引きこもり、旅に出る
俺の夢は、スパイのえっちなお姉さんを追いかける警察官になることだ。その夢は高校を卒業した今も変わらない。そして俺はその夢に着々と近づいている。そう、今の俺は
自宅警備員である。
うん。俺はこの仕事に持つべきでは無い誇りを持っている。情けないとは思うが不満に思うことは無かった。が、そんな俺の人生もさらばだ。俺はたった今事故死し、なんやら訳の分からん女とテキトーな飲み屋で喋っている。
「だからぁ!私だってお前と旅なんかしたくないわけ!でもお前がいないと無理なの!」
まぁ要するにあれだ。転生だ。死んで異世界に転生した的なやつだ。ほへーと話を聞き流すがこの女は突然この世界に転生させられ、俺と一緒に旅をしなければ元の世界に帰れないらしい。
「お前お前うるせぇな。それが人に物を頼む態度かよ」
うるさい女に痺れを切らし、そう言うと女は急に大人しくなり、悪いわねと言い、自己紹介を始めた。
「私の名前はレモン。妖精の国からやってきたの。あ、ちなみに私は雷の精の種族よ。」
急に大人しく話し始めたが、どうやら彼女は俺と違う世界にいたらしい。これチャンスだ。
「そうなのか。あ、俺はケイト。前世は警察官で結構腕が良かったんだ。」
かなりいい感じにいけたと思ったがあっさりそれ嘘だろと見破られた。
「なんでそう思うんだよ」
焦りつつも嘘とバレてはいけまいと恐る恐る聞く。しかし即答で
「顔」
と言われ流石にキレた。もうそれは喚いた。飲み屋を出禁になった。
「これからどうすんのよ」
ムスッとした顔でレモンに言われるも解決方法がない。
「俺だってこの世界でどうするのが正解か知らねぇよ!」
「だいたい、お前はこの世界に送られたんだろ?」
何か知らないか尋ねるとレモンは急に思い出し話し始めた。
レモンの話によると、この世界は魔王が支配しており、人間たちはすごく困っているんだと。そこで俺とレモンが魔王を倒しみんなを助けなきゃならない。だが、この世界にはもう勇者などはいなく、ギルドだって栄えていない。俺たちはこのちっぽけな村から魔王を目指す羽目になった。それはとても長い年月がかかるんだろうな。めんどくさいとは思うが正直、俺は別に元の世界に帰りたくは無い。なんとかレモンを説得することにしよう。
「へーそりゃ大変だな。じゃあもういいんじゃねえか?この世界も魔王に支配されてるけど案外楽しそうじゃねえか。」
立ち向かって殺されるよりはマシだ。レモンも納得するんじゃないかと思った。が。
「…何言ってるのよ」
そう言い、泣き出した。レモンは元の世界が好きらしい。泣きながらまだ仕事が終わってないとか好きな人に告白してないだとか新発売のお菓子食べてないとか、流石に可哀想ではあるが、俺はそんなに心が広くない。
「そうか。じゃあそれ相応のはたらきしろよ」
ビシッと言ってやったからかレモンは大人しくなり頷いた。可愛いところもあるんだな。
「ほんとー!?ケイトなら私を見捨てると思ってたけどお前にもなけなしの良心があつたのね!」
泣き止んだと思ったらベラベラと喋りだした。前言撤回。可愛くねぇ。
こうして俺はこのクソアマとの冒険が始まった。