第7章「決戦への序曲」 4節:崩壊する日常の旋律
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
黒い雪は雨へと変わり、アスファルトをドロドロとした粘液のように溶かしていく。 鹿島市の至る所で、「KOVID-666」による絶望的なパンデミックが火を噴いていた。
「……っ、きりがない!」 シュカが純白の神風を巻き起こして異形の小群を吹き飛ばすが、ウイルスの伝播速度は二人の浄化速度を上回っていた。
その時、珠花のスマートフォンが震えた。 発信者は「緒妻家」。『珠花ちゃん! 助けて、街がおかしいの!』 スピーカー越しに聞こえてきたのは、長女の明来の悲鳴だった。
「明来ちゃん!? 憂姉さん、哲人さんたちは……っ!」 シュカの顔が蒼白になる。
「……シュカ、落ち着いて。ここは私たちが引き受けるわ」カフェから駆け出してきた雫店長とスタッフの面々――祈里や美琴たちが、それぞれの武器を手に並び立つ。
「末美ちゃん、あなたも行きなさい。珠花さんたちをサポートするのよ。店はアタシたちが守るから」
雫店長の言葉に、末美は力強く頷いた。
「かしこまりました。……シュカ、ネガイ! 今すぐ緒妻家へ! ここは私たちが食い止めます!」
異形の神話へと変貌していく鹿島の街を、二人の女神が駆け抜ける。 住宅街に入ると、その惨状はさらに加速していた。 庭先の木々は、ヌメヌメとした質感を持つ巨大な触手へと変じ、民家の窓からは、魚類と軟体動物が混ざり合ったような、正体不明の不定形の肉体が溢れ出している。
「あそこよ、珠花!」 ネガイが指差した先――緒妻家の邸宅の周囲には、すでに数体の 巨大な物体が群がっていた。一つの眼球が不気味に発光し、刃物のような牙が並ぶ口からは、現実を溶かす黒い唾液が垂れ流されている。
「……させない。私の大切な場所を、これ以上汚させない!」 珠花の怒りが頂点に達する。
「ウェーイク・ゴッデース!我、未・来・へと続く運・命・を紡ぐもの!」
「我は創造者! 我は全てを忘却する純白の神風! シュカ!」
「ウェーイク・ゴッデース!我、過去から続く宿命をほどくもの!」
「我は破壊者! 我は全てを滅却する漆黒の神雷! 我が名はネガイ!!」
純白の旋風と漆黒の雷鳴が同時に弾け、緒妻家を包囲していた異形たちを吹き飛ばす。
だが、既に2人のその視線は邸宅の影に潜む、さらなる巨大な「冒涜的な影」を捉えていた。
日常を守るための戦いは、今、最も過酷な局面へと突入しようとしていた。
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。




