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第七十八話 

 痛む後頭部を摩りながら帰宅していた。

 御母さんから殴られるとは思いませんでした。

 その理由が組織からの報酬を二人で山分けするため。

 魔法少女の劣悪な仕事環境における同情から報酬が僅かながら支給される。

 其れを横取りしたのだ。

 其処の悪人かと思いました。

 というか酷くない?

 普通は戦った同志で分け合うと思うんですけど。

 とはいえその報酬は本来組織に属する魔法少女にしか支払われない。

 だから本来組織に所属してない魔法老人会には支払われない。

 なので正しいと言えば正しいのだが……。

 其れを捻じ曲げ僕が彼ら魔法老人会のメンバーに渡すと思ったらしい。

 御母さんが。

 当たってるけど。

 まあ~~既に魔法老人会のメンバーは既に戦いの記憶が無い。

 真忘却魔法の所為だ。

 殆ど同士討ちしてた結果だ。

 当然だろう。

 だから突然報酬を渡しても意味不明だろう。

 今回は仕方ないという事で納得しました。


「あ~~」


 最終電車を乗り損ねなかったのは運が良い。

 嫁が僕の帰りを待ってるだろう。


『御主人様~~わっしに乗って帰らないの?』

「喧しい幻聴其れに一人称が変わってるぞ」

『キャラを立てようかと思って』

「さいですか」

 

 取り合えず幻聴の言葉を無視する。

 少し急ぐか。

 嫁が僕の事を待ってるだろうし。

 結婚して良かった。

 家に誰かが待ってくれると言うのは嬉しい物だ。

 其れが僕の嫁というならなおさらだ。

 大事にしないと。

 そういえば嫁の趣味は温泉だと言ってたな。

 今度の休みに連れて行くか。

 でもな~~電車で行くのもアレだし。

 かと言って近所の温泉にタクシーで行くのもアレだし。

 送迎バスで行くか?

 あ~~運転免許を取れば良かった。

 時間を作って教習所に行くか?


『わっしに乗れば? 運転免許もいらないし』

「黙れ幻聴……うん? 御前免許要らないのか?」

『パイロットは免許代わりの許可証が発行されるよ』

「ほう?」

『但しわっしに限定だけど』

「でも僕は運転した事ないぞ」

『大丈夫わっしが動かすから自分の体を動かせない馬鹿は居ないでしょ』

「便利だな」

『但し誰かが運転してる振りをしないといけないけど』

「何でまた?」

『無人運転で警察に呼び止められるけど』

「其れは恐怖からだろうに」


 傍目で視たら軽いホラーだな。


「なら今度の休み嫁の都合を聞いていくか」

『それじゃ決定ですね』

「ああ」


 等と言ってる時だ。

 僕の脇を数人の若者が通り過ぎた。


「居酒屋定光はどこだっけ?」

「向こうだと思うっ!」

「逆っ!」


 二十代の若者だろうか?

 近くの居酒屋に行く気だろう。

 男女のペアだな。

 合コンかな?

 多分。

 腕を組んでるのも居るみたいだ。

 既にカップルも居るみたいだ。

 其れを妬ましそうに見る男二人。

 嫉妬は見苦しいぞ。

 とはいえ最近まで僕は同類だったが。

 年下の嫁を貰いリア充成りました。

 自慢んんんんっ!


 うん?

 ううん?


 おかしい。

 何かデジャヴ?

 既視感というかつい最近同じ様な事が有った気がする。

 はて?


 そんな時だった。

 其れが現れたのは。


「「「キイイイイッ!」」」


 奇声を上げ現れる全身黒ずくめの男たち。

 顔まで黒い布で覆われた其れは物凄い既視感が有った。

 其れもつい最近。

 そう呼ぶ理由も有る。

 全身を覆う布はごく一部を除き目しか外気に晒して無い姿。

 棒のような武器。

 眼の白目が無く黒という異形。

 うちの組織の戦闘員だ。

 見覚えが有る筈だ。

 何だろう。

 この気持ち。

 折角仕事が終わったのに……。

 他人の仕事風景を見て居たたまれない感じは。


「ひいいいいいっ!」

「きやあああああっ!」


 それらは僕を追い越した若者たちを打ち据えた。


「ふふふっ! 喜ぶがいい貴様らは我が秘密組織【ケッター】の構成員に選ばれたのだからな」


 その言葉と共に暗闇から現れた異形の物。

 うん。

 異形なんですけど……。

 その顔は見慣れていた。

 顔はワニの仮面を被り胴体は人を模した獣の姿を持つ異形。

 異形。

 それは明らかに怪人だった。

 というか嫁。

 鰐型というか……。

 ワニ怪人ですけど……嫁だよね?

 何で此処に居る?

 家で僕を待ってたんじゃないの?

 緊急の仕事?

 

「なんなんだよ御前らっ!」

「自衛隊は何番だっ!?」

「いやああああああっ!」


 ニイイと笑う嫁。

 相変わらず変身後は怖いな~~。


「ぎやあああああああああああっ!」


 真っ青な顔をして悲鳴を上げる若者たち。

 だけどそれ迄だった。


「ひいいいいっ!」

「「いやああああっ!」



「少し愛想笑いしただけで煩いな……うん?」


 愛想笑いしてたのか嫁よ。

 普通に怖いぞ。

 

「旦那様……」

「あ~~」


 其の時だった。

 何故か怪人は今初めて気が付いたと言わんばかりに僕を見る。

 其の目に戸惑いが見える。

 何故か分からない。


「何時から其処に居たの?」

「最初から居ましたが?」

「ゑ?」

「はい?」


 嫁の言葉に僕は内心首を傾げる。

 崩れる嫁。


「仕事中の姿を旦那様に見られるなんて恥ずかしい」

「……」


 予想外の事を言われ僕は苦笑いする。

 仮面の下は赤く成ってるのは容易に想像がつく。


「お……おい……あの男……旦那様って……」

「夫婦なの?」

「凄い趣味だ」

「ゲテモノ好きかよ」


 一般人の方。

 煩いんだけど。

 僕の嫁は美少女だからな。

 其れはもうアイドルが逃げ出すレベルで。


「それで仕事なの?」

「はい組織の戦闘員勧誘の仕事なんですが先輩が急病で……」

「あ~~手伝おうか?」

「いえ先に家に帰っててください晩御飯は用意してあるので先に食べて下さい」

「良いのか?」

「はい出張お疲れ様です」

「有難う其れでは御言葉に甘えるね」


 僕達の言葉に一般人が目を剥く。


「新妻っ!」

「しかも新婚だよ此の雰囲気はっ!」

「ゲテモノの夫婦だとっ!」


 驚愕の事実に一般人が煩い。

 取り合えず黙らせるか。

 僕が戦闘員に目を向ける。

 其の僕の意を察しすぐさま一般人に当て身をする。

 一般人たちは音もなく気絶する。

 其のままクロロホルムを嗅がせ駄目押しする。


「有難う皆」

「「「「「キイイイッ!」」」」」


 親指を立てる戦闘員たち。


「うちの旦那様が戦闘員と仲良すぎですね」

「嫁の自慢してたら自然とこうなりました」


 僕の言葉に戦闘員が頷く。 

 そんな時だった。

 何処からか声が聞こえたのは。



「待てえええええええええっ! 其処迄だっ!」



 何かデジャウ。

 だが此れは御父さんの声ではない。

 誰だ? 



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