第7章「決戦への序曲」 10節:絶望を裂く神光の
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
「触手の尖塔」が、どす黒い光を放ちながら大きく脈動した。その鼓動のたびに、鹿島市を構成するあらゆる情報――建物、アスファルト、そして人々の記憶までもが、「KOVID-666」という悪夢のコードに書き換えられていく。
「シュカ、気を付けて! あの塔、周囲の空間そのものを食べて肥大化しているわ!」
ネガイが漆黒の雷を纏いながら叫ぶ。二人の前には、尖塔を守るように展開された、無数の「節足」と「魚鱗」を持つ不定形の巨大な上位眷属たちが立ち塞がっていた。
「……負けない。ここで止めないと、この街だけじゃなくて、世界中の『幸せ』が消えちゃう!」
シュカの瞳に、不退転の決意が宿る。背後には、大切な「憂姉さん」たちが待つ緒妻家がある。その想いが、彼女の神性を極限まで加速させた。
その頃、緒妻家の二階では、憂が静かに立ち上がり、窓の外の地獄を見据えていた。
「お母さん……、行っちゃうの?」
不安げに問いかける明来。憂はその小さな肩を優しく抱きしめ、母親としての柔らかな声で答えた。
「大丈夫よ、明来。お母さんはどこにも行かないわ。……少しだけ、お友達に『掃除』のコツを教えてあげるだけ」
憂がそっと指先で窓ガラスに触れると、そこから黄金の神紋が広がり、邸宅全体を不可視の結界が包み込んだ。
(バステトちゃん。ナイの眷属たちが、あの子たちの『座標』を見失い始めているわ。今が好機よ)
「御意に、大神様。……このバステト、露払いの一翼を担わせていただきます」
末美が影の中で黄金の祭器を鳴らす。その響きは、シュカとネガイの心魂へと直接流れ込み、衰えかけていた二人の力を瞬時に再定義した。
「力が……溢れてくる……! 行こう、ネガイ!」
「ええ、シュカ! 私たちの『定義』、見せてあげるわ!」
二人の女神が、一筋の光の矢となって尖塔へと突っ込む。
「ウェーイク・ゴッデース!我、未・来・へと続く運・命・を紡ぐもの!」
「我は創造者! 我は全てを忘却する純白の神風! シュカ!」
「ウェーイク・ゴッデース!我、過去から続く宿命をほどくもの!」
「我は破壊者! 我は全てを滅却する漆黒の神雷! 我が名はネガイ!!」
純白の神風が異形の肉塊を霧散させ、漆黒の神雷が冒涜的な触手を根元から焼き尽くす。
爆炎の中、ついに二人は「触手の尖塔」の核、ナイの意思が物質化した「黒い核」の目前まで辿り着いた。
だが、そこには現実を嘲笑うかのような、さらなる「異界の影」が待ち構えていた。
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。




