第六話 真忘却魔法
フーフーと、荒い息をつく。
一時間を常に全力で戦い続けた結果だ。
疲労困憊で全身が怠い。
ステッキを握る力が無くなりかけている。
ふうう~~と、息を整え周囲を見回す。
ストレス獣が折り重なっていた。
まさに死屍累々だ。
ストレス獣たちは古い死体から次々に消えていく。
僕は心からようやく終わった事を喜んだ。
死傷者はいない。
既に確認している。
全員が疲労困憊だが死んでない。
良かった。
「隙ありいいいいいっ!」
「ぎやああああっ!」
行き成り殴られそうになったので倒れて避ける。
ゴロゴロと倒れて転がり避けた僕は襲撃者を見る。
其処に居たのは黒い血で全身を染めた漢だ。
魔法老人太輔だ。
「死にさらせええええええっ!」
「待てえええええっ!」
ゴンッ!
太輔の魔法のステッキから命からがら逃げた。
こ……こいつ何で僕を攻撃した?
意味が分からない。
いやマテ。
確か設定ではどうだったか?
ストレス獣を誰より多く倒した魔法少女は暴走しなかったか?
ストレス獣の怨念を受け狂戦士となったような……。
「太輔さんアンタまさか……ストレス獣のせいで暴走してるのか?」
「違うが」
「ゑ?」
太輔さんの言葉に僕は呆ける。
「目撃者は消す此れは魔法少女の鉄則じゃ」
「違うから魔法少女じゃないから」
「見られたからには消えてもらおうか」
「何でさっ! さっき迄力を合わせてストレス獣を倒したよねっ!?」
太輔さんの据わった目に息をのむ。
「此の姿を見られ他の者に言われたら儂は社会的に死ぬっ!」
「あれえええええええっ! 何か共感できる理由なんですけどっ!」
ごもっともな理由に僕は内心頭を抱えた。
「なので死ぬかもしれないが真忘却魔法をかけるっ!」
「いやあああああああっ! 何其の魔法っ!」
ブンブンと振られる魔法のステッキを避ける。
「説明しようっ! マー君」
「タマッ! 状況考えてっ! でも聞きたいっ!」
「真忘却魔法とは物理攻撃で脳を完全に記憶事破壊し蘇生させる魔法です」
「もうそれ魔法じゃないよねっ!」
「運が悪いと死にます」
「其れ殺人だよねっ!」
「その際一日分の記憶は無くなるが次の日は頭痛がするという副作用が有るよ」
「うわ~~~」
「死にさらせえええええっ!」
「ぎやあああっ!」
壁際まで追い詰められた僕は手で頭を抱える。
ゴンッ!
「ギヤッ!」
鈍い音がした。
但し太輔さんの頭部から。
何か湿った音がしたので中身がヤバいと思う。
此れ死んでない?
「助かった…のか?」
「いんや」
「貴方は魔法老女タエ?」
「隙有いいいいいっ!」
「いやああああっ! またかああああっ!」
「真忘却魔法っ!」
「ぎやあああっ!」
一時間後。
変身が解けた僕は項垂れていた。
「し…死ぬかと思った」
立ち上がり深いため息を付く。
僕は気絶した魔法老人会のメンバーを見下ろしていた。
「もういないよな」
「残念~~マー君」
ゴスッ!
「グアッ!」
僕の意識は急速に薄れていく。
「御免ね~~昨日に続いて今日も巻き込んで~~」
「あ~~やっぱりタカコがマー君を昨日殴った本人か~~」
「うん変身してるところ見られてね」
「其のあと忘却魔法を掛けたのか」
「やり過ぎて此方を認識する羽目に成ったけどね」
「其れで二日連続か~~運がないな~~」
「だね~~」
カラカラと笑う一人と一匹。
「流石に三度目は関わらないでしょ」
「そうだね~~」
なおこの次の日も再び魔法少女(服のみ)になったりする。
だがこの時点では一人と一匹は分からないのだった。




