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はじめてのべんきょうかい

 週が開けて今日は必修クラブの日。

 岩崎先生とともにクラブ室にいくとすでに二人は準備万端で揃っていた。


「おにいちゃんせんせー! おそーい」

「すまんすまん。ちょっと準備に手間取ってね」


 といいつつ着替えシーンのラッキースケベ防止のため遅く出ただけだったりするが。


「私はビデオの準備しますから今日の活動をお願いしますねー」

「はい、岩崎先生」


 先生は前回と同じようにビデオ撮影の準備をする。


「さて今日は冒険者二種免許試験に向けての準備をする」

「おー」

「まず取得するに当たっての条件だが、まず四時間の講習と一時間の試験がある。試験に合格すれば即日免許が交付される」

「つまり頑張れば一日で取れるってこと?」

「そういうことだな。講習会および試験場の講習及び試験スケジュールもそのようになっている。まあ、学生や勤め人向けに日曜祝日一日だけで取れるようにこの時間なんだろうな」


 これが一種だと『三〇時間の講習と、連続三時間以上のダンジョン内実習を二回以上、連続八時間以上の夜間ダンジョン宿泊実習を二回以上実施。三科目の学科計三時間の試験で全教科七〇点以上取ること』とかなり取るのが大変だ。

 一日の受講回数が日に二時間まで、実習は二日に一回までしか受けられないと決められているので、暇な人なら順調に行けば半月くらいで取れるだろうけど、土日だけとなると二ヶ月位かかる。

 それがだいぶ緩和された上に、一種へのステップアップパスまで用意されているのだ。

 政府はなりふり構わず冒険者を増やしたいらしい。

 未成年者や高齢者こそ保護責任者が必要だが、それ以外の成人なら不要だからね。

 試験にさえ通ってしまえば十層の守護者を倒す必要はあるが、普通にダンジョンに通っているだけで一種免許が取れる。

 ダンジョンに通っていれば僕のように変な職業やスキルでもない限り普通に守護者は倒せるからすぐに一種に上がれるだろう。


「じゃあ、今度の日曜日取りに行こうよ!」

「その前に一応対策だ。試験の例題を見たけれど全く知らない人がやってできる内容じゃなかった。講習の内容はわからないから何とも言えないけど」

「そんな難しいんだー」

「一応国家資格だからね。いくら簡易化したと言っても、そこはそれ。誰も彼も合格にしちゃうと死んだり怪我をする人が続出しちゃうからね。簡単にお墨付きを与えちゃうと、自分は大丈夫だと過信しちゃう人がいるからある程度難しくなっているんだと思う」

「そうね、傲慢は悪魔の囁き。誰もが陥る罠。天使ルシファーでさえその誘惑に逆らえなかったほどの大罪ね」


 厨二病セリフだが深いぞエリザベート。


「その通りだな、傲慢や過信はダンジョンでは禁物だ。僕もその傲慢と過信のせいでこのザマだ」


 僕は動かない左手を上げて見せる。


「試験は合格すればいいというものではない。あくまで最低限の知識があると示しているだけにすぎないからね。ダンジョンで活動するためには謙虚な姿勢とたゆまざる努力が必要なんだ」


 そう。

 これは自分なら大丈夫という根拠のない傲慢の結果だ。


「……おにいちゃん」

「そんな顔をするな、千紗。こんな僕だからこそ教えられることもある。常に自分を振り返れ。無謀じゃないか、傲慢に飲み込まれていないか、手抜き手抜かりはないか、準備は万全か。常に問いかけるのを忘れてはいけない」

「うん、わかったよ、おにいちゃん! 千紗全力で取り組むね!」

命令受諾(オーダー アクセプト)

「よしいい子だ。次行くぞ。講義内容は大きく分けて次の三つだ。一にモンスターの生態、二にダンジョンの知識、三に救急救命と各種手続き、法律に関する知識だな。項目としては一種と同じだが試験範囲がだいぶ狭くなっているようだ」


 まあ、一種は三科目別々の試験で三時間かかるからね。

 二種は三科目まとめて一時間だ。


「出題範囲も狭いぞ。モンスターの生態はアミューズメント層である一、二層限定。一層はスライムのみだし、二層はスライムを除けばうさぎ系とネズミ系しかいない。ダンジョンの知識だがこれもアミューズメント層の主な知識になる。ただしアミューズメント層はダンジョンによっていくらか違いがあるから、おそらく試験はこの環境の違いによる影響に関しての問題なども出てくると思う」


 僕は一度あたりを見回し、飲み込めているか確認して続ける。


「救急救命は危険な場所に行くので必須の知識だ。また関連する法律も試験のときだけでなくダンジョンに潜っている限りつきまとう。各種手続きもそうだな」

「おにいちゃん、あのね救急救命って、人工呼吸のれんしゅうとかもするのかなぁ?」


 千紗が顔を赤らめながら問いかける。


「千紗、おにいちゃんとなら、してもいいよ?」


 おおい、何をだよ!


「事案です。岩崎特務(・・)教諭、警察に電話を。小学女子と救急救命を口実にキスを迫るロリコンがここにいます。いえ、教育委員会執行部隊の派遣を要請します」


 ちょ、やめて!

 教育委員会には執行部隊とか無いから。

 特務教諭とかもいないから。いないよね?


「はいはい、えっと一一〇番は何番でしたっけ?」

「岩崎先生も乗らないでくださいよ!」

「えっ? 和斗先生。女子児童に対し本気ならともかく練習で人工呼吸はNGですよ?」


 マジかよ。

 本気だ。早くなんとかしないと。

 ん? 本気ならいいのか? って溺れたときとかの話だよね!?


「誰も自分がやるなんて言ってませんよ! そもそも救急救命の話で、人工呼吸なんて僕は一言も喋っていません。たとえやるにしても講習で人形かなんか使ってやるはずです。ここでは基礎的な知識しか教えませんから」

「……本当ですね? 嘘偽りなく? ちびっとでもラッキーとか思いませんでした?」

「本当ですって。嘘偽りありません! ラッキーとも思っていません!!」

「えー。おにいちゃんは、千紗のことキスしたくないほど嫌いなんだ……」

「いや、嫌いというわけじゃ……」

「じゃあ、キスしたいほど好き?」

「す……」

「す?」


 孔明の罠だ!

 この問いに対し好きといえばキスしたいってことになる。

 回避するには。


「素敵だと思うけど、キスしたいほどではない」


 これならどうだ?

 僕は皆の判定を待つ。


「うーん、あと一歩?」

「執行猶予?」

「作戦終了。執行部隊は待機せよ」


 セーフ。

 って、千紗があんなこと言うから変な汗かいたよ。

 千紗とキス?

 ふと千紗の柔らかそうな唇が目に入る。

 ぶるぶるぶる。ナイナイ。


「さてあらぬ容疑も晴れたところで続きいくぞ。救命以外だとダンジョン関連に適用される法律、施設の利用規則などが、出題されると見ている。ダンジョンに関する法律はこの間改正されたダンジョンへの入場規制の撤廃や、優遇措置なんかが出そうな雰囲気だ。あとはダンジョン内で関連するとなると土地利用関係かな」

「土地利用?」

「そう。ダンジョンとはいえ一応国内だからな。そこの土地は日本の主権が及ぶ。そしてダンジョンの中は日本の国有地になっているんだ。なので勝手に建物を立てたり、専有したりすると法律違反になる。なにか建物を立てたいとか専有したい時は国の承認がいるとか、いろいろな法律が適用される。君たちには関係ないと思うけど、長時間入口近くなどの重要なポイントにテントを張って撤去命令に従わないと逮捕されることになる。後武器の所持とか取り扱いは、ダンジョン内と地上とで違うルールが適用されるからこれも注意だ」


 日本は他国のダンジョンとつながっていないからいいけど、国境をまたいでつながっているダンジョンだと、新たな紛争地帯になってたりする。

 ましてや元々の紛争地帯だと更に厄介な問題に。

 国によって法が違ってるのに中でつながっているからね。

 仲が悪いとそのすり合わせさえできない。

 しかもダンジョンは新たな資源にもなっている。

 ポーションしかり、ドロップアイテムの産業利用も急速に進んでいる現在、ダンジョンは鉱山や油田と同等の存在になりつつあった。

 資源あるところに闘いはある。

 人類の争いの大半は資源を巡ってのものだ。

 仲が悪いだけ? の国同士が今度は資源であるダンジョンを巡って争いだしていて、日本はそれに比べればだいぶ恵まれているとはいえよう。


「後は施設を利用するときのルールとかだね。ダンジョン利用時に指定のライブカメラ装着義務とか、アイテム買い取り時の手数料ルールとか、その辺が例題としてあげられていた」

「わかった! それでいつ試験を受けに行くの? おにいちゃん」

「最速でも四月の下旬じゃないかと思う。試験や講義の準備に時間がかかるだろうし。五月連休明けってのも考えられる。ダンジョン管理局は半民半官だから休日に仕事はしないんじゃないかな?」

「えー。まだ半月以上も先?」

「しょうがないだろ。四月に法が施行されたばかりだからね。現場の対応が追いついていないんだ。今急いで講習内容の確認や試験問題を作っているはずさ。おそらくこれまでのいわゆる一種の講習内容や試験問題から、アミューズメント層に関する部分を抜き出しただけのものが使われるんじゃないかと僕は思っている」


 法案の審議中から検討してたとしても、そうそうすぐには準備できないだろうからね。


「というわけで、今後は予想される講義内容と試験内容の説明、それを深掘りした内容や実習に向けての注意事項や装備の使い方について学んでいく予定です。講習と試験は一日がかりだから、落ちたら次の週ってことになりかねないからな。うまくゴールデンウィークに試験日が当たればいいけど、向こうの都合次第じゃ週一回しか講習会を開かないとかあり得るから」


 まだ開始スケジュールも会場も決まっていないのだ。

 受験者の動向によっては、開催するスケジュールが変更になると管理局のホームページにも書いてあった。

 あっちもこっちもドタバタだね。

 まあそれだけ政府もこの件を重く見ているのだろうけど。


「一発合格目指して、頑張ろう!」

「おー!」

命令受諾(オーダー アクセプト)


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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script?guid=on異世界のジョブズに、僕はなる ~定年SEの異世界転生業務報告書~
もよろしくお願い致します。こちらは異世界ファンタジーになります。
― 新着の感想 ―
千里っていう文字が何度か出てきますけど千紗の間違い? 別な人物?
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