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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

過ぎれば泡になる

作者: 毒腹



この学園では不幸の手紙が大流行していた。

放課後、忘れ物を取りに学校のロッカールームに行くと他クラスの人が自分のロッカーにゴソゴソと何かをしていた。

名前も知らないその生徒は、髪が目元にかかる地味な部類の生徒でそれでも不良タイプの生徒と共に居て、静かに野次や笑い声担当をやっているようなタイプの生徒だった。

その名前も知らないが多分悪人に違いないその生徒はこちらに気付くと慌てた様子で鞄を肩に掛けてそそくさと出て行く。その間際に、ドロボーと小声で呟いてやると「ちっげーし」と妙にテンパった大声で言って出て行った。

自分のロッカーを確認すると赤札のような紙が置かれていた。

コレは不幸の手紙です。

赤い折り紙に書かれた二つ折りの紙を広げてみる。

今流行りのアレがついに自分にも来てしまったらしい。

手紙の内容は自分の倍にあたる150人にこの手紙と同じ物を作って渡せと言う物だった。

やり遂げると魔除けのマグネットの御守りをロッカーに貼ってもらえるらしい。

それがあると二度と不幸の手紙を貰うことはないと言うルールだった。

自分は少し考えてから上級生のクラスのロッカーに行くことにした。先ずその手紙を一枚置き、適当なロッカーからマグネットを剥がして奪った。それから何となく退屈だったので持っている生徒から持ってない生徒のロッカーにマグネットを次々と張り替えることにした。

何故ならもう既に魔除けの御守り持ちが沢山いて、持っている者の方が多く、持っていない人の人数は上級生の間ではほぼゼロだったのだ。

そして150枚にも登る手紙を配りきれなかった下級生の生徒達が屋上からのダイブを次々に強いられていた。

うちの学校の風紀は頭のおかしな手紙の介入で乱れに乱れ切っていた。そろそろ飽きて社会問題化してもいい頃なのだが、解放された生徒達の圧は重く、解放されない生徒達は次なる獲物を探し回ってかけずり回っている。

ほぼほぼ惰性で続いているような感じで手紙配りに従事する生徒を始めた者達も一部しか監視し制裁を加えられないような状況だった。あの生徒は、このイベントを嬉々として楽しむチンピラの仲間達がいて監視の対象だと思うのだが、150枚の半分、75枚分を配っているのだ。誰がルール違反者かなんて把握し切れる訳がなかった。そしてマグネットのパクリは今日では誰もがよくやっていることだった。マグネットを奪って手紙を置くなんてことも一般生徒達の間では普通に行われていた。

友達が友達の、なんてことも日常茶飯事で時に修羅場に発展していることもあった。

自分が手紙を置こうと思ったのは学園的地位の高いチンピラ達だった。マグネットを何枚も剥がして手紙を置いた。

何枚かマグネットを奪ったり手紙を手書きが面倒なので奪って、何やら一生懸命に手紙を置きまくっているような感じになった。

ロッカールーム一階から三階まで往復して自分の150枚分の手紙も事前に認めていたと言うか、オカルト好きとして作って配らない訳には行かないため、不幸のない不幸の手紙の愉快犯的なことを時折りやっていたので何だが色々と用意は出来ていた。

恐らく全ての手紙を持ち寄れば自分が一番配っているようなそんな感じであることがバレてしまうだろう。

だが次の者達はもう配ることはしないだろうと思った。

何故ならマグネットの御守りルールに抵触した者が大勢出てしまうからだ。

しかも内容も改変されて1億枚の手紙を配れと指示を与えた。

どんなに真面目な生徒達を持ち寄ってもそんなことは不可能に思えた。


自分の手紙の不正が取り沙汰されて、もっと広めようと思ったなどと献身的な言い訳を並べてこんなイベントに乗り気な生徒はいけませんと、ほどほどに遊んでくださいと教員から注意を促されて親からはちゃんと配れたのかと心配されつつ月日は流れて行った。

だがどうやら、うちの学校の真面目な生徒達の底力は想像を絶するものがあるらしい。

不幸の手紙は一億枚とてチェーンメールやSNSに形を変えて世界中に配られていた。

配る側は内容を好きに変えても良いと言うルールにも変更されていた。

ニュースで子供が屋上から舞い散るのも日常茶飯事の今日だった。やり始めたのは誰なのか。

うちの学校の不良達が槍玉に上げられていた。






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