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転生してから一週間

管理キーワード F0001-1 (ログ・ホライズンの二次創作)を設定で受け付けないんですけどどうなんでしょう?

  切りつける様な冷たい風が木立を縫って吹き付けるのを背に感じながら、崖の頂点に腰かけ空を眺めていた。

 青い空を切り取る稜線から下は雪に煙る灰色にくすんで見えた。


「は~」


 悴む手を真っ白な息で温めて革手袋にしまう。雪で湿った革手袋はヒンヤリと冷たい。日向ぼっこをすれば寒さもましかと思ったけど、風に吹かれて寒いだけだった。


 腰を上げて崖の下の川がへ行くと、河原に石を組んで作った竈に流木を集めて火をつけた後に、スープパンに水を汲んで火にかけておく。それから靴と靴下を脱いで裾を膝まで捲り上げると川へと足をつけた。

 雪解け水の流れ込んだ川は冷たすぎて「ウヒィ」と変な声が出た。今は多分4月くらいじゃなかろうか? エゾ地の春はまだ遠いらしい。


 一抱えもある石を持ち上げて、川面に頭を出している石に叩きつける、いわゆるガッチン漁というやつだ。転生前の世界ではやってはいけない漁だったはずだけど、今世は誰も怒る人が居ないから大丈夫なはずだ。


 プカリと岩魚っぽい30㎝位の魚が浮かび上がったのを流されないうちに掴み取り川から上がると、水につかって冷え切った足を焚火にかざして温める。その片手間に岩魚っぽい魚を捌き串を打って焼いておく。


「あ~生き返るんじゃ~」


 冷え切った体に焚火が染みる。温まってボンヤリしてきたところで良い感じに焼けた魚を食べる事にした。


「意外と美味しい」


 焼くと滴るほどに脂ののった魚にかじりつく。

「でもあんまり食べられない」


 三分の一ほど、魚を食べたあたりで胸がいっぱいになってしまった、お腹はまだ減ってるのに……。肉類がそれほど食べられなくなってしまったエルフボディが恨めしい。仕方がないので手ごろな葉っぱに残りの魚を包んで鞄に仕舞うと、焚火の始末をした。


 植物性の食料調達に行くことにしよう。雪を掘ったら春の山菜が取れるかもしれないし。木の実なんかもあるといいなぁ。

 ああ、お米が食べたいなぁ、どうしてこんなことになってしまったのか……。この一週間ろくな物を食べてない。ススキノから逃げ出したときに持っていた食料は味のしない粘土の様な物だったが、それももう食い尽くしてしまった。そういえば転移する前からこのキャラが持っていたお肉も味のしない粘土みたいだったなぁ。


 転移する直前、私は十数年ぶりにフェアリーテイルにログインしていた。

 甥っ子たちがフェアリーテイルをプレイしているとのことなので、懐かしさに飽かして当時使っていた手帳から、アカウントのIDとパスワードをサルベージする事に成功し、当時のアカウントでフェアリーテイルにログインしたのだった。


 懐かしい、ログイン画面に並ぶマイキャラ達。

 一人目は好き勝手やった象徴みたいなキャラだった。

 二人目は生産特化のキャラだった。

 三人目は時代の流れで作ったPvEキャラだった。

 四人目は倉庫キャラだった。


 去来する物を抑え込むように、私は四番目のキャラを選択していた。一番目のキャラは思いが強すぎる。二番目のキャラは拠点が無ければ何も出来ない、三番目のキャラは当時の最先端だったが、さしたる思い入れが無かった。濃淡は別としてエルダーテイルで一番長くログインしていたキャラクターは四人目の倉庫キャラだった。


 当時のサブスキル上げの検証やら、ゲーム内ソーシャル系プレイやらをしながらエルダーテイル辞める切っ掛けを探しながらダラダラログインしていたのだが、辞める理由を見つけられないまま、パソコンを新調した時にクライアントをダウンロードする気になれなくて、そのまま引退したのだった。


 Now Loading


 画面に映し出された、懐かしい見慣れた文字列を眺めながら取り留めもなく当時の事を思い出していると、画面が切り替わりマイキャラが雪の森の中に佇んていた。


「何処だここは?」


 マジで思い出せない。10年前、このキャラは何処で何をやっていたのかを持っているの物と装備で確認していると、携帯が鳴った。


「はいもしもし? あ~今ログインしたところ、何処なんかさっぱりわからねぇ。雪の森だからエッゾじゃないかなぁ? まぁススキノまで頑張って帰るわ」


 その直後、私の視界は暗転した。

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