長鬱陶しい髪
結局書きます!! 『月曜真っ黒シリーズ』
「ああ!!」
バスルームから課長のイラッ!とした声が聞こえてビクッ!とする。
かなり無理な事をさせられてまだジンジンするのに、更に何かされたら……
半ば“本能的に”身を竦めながら私はペラペラのバスローブの襟を合わせる。
課長のご自宅のボディソープはビ〇レのフレッシュフローラル。
私はそれを100均のコスメボトルに詰めて持ち歩き、バスルームへ“事後処理”をしに行く課長に渡している。
「お前の長鬱陶しい髪が指に絡んだ!! ゴミ箱に捨てようとしてもしつこくしつこくくっ付いて来やがる! おい! オレの体に髪が残っていないか お前が見ろ!」
課長が濡れたままの体で私の脇にドサッ!と座るので、私はベッドを下りてその足元に跪く。
「あんまり顔を近付けて“ミイラ取り”にはなるなよ! 後、がっつくな!」
『がっついたのはそっちの方!!』と心の中で独り言ちながら、私はカレの体を隅から隅までチェックする。
「大丈夫です」
「よし! 服着るぞ!」
私は床から立ち上がって課長の体を拭き清め、事前にネット購入したカレのフレグランス……“サ〇ライ・アクアクルーズ”のミニアトマイザーをカレのウエスト、足首、膝の内側、太ももと順に吹き付け、“子供のお着換え”よろしく服を着せてあげる。
そうしてワイシャツのボタンを留めたところでカレは立ち上がり、下はパンツのままドレッサーの方へ行ってドライヤーで髪を整える儀式を行う。
残された私は裸のまま自分の髪を手櫛する。
付き合った当初は、この腰上まである自慢のサラサラヘアを「とても綺麗だ」と愛でてくれた。
それなのに……
『そんな鬱陶しい髪はバッサリ切ってそろそろイメチェンしろよ! もう夏だし!ショートとかさ! 因みにウチの奥さんは……ミルクティーベージュのショートな!』
ドライヤーの音に混じって聞こえて来るカレの声に
「それは課長が気に入ってらっしゃった“内定者”にでもおっしゃったら!」と皮肉を返してもドライヤーの音にかき消される。
ため息をつく私の指に1本の髪が……
そうね!お前がこんなに長くて絡むから……しつこいって言われるのね!
悲しいね……
私は髪を摘まんで指から剥がし、ベッドサイドのゴミ箱へ捨てようとした。
そこにはさっきの逢瀬の“残骸”があって……
私は一つの想いに取り憑かれた。
私の脇に戻って来て、両足を投げ出しスマホを弄り始めた課長に、靴下を履かせる。
さっき私は……摘まんだ髪の毛にカレの“糊”をたっぷり塗布した上で、この靴下の中へ捨てた。
用心深いカレの事だから……この企みは失敗してしまうかもしれない。
でも精一杯の念を込めたから!!
カレの奥様の目に“あの髪の毛”が届くかもしれない!
そうすれば私は……
きっと会社には居られなくなるだろう……
でも、その結末を
私は待っている。
ようやくそんな腹が括れた。
でも、結局は奥様の目に届かず……この“ドメスティック”でパワハラな不倫も続いて行くのが世の常か……(/_;)
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