呂に入いりたくて」

「馬鹿にしてるのか、ガキが!」


 目の前の男とは違う、後ろの若い男が大声をあげて近づいてきた。


「チガハ、俺が話す。お前は黙れ」

「ぐぐ」


 後ろの若い男は黙ったが、とても不満そうだった。

 目の前の男が私に向き直ると言った。


「お前は、私たちの縄張りから木の実を盗み魚を盗み小屋を建て火を焚いた、この行いには償いが必要だ、分かるな?」

「お金でいいですか?」


 NPCで交渉が可能だったのは幸いだ、亜人でもコミュニケーション可能でよかった。手持ちのお金にはそこそこ余裕がある、お金で解決できるならそれに越したことはない。


「よかろう」


 そう言って目の前の男が金額を提示しようとした時だった。後ろからパチパチと木の葉のはぜる音がした。

「あ、お風呂……」


 振り返ると、作ったばかりのお風呂小屋がもうもうと白い煙を上げていた。チガハと呼ばれた若い男が、お風呂小屋に火をつけていた。


 あ、燃えてる、一週間我慢したお風呂が燃えてる……ぽろぽろと勝手に涙が出た。おいおい泣いちゃうのかよ、冷静な自分が自分に突っ込みをいれても涙は止まらなかった。だってだって一週間ぶりにお風呂にはいれると思ってうれしかったんだもん、せっかく作ったお風呂小屋が燃えてるんだもん。


「うえぇぇぇぇぇぇ」


 制御を離れた自分の感情が目から涙となって溢れ出るのを止めることが出来なかった。冷静な自分が周りを観察していると、交渉していた男は困惑している、そしてチガハと呼ばれた若い男が私の方へとずんずん近づいてくる。


「ウゼェんだよ、ガキ!」


 バシン、という音と衝撃が一度に来て、一瞬眩暈でふらついた。イヤーフラップキャップが吹っ飛んで地面に落ちたことで自分は平手で頭を叩かれたのだと、ボンヤリ理解することが出来た。


「チガハ! 女に手を上げるのは男のする事ではない!!」


 リーダーと思わしき目の前の男が怒鳴って叱責するが、目の前の二人以外に周りを囲んでいた三人が姿を現して、イヤーフラップキャップからあふれ出た長い黒髪と飛び出たエルフ耳に、場の全員の時が止まっていた。


「っだ、声が!」


 チガハの言い訳ももっともだ、私の声はオッサンだから厚着をしていたら男と思うだろう。男たちが一斉に集まると何やらボソボソと話し合いを始めた。「女だ」「エルフだ」と漏れ聞こえてくるが、私は拾い上げたイヤーフラップキャップを握りしめたままグスグス泣き続けていた、なんかもう制御が効かないんだから仕方が無いだろう。


「お前を里へ連れて行く」


 短い話し合いの内に結論が出たのだろう、チガハは反対していたがリーダーに黙らされて不満そうだ。もっと頑張れよ、役に立たないクソチガハめ。


 そうやって私は、両手を縛られ腰に紐を掛けられて、ライカンスロープたちに連れまわされることになったのだった。

なんとなくサバイバルを調べていた時に「織津江大志の異世界クリ娘サバイバル日誌」なるものを見つけまして、コレが凄く参考になりました。凄い面白いですよね、好き。

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