第6章「輪廻の境界」3節:這い寄る白き手、有明の咆哮
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
「ウェーイク・ゴッデー ス! 我、未・来・へと続く運・命・を紡ぐもの!」
珠花の叫びと共に、校門前の空間が純白の粒子で満たされた。制服が光に溶け、天女の羽衣を思わせる戦装束へと変わる。その背後に展開された光の翼が、影から伸びる無数の「白き手」を弾き飛ばした。
「我は創造者! 我は全てを忘却する純白の神風! シュカ!」
シュカが着地すると同時に、周囲の景色が神話層へと転移する。放課後の校門前は、いつの間にか霧に包まれた「境界」へと変貌していた。
「……珠花、気をつけろ。こいつらはナイのような論理で動いちゃいねえ。この土地の底に溜まった、整理のつかない『未練』そのものだ!」
てちち(ショロトル)が牙を剥き、霧の奥に潜む巨大な影を睨みつける。霧の中から現れたのは、鹿島の古き伝承に語られる異形の影
――顔のない「神隠し」の眷属たちだった。
それらは明来を情報の泥へと引きずり込もうと、執拗に這い寄ってくる。
「……私の風で、全部消してあげる! はぁっ!」
シュカが忘却の風を放つ。だが、風は異形たちの体を通り抜け、霧を散らすだけに留まった。 デジタルのコードで構成されていたナイの配下とは違い、土地の執着に根ざした「怨念」には、これまでの忘却の権能が完全には噛み合わない。
「……あらあら。シュカ、苦戦しているわね」
大銀杏の下から、憂が和傘を差したまま静かに見守っている。彼女の隣では、バステトが欠伸をしながら爪を研いでいた。
「……わらわが手助けしてやってもいいが…『試練はあの子たちの肉になる』とか何とかおっしゃるのでしょう?」
「ふふ、よく分かっているわね。……でも、あの子が自分の力を『再定義』する瞬間は、いつ見ても美しいと思わない?」
憂の視線の先で、シュカが膝をつく。
明来は赤黒い鳥居の門の奥だ。
「……ダメ……。明来ちゃんを、連れて行かせない!」
シュカの瞳から、人間としての迷いが消え、苛烈な神の光が溢れ出す。その瞬間、彼女は理解した。消すべきは敵そのものではなく、敵をこの世に繋ぎ止めている「因果の糸」なのだと。
「……お姉ちゃん! 力を貸して!」
シュカの声に呼応し、どこからか漆黒の炎が走り、霧を焼き裂いた。Sカンパニーの仕事を切り上げ、凄まじい神気を纏ったネガイ(叶恵)が、境界の壁を物理的に破壊して参戦する。
「……待たせたわね、珠花。このドロドロした因果ごと、私が滅却してあげるわ!」
「ウェーイク・ゴッデース! 我、過去から続く宿命をほどくもの!」
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。




